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狐火!~狐少年の奮闘記~  作者: 鈴雪
第二章 新しい学校
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第十六話 朱音さんのお茶会

 そんなこんなで、学園生活初日は幕を閉じた。

 でもって現在の問題。

「舞さん」

「何、空狐くん?」

 僕はできるだけ明るく聞く。

「今日の晩御飯は何ですか?」

「ハンバーグだよ。空狐くんが起きる前にちゃんと仕込んどいたんだ」

「ハンバーグかあ、楽しみだなあ」

 あはははは〜と僕たちは笑う。

「木霊〜」

「見せ付けやがってえ〜」

 はい、ごめんなさい。私が悪かったです。お願いだから許して。

 現在校門前でFCの連中に囲まれています。放課後、すぐに家に帰ろうとしたのだが、学校を出たところで発見され、家まで後少しの所で囲まれてしまった。

 後ろに石の壁、前には人の壁。

 うーむ、どうしよう。逃げ道ないし、今の現実逃避で余計に皆様怒ってらっしゃるし。

 さすがにこんな場所で魔術使うわけにいかないし。

 と、そこでコンコンコンと背後から石を叩く音が聞こえた。

「あ、すいません。騒がしいですよね? なるべく早く終わらせます」

『違う』

 あれ? これって、

「刹那くん?」

 出来るだけ声を潜めて聞く。舞さんはどうしたの? っていう風な顔をしたけど、僕が口の前に指を一本立てるとわかったと頷いてくれた。

『うん。俺』

「どうしたの?」

『いや、大変そうだから手伝ってやろうと思ってさ』

 持つべきは友とは本当だな。

『いいか?一、二の三で目を潰って耳を押さえろ。そしたらすぐにここの壁をよじ登れ』

 ふむ、一、二の三で……

「って、他人の家に入るわけには」

『ここ俺んち』

「お言葉に甘えさせていただきます」

 素直は美徳だよね。舞さんに指示を耳打ちする。

『よし。じゃあ、一』

「二の」

『三!』

 僕たちは耳を押さえて目を瞑る。

 ちょっと好奇心で薄めに何が起きるのか見ると、空中に何か変な筒が飛んでいた。そして……

 バン!!

 押さえてるはずの耳ですら劈く音が響き、強い光が……

 ぐあ! 片目やられた! スタングレネードかよ!

 僕は左目を押さえる。音が収まると、回りの人間はほとんど気絶してた。中には目や耳を押さえてごろごろしてる人もいる。

「今だ! 早く!」

 声が上からした。片目を押さえながら見上げる。

 刹那くんが塀の上から手を伸ばしていた。

「舞さん!」

「はい!」

 僕がしゃがんだ理由にすぐに気づいて、僕の肩に足をかける。

 勢いよく僕の肩を踏み台に刹那くんに引き上げられる。

 僕もそれに続いて上に上がる。

 そのまま二人とも刹那くんの家に転がり込んだ。


 刹那くんの家はかなり広いお屋敷だ。中庭に鯉の住んでる池があるくらいは予想できたけど案内されてる途中、家の敷地内に道場まであるのにはちょっと驚いた。

 そして、刹那くんにしばらくの間ここで隠れることを提案されて居間まで案内されて……

「やあ、いらっしゃい。ゆっくりしていってね」

 すごい美人に出会った。

 歳はおそらく二十代前ほどか。半腰よりも長く柔らかそうな(ありえない)ピンクの髪、紫の瞳。バランスの取れたプロポーション。凛々しく包容力のありそうな雰囲気。

 服は陽光の中でも霞むことはない闇と言えるように黒く、彼女の印象をさらに強くしてる。

 そして、彼女も刹那くんとはまた違うどこか普通の人とは違う匂いがしていた。

「にしても、珍しいよね。刹那が友達を家に連れてくるなんて」

 ふふふ、と彼女は笑った。

「あの?」

「ああ、名乗り忘れてたね」

 彼女は優雅に一礼をする。

「私は朱音。この家のメイドだよ」

 慌てて、僕らも頭を下げる。

「ど、どうも木霊 空狐です」

「倉田 舞です。はじめまして」

 僕らが名乗ると彼女はにこっと笑った。その顔は思わず見入ってしまうほど綺麗だった。

「そうだ、みんなでお茶にしない? いい葉が手に入ったんだよ」

 嬉しそうに朱音さんは笑った。


 それから、居間でお茶をご馳走してもらった。

「ちょうどシュークリームが焼けた所だったんだ。暖かいうちにどうぞ」

 そう言って朱音さんは色とりどりのシュークリームが載ったお皿を置く。焼きたての皮の香ばしい匂いとクリームの甘い香り。うん、すごくおいしそう。

 それから一人ずつ紅茶をついでいく。

「さあ、召し上がれ」

 さっそく紅茶を一口。馥郁とした香りが口の中いっぱいに広がる。う、うまい。これだけで満足してしまいそう。

「いつもより甘いな」

 刹那くんが呟く。

「何かわかる?ディン……」

「ディンブラですね?」

 舞さんがそう呟くと、朱音さんが嬉しそうな顔になる。

「わかるの?」

「はい、紅茶好きですから」

 そう言えば、こっちに来ると必ずおやつには紅茶が出てた気がする。

「そうか、なら……は?」

「ええ、いいですよね。……もいいですよね」

「私はどちらかというと……かな?」

 二人が自分たちの世界にトランスしていく。

 僕にはついていけないな……コーヒーならまだ大丈夫だけど。

 しかたなく、カラメルのシュークリームを取って一口。

 …………っは!

 意識が一瞬空の彼方に消えていた。

 こ、こいつは。うますぎる。

 今まで食べたシュークリームなる存在とは何ぞや? と、問いかけたくなるほど別物だった。

 焼き加減、さくさくした皮。中の甘く滑らかなカスタードの味……ああもう、言葉にするのもおこがましい!

「すごいだろ? 俺も初めて朱音のシュークリーム食べたとき似たような感じだったぜ」

 こくこくと頷きながらもう一つ。今度は砕いた胡桃が載ってるもの。

「はう」

 もう、普通のシュークリームは食べられないな……



「ふふふ、そうなの」

「そうなんですよ。みんなびっくりして」

「俺、危うく一目惚れするところだった」

「お願いだから人の恥をばらさないで」

 それからしばらく和やかに四人で話し続けた。

 そして、一時間くらいたって

「木霊くん」

「なんですか?」

 朱音さんが真剣な顔でこっちを見る。

「一手手合わせ願えないかな?」

 はい? いつの間にか彼女の手には長い棒があった。

「い。いきなりなんでですか?」

 ぴっと、朱音さんは懐から一枚の紙を取り出す。

「木霊 空狐。推薦とはいえその歳で仮免だけど一級退魔士であり、特級退魔士である月狐の息子。しかも、剣術家として勇名を馳せる銀狐の弟で剣の手ほどきを受けてる人間。仕事の成功率はそこそこのもの」

 な、なんで知ってるのさ?

「知らないの? 君はこの業界ではかなり有名なルーキーなんだよ。ぜひ手合わせ願したい。そのために刹那に連れてこさせたんだ」

 そっぽを向く刹那くん。そのためだったんか僕をここに招き入れたのは。

 でもなあ、女の人とはちょっと……

「私では不満かな? これでも君と同じく一級退魔士なんだけど」

 それはちょっと戦ってみたいかも。

「で、でも戦う理由はないし」「はい」

 刹那くんが一枚の紙を渡してきた。

「? なにこれ?」

 そして、中身を見て、


『親愛なる空狐殿へ

 戦え、以上

         〜兄より』


 兄さんだ……この字は兄さんだ。この、ミミズが毒を飲まされて苦しみのたくるような字は。

 舞さんが覗き込んでくる。

「何これ? 暗号?」

 違う。兄さんは素で普通の人には読めない字を書くことが出来るのだ。 なるほど、兄さんの手紙があるって事は最初から仕組まれてたんだなこれは。

「わかりました……手合わせいたします」

 その言葉に朱音さんは柔らかく微笑んだのだった。


鈴:「前回の座談会での設定に対してまた質問をいただきました。ありがとう!」

刹:「GUCCHONさんから。退魔士について」

鈴:「収入安定しなさそうだって。どうなの刹那?」

刹:「俺は大丈夫だけど?」

鈴:「いや、一般的にはどうよ?」

刹:「うーん、四級や三級は少し厳しい。収入が安定するのは二級か一級でそれなりに仕事が出来るようになったらかな?」

鈴:「特級は?」

刹:「それは、別格。大体がとんでもない肩書きを持ってる上に、一回の仕事で一年問題なく暮らせるくらいの大金は手に入る」

鈴:「月狐は妖狐の代表な上に炎術の第一人者だからなあ金には困らないかきっと。刹那、お前は?」

刹:「金は権力者をおど……もとい、提供してもらって研究を続けてるし、朱音もがんばってくれてるから」

鈴:「ふーん。この頃はどんな研究を?」

刹:「退魔士用の兵器開発」

鈴:「物騒な……」

刹:「いいんだよ。銃とかあるんだから対策打たないと。と、これどうだ?」

鈴:「おおかっこいい! どんな風に使うんだ?」

刹:「これはな、こうして」

鈴:「すげー!」


二人が自分たちの世界に行ってしまったのでこの辺で。

今回の話の流れ急だったかな? でも、こうでもしないと朱音と戦う機会をなかなか作れないんです。すいません。


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