表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者?何それおいしいの?  作者: 士道 ひいらぎ
1章~異世界なう~
4/15

ソローロ城~未来の勇者に~

読んでくれてありがとうございます

「おいおい...騎士団のやつらあんな若い男の子を...」

「シッ!あんた、きかれたらおしまいだよ!」

「うわぁ...あの子何したんだろ...」


 手錠をハメられ、ごっつい装備の騎士達に連れられて歩く。

 周りの人達が道をよけていく中、大通りを通る様などまるで大名行列...って違う。


「あのぅ...」

「...」

 声をかけてみるも何も反応しない。

 おいおいおい、俺がなんの罪を犯したかくらいは聞かせてもらってもいいんじゃない?


 しばらく歩くと、どでかい城が見えてきた。朱色を基調としたその城は、落ち着いた雰囲気でどこかおとぎ話の中にいるように錯覚してしまった。

 ...まぁ異世界なんだから同じようなもんか?


「隊長、団長から伝令。目的の者はそのまま王座の間へ通せ。らしいです。」

「...了解した。」

 俺の斜め前にいた奴が、先頭の如何にも偉そうな奴に何か伝える。

 ...王座の間?


『予見者ターニャが3年ぶりに予言したんだぜ!?』

『勇者が君臨するであろう。』

 先程の馬車の運転手の話が脳裏に蘇る。


 確か...勇者は我らの元へ馳せ参ずるとかなんとかって言ってなかったか...?


「あのぅ...まさか、予見者ターニャの...」

 俺が何も考えずそう口走ったとき、列がぴたりと止まった。

 なんだ!?なんか...言っちゃあいけないことを...?


 前にいた一番偉そうなやつ、多分隊長がこっちに歩いて来る。

 ...あぁ。これ、死んだわ。

 そう思った、のだが...


「そこまでおわかりになられているなら...話が早いです。」


 そう言って隊長は兜を外して、端正な顔を顕にする。

 薄いグリーンの髪。髪は少し長めで、前髪をピンで留めている。

 如何にも優しそうな顔で、こちらをみてにっこり笑う様など、現代でテレビに出るようなアイドルそのものだ。


「さて、行きましょうか。」

 え?...俺てっきり斬られるかと思ってたんだけど...

 心無しか俺の手にかけられた手錠の引っ張り方が緩くなったのを感じながら様々な疑問とともに俺は城へ連れていかれた。




「...着きました。ここが王座の大門。ここを開けば王座の間です。」

 城の中を歩き回った挙句、まるで凱旋門のようなデカイ門が目の前に現れる。

「...これ、なんですか?9と3/4本目の柱に突進したら入れるとかいうあれですか?」

 なんかメガネを付けた魔法少年がそうやってるのを見た事があったので試しに言ってみたが...


「はい。そんなかんじです。」

「そんなかんじなの!?」

 正解しちゃったよ!?嘘でしょ!?


「まぁ、冗談ですけど。」

「でしょうね!」

 うぅ...初めは厳しい印象しか無かったが、人とは案外分からないもんだな...。...ん?そういやほかの騎士団員は?

 いつの間にかこの人以外の騎士団員が居なくなっている。別れていったはずはないんだが...。


「ああ。彼らは僕の能力で生み出した、言わばゴーレムですね。」

「...は、はぁ?」

 能力...?

 魔法の次は異能力...か。


「とにかく、用事を先に済ませましょう。門を開きます。」

 隊長が門に手を当てて唱える。

「クォーカルティ」

『キーワード、認証』

「うおっ!?門が喋った!?」

 と言うよりどこからか機械音声が流れてきたのだ。


「さぁ。いよいよ王座の間です。」

「...何が始まるんですか?」

 しかし、隊長は笑うだけで何も答えない。

 そうこうしている間に門は開ききった。


「入れ」


 そんな声が奥から聴こえた。


  「さぁ。手錠は解きました。後はどうぞ。」

 そう言って隊長は後ろへ下がっていく。

 といっても立ち去らないところを見ると多分俺の後について来るつもりなのだろう。


 眩しい光を抜け、門を一歩踏み出したその先には

 豪勢な椅子に座る王様と、その横に佇む少女がいた。




「ようこそ。ソローロへ。心から歓迎させて頂く。」

 王様が男性にしては高い...いわば中性的な声でそう言う。

「あの...ホントなんで俺は...」

「んん?話は聴いておるのだろう?

 コルノ第二隊長はそう報告してきたが...」

 そういって軽く後ろのほうを見る。きっとあの隊長こそ件のコルノ第二隊長なのだろう。


「申し遅れたな。我が名はテルエル第二都市ソローロ現国王、カリーナ・ソローロだ。そしてこちらが...」

「予見者をしております。ターニャと申します。」

 王の横で佇んでいた少女が挨拶をする。

 が、声を聞く限り大人びている。実は歳をけっこうとって...ぐ!?

「い...きが...!」

 首が急に物凄い力絞められて息ができない。

「これ。ターニャ殿、その変にしておきなさい。」

「申し訳ございません。この者が何か良からぬ事を考えておるようでしたので。」

 首が軽くなる。

 コイツ...本当に俺が死んだらどうするつもりだったんだよ...

 と言うかどうやって俺の首を...?


「はぁ。未来の勇者にそんな扱いをしおって...」

 ...え?...そうだ。そういや俺はその勇者とやらの話を聴くためにここに来ていたんだ。

「あ、あなたは俺を知っているのですか!?」

「ああ。お前がこの世界の人間では無いということも知っている。」

 ゾクッときた。

 もしかしたら俺のこうなった原因が分かるかもしれない。

「詳しく教えて下さいっ!

 俺はなぜこの世界へ来たのですか!?」


「すまぬな...。流石にターニャもそこまでは分からなかったようでな。」

「はは...ですよね。」

 がくりと肩を落とす。

 分かっては...いた。こんな都合のいい話があるなんて。

 でも...悔しい


「しかし」


 俯いた俺に、そんな言葉がかけられる。

「我々、テルエルの要求をのんでもらえるのなら、我々は力尽くしてお前を補佐しよう。」


「...どういう意味ですか」

「簡単だ。我々の軍に参加して欲しい。しかし隊に属せとは言わん。最高の仲間を用意してやる。だから我々の頼みを定期的に聴いて欲しい。」

「...」

 そんなことを言われるが、全く分からない。

 第一俺は戦う方法だって分からないんだ。


「まぁ、まずは試しという事だ。

 これを引き受けて欲しい。...ターニャ。」

 予見者ターニャが俺の近くまで歩いてきて、俺に羊皮紙のような紙を渡す。

『ホーピリアまで行き、海星の玉を獲得せよ。』

 紙にはそう書かれていた。


「勇者といえども装備や力が無ければ強くもなれん。

 だからまずは腕試しも兼ねてそれを頼まれてくれんか?」

 ...確かにこんな大都市国家にサポートを貰えるなら願ってもないチャンスだろう。しかし...

「お断り、させていただきます。」

「...なぜ?」

 王様が訝しげに問う。


「メアが...帰りを待ってますから。」

 そう。メアにはこの一週間身の回りの世話など本当にたくさんの借りを作っている。それを返すのが先だから。


「あぁ。あのメイド見習いか。」

「知ってるのですね。」

「まぁな。...おい、コルノ!連れてくるのじゃ!」

「はぁ...え?」

 隊長が部屋の右にあるドアを開け、その中に入っていき30秒ほど...中から、隊長とともに白を貴重とした、しかし薄い青のあるメイド服を着たメアが出てくる。


「ええぇ!?メア!?」

「か、買い物中にいきなり連れ去られてね...。」

 メアはソローロに来てた訳か...。


「とにかくどうだ?そのメアなるメイドを連れて行けばいい話だろう?」

「いや、その、メアに迷惑が...」

「ぼ、冒険ですか!?行きます!行きます!」

 すっごい食い気味にメアが反応する。

 コイツ案外アウトドア派だな...。


「だけど...俺、戦えません。」

「知っておる。だからこやつを連れていけ。」

 そう言って王様が指さした相手は

「よろしくお願いしますね。」

 そう、隊長ことコルノさんだった。


「とにかく、お前たち3人はホーピリアへ向かい、海星の玉を獲得しろ。分かったな。」

 口で言うのかよ...


 そんな疑問もわかないほど俺は興奮していた。

 恐怖かと問われれば、ノーではないが、イエスとも答えないだろう。

 なぜかって?

 だって楽しみじゃないか。


 見知らぬ土地へ、メイドと騎士と三人で向かう旅。

 俺は密かにワクワクしながら、『やってやる』と心に誓った。

読んでくださりありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ