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狐火!~狐少年の奮闘記~  作者: 鈴雪
第五章 迷子deパニック
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第三十話 贈り物

 そして、涼子さんの家に着く。彼女は鍵を開けようとして、

「あら?」

 扉の前で止まった。

 そして、いきなりがちゃっと開ける。

「あらら、鍵かけ忘れちゃった」

 大丈夫ですかー!!

 すごく不安になってきた。よく見れば、庭もちゃんと手入れが出来ておらず、草が伸び放題になっている。

 泥棒とか入らないのかなあ?

 怖くなりながらも涼子さんの家に上がった。そして、居間に入ろうとして、

「動くな」

 涼子さんに覆面の男がナイフを突き出した。

 本当にいたー!!

 予想、裏切らねえよこの人。

 それにしても……泥棒ぼろぼろだなあ。

「あの、なんでぼろぼろなんですか?」

 思わず聞いてしまう。

 泥棒はこっちを見て、

「庭に入ったらよ、草に隠れてて気づかなかったけどレンガがあって、それにつまずいてこけたんだよ」

 うわ。

「しかもよ、切れ易い草ばかりで服から出てる場所は切られるし、とどめに鳩の糞は落ちてくるし、鍵を開けようと思ってがんばってたら実は開いててかけちまったとか」

 なんか泣いてる。

 とりあえず、ご愁傷様。そして、

「運がなかったですね」

 僕は涼子さんを後ろから引っ張り、後ろに送る。

 僕はそのまま踏み込み、まずはナイフを叩き落す。そして、腰を落として驚くどろぼうの鳩尾を右の拳で打つ。

 鈍い音と、空気が漏れるようなうめき声とともに男は気絶した。


 その後、警察にその男を突き出した。

「いいですか? 次からはちゃんと鍵をかけるように気をつけてくださいね」

「はい〜。気をつけます」

 涼子さんが警察官に注意されてた。子供かいな。

 そして、警察が去って、やっと居間の椅子に座る。幸子ちゃんはベッドで寝ている。

「ごめんなさいね。ばたばたしていて」

 涼子さんは申し訳なさそうに笑うと、お茶を目の前に置いた。

 恐る恐る呑んでみるけど、なんともなく普通においしくて安心した。

「改めて今日はありがとうございました」

 ぺこりと向かいの席に座った涼子さんが頭を下げてきた。

「あ、いえ」

「ただ、公園にいた迷子を連れてきただけですから。次は気をつけてくださいね」

 また、僕らのような人間が拾うとは限らないし。

 涼子さんは苦笑いして、

「はい。わかってます」

 と、答えてくれた。

 少しの間、三人ともしゃべりながらお茶を飲む。

「あ、そうでした」

 思い出したかのように涼子さんが立ち上がる。

 そして、がさがさとそばにあった籠を調べる。

「ありました。どうぞ」

 そう言って涼子さんが出したのは、

「旅館の宿泊券?」

 そう、それは旅館の宿泊券であった。

「懸賞で当たったんですけど、夫が仕事で行けないので、お二人が使ってください」

 涼子さんはにこにこ笑ってそうおっしゃってくれましたよ。

 僕らはじっとその券を見て、顔を上げる。

「ほ、本当にいいんですか?」

 僕は思わず聞いてしまう。

 涼子さんはにこっと笑って、「ええ、どうぞ」と言ってくれた。

「ありがとうございます。涼子さん」

 舞さんも嬉しそうに笑ってお礼を言った。


 そして、帰り道。涼子さんと幸子ちゃんに見送られて家に帰る。すでに空は暗くなっていた。

 にしても、冷静によく考えると、旅館に男女で泊りがけ……なかなか緊張します。

「空狐くん」

 つんつんと肩を突っつかれる。

「な、なに?」

 僕は慌てて舞さんのほうを見る。

 舞さんは嬉しそうに笑って、

「よかったね、できればもう一日あったらよかったけど」

 僕は一泊二日の方が安心できますからよかったです。ピンクの妄想に頭が犯されそうだから。

 と、そこで前にいる人物に気づいた。

 黒い服にピンクの髪。あれって?

「朱音さん?」

 舞さんの声に反応して朱音さんが振り返った。

「やあ、空狐、舞。こんばんわ」

 朱音さんがにこっと笑う。その手には買い物籠を持っていた。

 買い物帰りかな?

「あれ? それは」

 舞さんの手の中にあった券を見る。

「あ、これはさっき知り合った人からお礼にいただいたんです。次の土曜から二日間行こうと思ってます」

 ふ〜んと朱音さんは僕らを見て、

「ごめん用事思い出した。またね」

「はい、また」

 そう言って僕らは別れた。

 さて、今日から三日後。楽しみだな。


 次の日、

「ね、ねえ空狐、舞」

 学校に行く途中いつもの場所で息を切らせてハルが走ってきた。

 なんだなんだ? ただ事じゃない雰囲気だぞ?

「あ、あのさ、昨日つれていたのって二人の」

 ああ、はい、そんな誤解できるんですか……

 僕は息を吸って、

「ちっがーう!!」

 と、大声で主張した。


 この後も同じ質問が何度もあってなかなか疲れる一日だった。

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