序章 二人の再会
静岡の端にある外岡線鳴海駅。
電車から一人の少年が降りた。
灰色の短い髪と、紅い目が印象的な少年だ。小柄で整った顔立ち、服装はワイシャツとジーンズ。柔らい表情と雰囲気で服装を変えれば女の子と間違えられる事も有りそうな……
「よっと、」
彼は、荷物を持ち直して歩き出した。
駅から出ると懐かしい町並みが僕を迎えてくれた。
「着いた〜」
ぐっと僕は伸びをする。
とと、忘れてた。
みなさん始めまして。僕の名前は、木霊空狐。十五の妖狐です。
僕は今まで山の中の里で母さんと暮らしていたんですけど、この歳になって、やっと里を出る事が許されました。
母さんはすごく心配してたけど何とか折れてくれて、これからこの町、『常磐市』で暮らすことになります。
お世話になる家は、母さんの友達の娘さんで、僕の幼なじみの倉田 舞さん。
彼女は人間だけど妖怪に理解のある人であることや、最近ご両親を亡くして、一人暮らしだったからちょうどよかったんでしょう。
僕も、相手が初恋の人だったから、ちょっと嬉しかったな。
「懐かしいなあ」
ぐるっと周りを見る。五年ぶりに訪れたこの町は、相変わらず緑が多く懐かしい匂いがする。商店街のレンガ通りも久しぶりだな。狐里には舗装された道なんてなかったもん。
「さーてっと」
時間を確認。まだ大丈夫だけど、早めに行った方がいいかな? 僕は荷物を持ち直して、約束に遅れないよう歩き出した。
待ち合わせは昔よく二人で遊んでた公園。けっこう広くて相変わらず子供たちの楽しそうな声が聞こえる場所だ。
「変わんないなあ」
ベンチに座る。携帯を見ると、約束の三十分前。少し早かったかな?
ぽかぽか気持ちいいし、のんびりと待つ事にするか。
十分後
「ぐー」
彼はベンチで眠っていた。
そこに一つの人影が射す。
そして、彼女は彼の顔を見てにこっと笑った。
「んっ」
どうやら眠っていたらしい。あれ?後頭部に何か柔らかい感触を感じる。
「あ、起きた?」
ん……えーっと。
僕の顔を覗き込んでいる人は……
「お姉ちゃん?」
「うん」
にこっと笑う彼女に思わず見惚れる。
そりゃあね、六年間逢わなかったんだから成長してるのは当たり前なんだけど……ここまで変わるとは思ってなかったな。
流した墨のように艶やかな髪を昔みたいにリボンで結んである。そして、ピンク色の血色のいい頬とにこっと笑った顔は、とても魅力的だった。身長は……僕と同じくらいかな?だけど、僕は小さいほうだから十五歳の女の子としては、普通な方か。でも……その胸はなんというか、ほっそりしている割に、でかい。Dか?それとも……ゴホンゴホン(自粛)
着ている服も学校の制服のブレザーみたいだけど、彼女が着ているとおしゃれに見えるから不思議だ。
体を起こして、彼女と向き合う。
「久しぶり。来たなら起こしてくれてもよかったのに」
「だって、クーちゃんの寝顔かわいかったんだもん」
ニコニコとほんとに幸せそうな顔を見て息を吐く。見た目は変わったが中身はさほど変わってないご様子だ。
「まあいいや、これからよろしく『舞さん』」
「こちらこそよろしく。『空狐くん』」
二人とも前々の打ち合わせどうりお互い名前で呼んでから握手をした。
初投稿です。
とりあえず一週間に一回投稿する予定です。