第十八話 戦いの後に
「んっ」
眼が覚めると後頭部に柔らかい感触。その感触を中心に眼が覚めていく。
「あ、起きたの? よかったあ」
心配そうに覗き込む舞さん。
「あれ、僕なんで寝て……」
そこで思い出した。切り札の『炎龍飛翔』を朱音さんに破られたんだっけ。
柔らかい太ももの感触に名残惜しみながら体を起こす
「朱音さんは?」
「あっち」
舞さんが指差す方向で朱音さんは……刹那くんに折檻されていた。
「お、ま、え、は、な〜んで、模擬戦で、あんなもの使うんだ! 非殺傷設定してなきゃ今頃、空狐はお空のお星様になってたんだぞ!! え?」
空狐くんがみょんみょん朱音さんのほっぺを横に引っ張る。
「ひたい、ひたい」
「ん? 今度は額か?」
そう言ってごしごし自分の額を擦り付ける刹那くん。
「なんだかなあ〜」
さっきまでの戦闘がうそのような和やかさだった。
「なんか楽しそうだねえ」
舞さんの言葉に僕は頷くしかなかった。
「それではおじゃましました」
「また明日ね〜」
「おう。すまなかったな」
「また遊びに来てね」
あの後、簡単な治療(非殺傷設定でも打撲や切り傷はできる)を受けてたから、だいぶ暗くなってから僕らは帰路についた。
帰り道で
「まだまだなんだなあ」
空の月を見ながら思わず呟く。
あそこで罠にちゃんと気づいていたら勝ててた……かもしれない。まだ、修行の身ではあるけど、つくづく自分の未熟さを実感した。
「がんばらないとなあ」
「そうだね。がんばって今度は勝てるといいね」
舞さんがそういってぽんぽん肩を叩いてくれた。
「で、実際に戦ってみてどうだった? 」
俺は晩御飯の準備をしている朱音に聞いてみた。
「あの歳にしてはなかなかだったね。妖狐状態なら身体能力は今の私と同じくらいかな? スピードだけをとれば今まで戦った相手の中でもまあまあの方かな?」
「ふーん、まあ思ってた以上の使い手だったね」
「ま、こっちはまだ奥の手を使わなかったけどね」
「人に本気出せって言ったくせに……」
「あれを使うとすぐに体にガタが来ちゃうし、空狐だって『本気』ではあるものの『奥の手』は隠していたでしょ?」
二人とも笑う。
「まあ、天月の方も第一段階までしか見れなかったけど、予想以上の力は持ってたし」
「そっか」
朱音が皿を配る。そこで、ギギギッと鈍い音が聞こえた。
「そろそろ定期メンテナンスの時期じゃないか?」
「そういえば、そうだったね。今日も暴れたし、そろそろしなくちゃね」
体を捻ってみる朱音。そのたびにぎしぎしなる。
「と言うかそのボディー、基礎フレームから作り直したほうがよくないか? 移し変えてそろそろ二十年だし」
「そうだね、けっこう気に入ってたんだけど」
「本当ならもう少し保つもんなんだが……悪い。無理ばかりさせてさ」
俺は頭を下げる。
「いいよ。そのかわりこれからもずっといてくれれば」
朱音がにっと笑ってくれる。
「定期メンテナンスとなればあの世界に行くことになるな?」
朱音が料理を並べながら懐かしむような顔をする。
「ノエルもねえ〜。やっぱり親ばかしてるのかな〜?」
「懐かしいなあ。俺は数える程度しか会ってないけどなあ」
「ははは。夏休みになったら久しぶりにあっちに行こっか」
「いっつもやることは目白押しだな。あっちこっちに友達作ってるから」
ははは、と楽しそうに笑う朱音。
「まあ、そっちばかりじゃなくて仕事も頑張らないと。一応私たち神サマなんだから」
「こんなに忙しいなら引き受けんじゃなかったよ」
グダーっとテーブルに体を投げる。昔の俺のバカー。
「元気出して、私もいるんだから」
朱音がぽんと胸を叩く。俺はそのしぐさに頼もしさを感じた。
「頼むよ相棒」
「任せといて」
そこで、俺は笑う。
「さてと、これからいろいろ楽しくなりそうだ」
これからのことを考えて、俺は胸が高鳴るのを感じるのであった。
鈴:「やりました! もうすぐ夢の一万Hit! みなさんの応援のおかげです!!」
朱音(以後朱):「と言う訳で座談会です」
鈴:「どう繋がってんだよ。ていうか刹那は?」
朱:「今日は眠いからパスだそうだ」
鈴:「何なんだあいつ……」
朱:「まあ、代わりに私が相方を務めるよ」
鈴:「よ、よろしくお願いします。じゃあ、なんについて話す?」
朱:「この作品そのものについて」
鈴:「OK。この狐火は僕が作った四つ目の作品」
朱:「残りの作品は?」
鈴:「断片的なのが残ってるだけでぜんぜんできてない」
朱:「あっ、そう」
鈴:「一作目は少々欲張ってSFもファンタジーもとにかく思いついたものをどんどん入れたんだっけ」
朱:「もともと私はその作品の主役だった。ちなみに私たちが主役として活躍してたはずの作品は今後出す予定あるのか?」
鈴:「ない。はっきりいって中学の頃のは全部恥ずいから」
朱:「そうか……」
鈴:「では、みなさんそろそろ……って朱音なんだその物騒な釘つきバット」
朱:「いやなあに、作者に旅立ってもらうのさ」
鈴:「……どうして?」
朱:「その上で私がこの作品をを乗っ取る!! 私が活躍しないならお前はいらん!」
鈴:「うわ! 落ち着け。まて、お前性格変わってる! それに、俺が死んだらお前たちはああああ!」
逃げ出す作者。それを追いかける朱音。しばらくしてグシャっという音がしてカーテンが閉まる。
次回より狐火ではなく『朱音の雷』が始まります(嘘)