第十九話 空狐の訓練
日の光と鳥の声で眼が覚める。
「んっ」
ぐっと伸びをしてから、携帯をとって時間を確認する。昨日と違っていつも通りの時間に起きられたな。
ん、よし。
布団から出て普段着に着替える。
そして、天月を取ると、
『おはよう空狐』
今日はイヴもちゃんと起きていてくれた。
「おはよう、さっそく今日もよろしく」
『OK』
部屋を出るとパタパタと舞さんが走っていく。
「おはよう、空狐くん。早いね?」
「おはようございます舞さん。別に普段はこのくらいですよ?」
昨日はお酒を飲んだせいで、今日は大丈夫だ。そういえば、みんな二日酔いしてなかったなあ。意外と強いのか?
「なんか手伝う事ありますか?」
「ううん。洗濯物も終わったし、今から朝ごはんまで自由時間」
舞さんがあははと笑う。
「そうなんですか。じゃあ、中庭を使わせて貰いますね」
「いいけど、何するの?」
僕は天月の鯉口をちゃらちゃらさせる。
「特訓です」
魔力を籠めた呪符を周りにばら撒く。
「よしっと」
準備完了。
「蛍火」
術名を呟くとぽっと空中に小さな火の玉が出る。
目の前に出た玉を斬る。返す刀で新たに左下に現れたものを、さらに呪符からランダムに球が現れる。それを切り裂いていく。
「何してるの?」
僕の訓練を見ていた舞さんが不思議そうに聞いてくる。
「ランダムに発動時間をずらした蛍火を斬る訓練です。全部で百個。目標は九十個以上」
答えながらも次々と現れる蛍火を斬る。大体一個の蛍火は出現から消滅までのタイムは二秒。それらを斬っていくことで、反応を磨くのがこの訓練だ。
最初は五秒間現れる炎を落とす所から初めて、徐々にタイムを短くしていってもうすぐ一秒になる予定である。
「と、これでラスト」
最後の蛍火を斬って刀を納める。
『お見事。最高記録の九十五個。完全クリアまで五個だよ』
イヴが報告のために出てきてくれる。
「九十五個かあ」
もうちょいで百個。
あ、そうだ。
(ねえ、イヴ。君の事を舞さんに紹介しようと思うんだけどいい?)
思念通話で聞いてみる。
『なんで?』
(ほら、彼女は僕が一番信用できる人だし、隠し事してるみたいでちょっとさ)
彼女は少し考えて、
『いいんじゃない?』
と頷いてくれる。
よし。
「舞さん」
「なに?」
縁側に座っていた彼女と向き合う。
「忘れてたから今紹介しますね。僕の相棒、天月に住む聖霊『イヴ』です」
ポンッと刀から身長30センチの二対の透明な羽根の生えた妖精ヴァージョンのイヴが出てきた。
「はじめまして、舞。よろしくね」
笑顔でヒラヒラと手を振るイヴ。まあ、見た目はかわいいな。
あれ、舞さんはほけっとした顔で反応ないんですけど? そんなに驚いたのかなあ?
「ま、舞さん?」
僕が声をかけると同時に舞さんがふるふると手を震わせながら手を伸ばした。
「か」
やばい。と思ったがもう遅かった。
ガシッとイヴを掴んで
「かわいい〜!」
そのままものすごい笑顔でイヴに頬ずりする舞さん。
「かわいいかわいいかわいいよお。空狐くん何で内緒にしてたの? こんなにかわいい子を!!」
いや、だって色々あったから……
イヴがバタバタ暴れるが、舞さんは意に返さないで頬ずりする。
「た、助けなさい! 助けて! く、空狐! 痛い痛い痛い〜!!」
「あ〜もう! ちっちゃくてお人形さんみたい! 今度いろいろ服探さなきゃ!」
ごめん、イヴ。今の無敵状態の舞さんに何を言ってもダメだから。
がんばって耐えてくれ。
「薄情モノ〜!!」
イヴの叫びは青空に消えていった。
鈴:「お久しぶりです。鈴雪です」
刹:「やっと修正完了したな。これでやっと俺も活躍できる」
鈴:「まだ、しばらくは日常編だけどな」
刹:「そういやそうだな」
鈴:「これからがんばっていきますので、なにか変なとこや誤字脱字があったら遠慮せず教えてください」
刹:「それと、作者が学校始まったので更新も少し遅くなるかもしれません」
鈴:「これからは、土曜だけでたまに火曜更新の予定です」
刹:「それでは」
鈴&刹:「「またの機会に」」