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狐火!~狐少年の奮闘記~  作者: 鈴雪
第三章 二日目
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第二十一話 決定事項

 放課後の演劇部部室。本日は次の公演作の発表だそうだ。タイミング妙にいいな。

「それでは次の公演用の作品について決めたいと思います」

 教壇の上から桜子先輩が部員を見渡す。この人が演劇部部長さんだったが、本人は部長と呼ばれるのを嫌って名前で呼ばせているらしい。ちなみに本名は依田 桜子だそうだ。

 桜子先輩がノートを広げる。

「公演作品はハルの書いてきた『シスタースプリング』」

 何、その題名? 妹の季節?

「内容は十二人の妹が」

「「「ちょおっと待ったあ!!」」」

 僕と刹那くんともう一人の男子の先輩がツッコむ。周りの人間がちょっと引いたが気にしない。

「何その某恋愛アドベンチャーみたいな展開! パクリですか!」

「亜○亜とかちっさい子はどうするのさ! まさか初等部から借りてくんのか!?」

「大体女子四人しかいないし、男子が女装するとしても最低三人少ないわ! まさか、部員以外の人間を募集するわけじゃないよね!?」

 僕、刹那、石田先輩(先日の暫定名男子Aで中肉中背で黒髪の先輩)の順。

 ぜはー、ぜはーと三人仲良く肩で呼吸する。

「よ、よく知ってるね三人とも」

 当のハルが微妙な笑みを浮かべる。

「いや、アニメ見てたから」

 山田先輩。

「俺、ゲームと漫画」

 これは刹那くん。

「僕はゲーム」

 けっこう面白かったよ。

 お気に入りは咲○だった。

「まあ、冗談は置いといて」

 そう言ってばっと、桜子先輩がノートを変える。

 ずでっとこける僕ら三人。

「ねえねえ空狐くん、それ面白いの?」

 舞さんが僕の肩を突っつく。僕はちょっと考えて、

「人によります」

 とだけ答えた。

 僕はけっこう気に入っていたな。もちっと続いてくれればよかったのに。でも、女の子には勧められんな。あれは。

「じゃあ、今度こそ本当の内容ね。ある家に引きこもりの娘がいました。彼女の名前は遥」

 ありそうな展開だ。

「兄である武と姉の忍は彼女を家から連れ出そうとします。しかし」

 こっから急展開?

 みんなが次の言葉に注目する。

「彼女が家に出ない理由は……実は彼女が吸血鬼だったからなのだった!」

 はい? 吸血鬼?

 てか先輩、テンション高くなりましたね。

「もともと彼女は母親が連れてきた連れ子で、彼女の一族は代々続く吸血鬼の家系。そして、引きこもり始めた十五の夜から彼女の体は吸血鬼化してしまっていたのだった」

 実は正しいんだよねそれ。

 吸血鬼は確かに血を飲むし、体を霧にしたりもできる。ただいくつか、伝承と本物の吸血鬼には違いがある。血を吸った後に相手を同族にする能力とか、繁殖法とか。

 まず一つ目、血を吸った後相手を同族にする力はない。そんなのあったら今頃、世界中吸血鬼が溢れかえって、食料困難に陥ってしまっているだろう。

 次、繁殖法。これは普通に人間と一緒。吸血鬼同士で子を儲けることは可能だ。生まれた子は十五歳前後で吸血鬼化が始まるまで普通に人間と同じように成長する。

 人間との間でも半吸血鬼のダンピールは生まれる。この場合、子は人間の寿命と同じではあるが、身体能力などでいくつか親すら超える力を持つ事がある。これは半妖に近いな。

 そういえば、ハルは父親が退魔士のはずだからこういう事はよく聞いてるのだろう。

「そして、三人は彼女を狙う吸血鬼ハンターと戦う事に!」

 ぐっと拳を握る桜子先輩。

 あー、今だにあるんだよそれ。大体が対吸血鬼能力持ってたりしてるから吸血鬼だけじゃどうしようもないから退魔士もお呼ばれするんだよね。

 めんどくさいんだよな。今度は逆恨みでこっちに襲い掛かってきたりするし。僕も前その仕事があったからよーく知っている。

 魔道師協会が長年悩んでいる問題の一つでもある。

「じゃあ、配役発表するよ〜」

 そうして、先輩が黒板に書いていく。


 一分後。

「ちょおっと待ってください」

 黒板に配役を書くのに僕がストップをかける。

「何? 木霊君」

 書きかけの手を止めて桜子先輩がこっちを向く。途中で止められたからかちょっと不機嫌そう。

 でも、僕は気にせずに続ける。

「えーえー、舞さんがヒロインなのは別にかまいませんよ。似合ってますし、兄の武役が刹那くんでハンターが石田先輩(昨日の暫定名男子Bでがっしりした体格で髪は刈り上げ)なのは文句ありません。ですが……」

 僕はきっと黒板をにらみつける。

「なんで僕が姉の忍役なんですか!?」

 そこには厳然と『忍役、木霊 空狐』と書かれていた。

 桜子先輩は何だそんな事と言った感じで笑う。

 で、腰に手を当てて一言。

「似合うと思ったから」

「はっきり言われたー!」

 僕は頭を抱えて絶叫する。

 みんなが次々にぽんぽん僕の肩を叩いてくれる。

「じゃあ、残り書くよお〜」

 そんな僕の様子を気にせず桜子先輩は続きを書くのであった。


「はあ」

 帰り道。僕はため息をつく。

 あの後、僕はみんなより出遅れてるという事で、まずは発声練習など基本的な内容を練習させられた。

「大丈夫?」

「うん……思ったより疲れただけだから、後はいきなり女装させられるとは思わなかったから」

 でも、演劇って(女装以外は)けっこう楽しい。この後も家で舞さんが練習を見てくれる予定だ。

「がんばろうね、空狐くん」

「はい、舞さん」

 僕は楽しみな気持ちで答えた。

 あと一ヶ月。がんばるぞー!

鈴:「どうも〜鈴雪です」

刹:「どうも〜刹那です」

鈴:「やっと二十話越えた〜!!」

刹:「そして、一万五千Hit記録! 皆さんのおかげです!」

鈴:「ありがとうございます!」

刹:「これからしばらくの間は一話完結の話しになる予定ですのでよろしくお願いいたします」

鈴:「それではまた」

刹:「次回で会いましょう」




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