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狐火!~狐少年の奮闘記~  作者: 鈴雪
第二章 新しい学校
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第十話 新しい友

「おーす」

 後ろから誰かが近づいてきて舞さんの肩を叩く。

「あ、おはよう刹那くん」

 舞さんが隣に並んだその相手に応えた。僕もそっちを彼を見る。

 刹那と呼ばれたその人は僕と同じ制服を着ていた。つまり、常磐学園の生徒。

 顔立ちは整っている方で、銀色の髪と蒼い眼が印象的だ。背は僕より高いがこれぐらいなら普通の身長だろう。すらっとしてるが、体付きはけっこう鍛えていそう。右手にカバンを、左手に竹刀袋を持っている。

 あと、なんか胡散臭い臭いがする。よくわからないけど、違和感というかなんと言うか、なんとも表現ができない臭いだ。

 あえて表現するなら、まったり濃厚で、それでいてしつこくなく、だけどいつまでも記憶の中には残って、井戸の底から這い上がってきた美女の絶叫のような……すみません。やっぱり表現できないや。

「どうしたの?」

 舞さんが不思議そうに僕の顔を覗いてきた。

「ううん、なんでもない」

 違和感の原因はとりあえず保留しておこう。

 僕は天野くんの方を見る。彼は、舞さんを挟んで立っている。

「はじめまして、ええと……」

「刹那。天野 刹那。よろしく。木霊 空狐くん」

 天野くんが人付きのよさそうな笑みを浮かべる。て、おい!

「なんで僕の名前知ってんの!?」

 まだ名乗ってないし、初登場だよね君は?!

「銀狐からいろいろ聞いてるから」

 ああそうなのか。兄さんから。

「知り合いなの?」

「知り合いっつうかマブダチ?」

 そういえば前、旅先で兄さんの知り合いに会った事あったな。それに、兄さんも何度かこの町に来てるし珍しくないだろう。

「いや、俺は去年ぐらいにこの町に越して来たの。銀狐とは別の場所で知り合った」

 おい。

「なんで、僕の考えがわかんの?」

 僕は顔を少し強張らせる。

「俺は地の文が読めるのさ」

 メタな発言だー!

「うそうそ、そう顔に書かれてただけだよ」

 ぱたぱたと刹那くんが手を振る。

 嘘か。そして、そんなにわかりやすいのか僕の顔。

「さてふざけるのもいい加減にして」

 たしかにふざけすぎです。

「よろしく、空狐」

「うん、よろしく。天野くん」

「はは、刹那でいいよ」

 刹那くんが笑った。

「じゃあ、よろしく刹那くん」

「おう」


 三人で話しながら歩くと生徒の数が増えてきた。そろそろ学校かな?

「やっほう、空狐、舞、天野」

 後ろから元気な女の子の声。振り向けば予想通りハルが小走りで近づいてきた。そして、その少し後ろにいる龍馬。

「おはようハル、龍馬くん」

「はよ」

「おはよ、ハル、龍馬」

 にこにこと笑顔のままハルが、ちょっと苦笑気味の顔で龍馬が僕らと合流した。


「じゃあ、ハルと龍馬は違うクラスなんだ」

 ハルと龍馬が頷く。

「うん。部活はあたしたち全員同じだけどね」

「部活?」

「そうだよ。わたしたちみんな同じ演劇部なの」

 舞さんが嬉しそうに笑う。

「俺や龍馬は主に裏方。舞さんと柊は役者」

 そう言いながら刹那くんがぽんと龍馬の肩を叩く。

「といっても、部員が少ないから仕事の掛け持ちしてるのがほとんどだけどな」

 龍馬が苦笑。ふーん。大変だな。

「そうだ、空狐も入っちゃいなよ。演劇部」

 ハルが名案とばかりに手を叩く。

「そうだね。それいいよ。ちょうど今度の劇の役が足りないし」

 ハルと舞さんがきゃっきゃと騒ぐ。演劇か。ちょっと面白そうだな。

「うん、いいかも。で、どんな役?」

「えっとね、主人公……」

 いきなり主役?! 大抜擢だ! こりゃがんばんないと!

「の妹」

「チョイ待て」

 ここでもか? ここでもなのか?

「ここでも僕に女装しろと?」

 少しの間みんな黙って。

「「「「うん」」」」

 全員肯きやがったあーーーー!!

「嫌じゃーー!」

 僕が絶叫してみんなが笑う。僕はふてくされてそっぽを見る。

 だけど何だか心地よい。この雰囲気、妖狐の里ではちょっとなかったな。

 たぶん、尻尾を具現化させればぶんぶん振ってしまっているだろう。

 こんな生活が始まると思うと気持ちが弾んできた。










 ――この時までは。

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