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勇者?何それおいしいの?  作者: 士道 ひいらぎ
1章~異世界なう~
8/15

森を抜けて

 あのあと流石に崖から飛び降りるわけにもいかず...回り道して、街道を通りながらホーピリアに到着。

 ちなみに今はホーピリアの門で通行許可を貰っているところだ。

 こういうのにはコルノさんがめっぽう詳しく...なんだかんだコルノさん本当に仕事してるな...。


「そういや結構早く着きましたね。ソローロを発ってから1日しか経ちませんでしたけど。」

 そこまでムフフな展開など無かったので割愛したのだが...俺達はちゃっかり野宿している。

 まぁコルノさん(軍人)の前でムフフな展開が起こるはずもないのだが...


「元々ソローロとホーピリアは場所が近いことから国交がとても良いのです。今回もカリーナ王のお陰で宿代が免除されるみたいです。」


 なるほど...。


 正直コルノさんに聞きたいことはとてもいっぱいある。

 あの敵の正体や、この旅の目的...。

 だが、短いあいだだが一緒にいてコルノさんは悪い人ではない。それは分かった。

 だから、それで十分だ。


「ああぁ!!!見てください見てください!トーヤ様!」

 落ち込みモードだったはずのメアが俺をぶっ叩く。

「なんだよ!こっちは今シリアスな感じで考え事してたんだ!」

「これ見てください!」

「スルー!?」


 メアが持っていたのは旅行雑誌のようなもの。

 相変わらずこの世界の文字は読めないのだが...メアが指差しているところには

「...温泉?」

「ですよッ!」

 そう。温泉。

 露天風呂だろうか。

 日本の高級旅館にでもありそうな露天風呂がそこには載っていた。


「パルは...どうすんだ?俺もお前に貰った小遣いあるけど...足りないんじゃ?」

「それについてはご心配ございません。」

 コルノさんが声を掛ける。手続きは終わったのだろうか。


「実は僕たちが泊まる宿というのが、その雑誌の宿なのです。」

 ............ゑ?


「ここここここここここここここんな高そうな宿に!?」

「いつからトーヤ様は鶏の鳴きまねが得意に?」

 メアが冷静に突っ込む...が、やはりメアも驚いている。

 だってそうだろ!?こんなの現代の頃もテレビなんかでしか...。

「宿代は、免除です。」

「部屋...温泉...」

 パクパクと酸欠の金魚のように口を開けながらうわ言のようにつぶやく。

「部屋は1人1部屋。温泉は大浴場...この温泉になるのですが...後、他のお客様もいらっしゃるようです。」


 そんなの全く気にしない!あああああ!!!よかった!異世界来てよかった!...多分!


「さて、通行許可も出たことですし。いよいよホーピリアの街ですよ。」

 コルノさんが荷物を持ち直しながらそういう。

「いよいよですね...!」

「きっとびっくりしますよ。ソローロの街も結構繁栄しておりますが...ここは桁違いです。」

 あのソローロに来た時だって内心驚いていた。

 ゲームとかの最初の街は大体田舎であることが多い。

 しかしあのソローロの街は...日本でいう東京くらいは発展していた。

 それと桁違いとは...もう想像ができない。


 大門を開けた俺を待っていたのは...都会なんて言葉じゃあ表せない。否、都会とはまた違う光景。

 ...例えるなら、『近未来』。


「もう一つの大都市、『スターム』は完全魔法都市と呼ばれています。

 ですが...ここはそことは対局。完全技術都市です。」

 周りには『技術』が溢れている...のだが、その一つ一つは魔力をエネルギーとし、『魔力』がある事を前提として活動しているようだ。

 現代世界の『科学』とは別物だろうな。


「ぼんやりしながら道を歩いていると人にぶつかりますよ?」

「大丈夫大丈夫。そんな漫画みたいなことイテッ!!」

 フラグ回収。

 見事に誰かにぶつかり大転倒。

 立ち上がろうとすると目に入るのは、苦笑するコルノさんと、「言わんこっちゃない」と言った様子のメア。

 そして...俺にぶつかった張本人。

「す、すいません。怪我などは?」

 俺は急いで立ち上がり、頭を下げる。

 目の前に立っていたのは女性。いや......女の子か。

 俺より1つ2つ下であろう女の子。

 その女の子が発したのは...


「...触るな俗物が。」

 という至極単純な...罵倒だった。


「ちょ、ちょっと!?ぶつかったのはご主人がいけませんが、流石にその言い方は無いでしょう!?」

 メアが割り込んでくる。

「ふん、ならこちらは悪くもなんともない。よってわざわざ気を使う必要もない。」

「なッ......」

「口の聞き方には気を付けろよ。庶民どもめ。」

「こんの......クソアマが......!!」

 なんか黒いオーラを発しちゃってるメアである。


「なあぁ!?やめろ!くるじぃ......」

 ダークなメアが女の子の首を絞めあげる。

「ちょ!やめなってメア!」

「...仕方ありませんね。」

 なんとかメアをなだめることに成功する。

 ...殺す気だったのか...?


「とにかくすみません。面倒はお互い嫌ですし、もう痛み分けということで...」

 コルノさんが割って入る。別に俺がコイツにぶつかっただけなんだけどなぁ...


「...貴様は...。...まぁいい。次から気をつけろよ。庶民よ。それと...」

 立ち去ろうとしていた少女がちらりとこちら...主にメアの方を向く。

「あばよ。貧乳!」


 ............


 次の瞬間目に写ったのは、天高く空を舞う少女の姿だった。




「...禁句ですか。」

「もちろんですよ。あんなになりたくないし...」

 俺とコルノさんの男子二人衆での話題は、メアの貧乳について。

 いや、いかがわしくはない。ただ...メアって起こると怖いんだなぁ...って事だ。


「あれほどの早業に腕力。躊躇いの無さといい...軍に欲しいくらいです。」と、コルノさんも言うのだから相当だ。



「...まぁあの女の子もぶじだったし。それに...ついに!」

「はい。ここが僕たちが5日間泊まる宿です。」

 そう!やっとついたのだ!

 和風の佇まい。広さはざっと...東京ドームいくつ分だろう。少なくとも東京ドームより広いのは分かる。


「楽しみですね!あははは!」

 何かしら壊れている様子のメアさんが笑う。

 いやいや...本当に怖いから。



 そんなこんなで宿の自室。

 中も豪勢で...正直夢みたいだった。

 メアの家が極一般的だったので、逆にギャップに戸惑う。


「大会予選は...六日後か。」

 いつもどおり空に浮かぶ月を見上げながら呟く。

「戦う術も...技術も手に入れた...。」

 と言っても明日から制御に向けての修行なんだけど...


「だけど!とにかく何がなんだか未だにわからないけど!優勝してや...」

「ええ!?お風呂ってこっちなのか!?...いや、看板には...」

 見事に決めゼリフを邪魔されましたよ。

 ビシッとポーズまで決めてたのに部屋の外の声にかき消されましたよ。

 ...まぁおかげで風呂に入ることを思い出したのだが。


「にしても...聞き覚えがあるような?...気のせいか。」

 この世界に知り合いなんてほとんどいないもんな。


 カバンは相変わらずの学生カバン。服も制服である。...と言っても使いまわしているわけではなく...まぁ説明が長くなるので別の機会に。

 とにかく、カバンから着替え等を取り出し、部屋を出て大浴場へ向かう。


 メアが大絶賛していた風呂だ。入ってみて損はないだろう。

 ...まぁ1日間風呂入ってなかったからかもだが。


 男湯と女湯はどうやら別れているようだが...漢湯と書かれているのはきっとイタズラだろう。

 いや、イタズラであってくれ。

 ガチムチな漢達が風呂で所狭しと体を...うわああああああああ!!!!!!


 頭に浮かんだ腐れた妄想を振り払う。俺にそんな趣味ねー!!


「クソッ!...と言ってもどうやら人は一人っぽいな。」

 バシャア、と水を床に桶からこぼす音。そして風呂へ浸かる音が。

 この客は俺より少し前に来ていたらしい。


 ...正直一人が良かったけどな。


「まぁ贅沢言ってられない。...行くか。」

 そう言って風呂の戸を開け、湯けむりを払った先に見えたのは...月の浮かぶ夜空の下。俳句のテーマになりそうな華麗な風呂に浸かる昼間の少女だった。

  ー了ー

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