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狐火!~狐少年の奮闘記~  作者: 鈴雪
第六章 温泉へ
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第三十四話 すいませんでした……

「はっ!」

 目を覚ますと旅館の部屋。

 側では舞さんがハンカチを濡らしていた。

「あっ、起きたんだ。よかったあ」

 舞さんがにっこりと笑いかけてくる。

 今はその顔を真っ直ぐに見えない。

「そうね。あんな事した後だものねえ」

 テーブルの上に座っていたイヴがげしっと僕の額に蹴りを入れる。痛ひ。

「龍馬たちは?」

 僕は頭を振りながら聞いた。

 舞さんはうーんと頬に指を当てて、

「りょーまくんはハルちゃんの部屋で寝てるはずだよ。刹那くんは後片付けだって」

 後片付け? ずいぶん大変な事を……



「『戻れ』」

 言霊に術式を載せて理に介入。元の姿まで指定領域内の時間を巻き戻す。

 あっという間にスターダストインパクトで吹き飛ばされた温泉は元の姿に戻った。

「終わったっと」

 グリグリ肩を回す。

 けっこう疲れんだよこれ。

「お疲れ様。部屋に戻ろうか」

 朱音の言葉に頷いて部屋に戻った。


 うーん。気まずい。

 起きてから一言も話さない。話そうとすれば、お互いに「「あの」」ってなって話しづらい。

『仕方ないわねえ。私に任せなさい』

 と、イヴがニヤニヤ笑いながら精神会話をしてきた。

 お願いします、と僕は心の中で頭を下げる。

 コホンとイヴが咳払いをして

『さっきはごめんね。舞さん』

「さっきはごめんね。舞さん」

 イヴが言ったことをそのまま続ける。

 舞さんはブンブン顔を振る。

「べ、別に平気だよ。き、気にしてないから」

 いや、さっきから空気が重いし、悪いことしたんだから謝んないと。

 そして、イヴがすかさず続きを、

『にしても、舞さんってEカップだったんですねえ。やっぱり大きいんですね』

「にしても、舞さんってEカップだったんですねえ。やっぱり大きい……っておい!!」

 見れば、イヴがにやにや笑っていやがりました。

 見れば、舞さんが顔を真っ赤にしている。やりやがりましたな……

「や、やっぱ変? 自分でも大きすぎる気がしてたんだけど……」

「いやいや、別に変だとは!」

 イぃーーヴぅーー!! っと怒りの思念を送るけど、当のイヴはどこ吹く風といった風にそっぽを向いていた。

 舞さんはあうあうと腕を振って主張する。

「十歳までは普通だったんだよ! だけどね十一歳頃から大きくなりだしちゃって……わたしはもう少し小さい方がよかったのに。肩こりヒドいんだよ!」

 あっ、それは知ってる。イヴもけっこう大きくて合体の後、肩が痛いんだよなあ。

 って何理解してんじゃああぁあ!!

 軽い自己嫌悪に陥る。

「あ、あのね、く、空狐くんはやっぱり小さい方が好みなのかな? 大きいと嫌い?」

 何言いやがりますか、この人はー!!

「い、いえ。むしろ舞さんぐらいの大きさが好み……って何言ってんだ僕!?」

 えっ、と舞さんがキョトンとした顔になる。

 あうう、何ちゅう事言ってしまったんだ僕は。

「そ、そうなの? よかったあ」

 ほっとため息をつく舞さん。何で安心してるの?

「鈍感」

 イヴが耳元で囁く。う、うるさいな。

 さらに空気が重くなった。

「じゃ、じゃあ、僕、刹那くんたちの部屋行ってくるから!」

 居たたまれなくなって部屋から逃げ出す。

 そんな僕を見てイヴがぼそりと一言。

「弱虫」

 今度タワシで磨いちゃる!!


 刹那くんたちの部屋は鍵がかかってなかった。

「どうも、刹那くんいる〜?」

 僕は部屋に入る。

 と、そこで、

「んっ、あふう」

 艶めかしい声が聞こえましたー!!

 ええええ!? ま、まさか……

「んっ? ここか?」

「そう、そこ」

「オーケー」

「あああ、そこ、いい……はあぁ」

 朱音さんの悩ましい声……

 やっぱりそうなんですかー!?

「し、失礼しましたー!!」

 僕は慌てて部屋を飛び出したのだった。


 あれ?

「今、気配感じなかったか?」

「そう?」

 うーん、まあいいか。

 俺は気を取り直して朱音の方を向く。

「じゃあ、続きお願い」

「うん」

 朱音の肩を揉んでやる。

 なかなかこっているなあ。仕事任せっぱなしだから仕方ないかもしれないが。

 にしても……

「ああん」

「いちいち悩ましい声出すな」

 とりあえず、一発スリッパではたいてやった。

 


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