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勇者?何それおいしいの?  作者: 士道 ひいらぎ
1章~異世界なう~
2/15

ナルシア湖~『立派に名前負け』~

 目が覚めたのはあれから何時間たったんだろう。

 とにかく今の時間は午後か午前の8時らしい。

 自分が寝かされていた部屋の時計がそれをものがたる。


「俺は...あのあと...」

 テストが返されて、憂鬱な気分で家へ帰り、そして...

「ぐぅ...」

 何故かわからないがそのあとが思い出せない。何があったのか全くわからない。

「クソ!家に帰った筈なのにその後が...」

 いや...思い出してきた。確か公園で警察に...

 そうだ。警察だ。

 何を俺はしでかしたのか、公園で警察に会ったのは覚えている。しかし...その警察と何をしたのか、それも思い出せない。


 火のあるところに煙は立たない。絶対に何かあるはず。

 ちなみに俺はログハウス調の家の一室で目が覚めた。

 全てが木でできたこの家は木製品のいい香りが漂い、とても落ち着ける。

 部屋にはタンスや本棚があり、ここが誰かの部屋であることがわかる。

「一体どこなんだよ...ここ。」

 起き上がって辺りをみると、自分の寝ていたベッドのすぐ横に窓を発見。

 カーテンを開けて周りを見ると...

「なんだよ...これ」

 一面をしめる湖。俺の住んでいる街の海なんて比べられないほど澄んでいる。

 そしてとても大きい。流石に琵琶湖のようには行かないが、それでも巨大である。


「綺麗...」

 俺の口から自然とそんな言葉が漏れてきたその時。

「目が...覚めました?」

 不意にそんな声が掛けられる。

「は、はい!」

「なら良かったです。」

「...」

「...」

 なんだよこれ。会話続かないぞ。

 あれか、会話の才能が俺には無いのか。

 ...どうでもいいが才能、というワードを浮かべた瞬間少し頭痛がした。きっと寝過ぎたのだろう。


 入ってきたのは同じ歳くらいの少女。薄い青の服を着ていて白いショートの髪。第一印象は『清楚』


 取り敢えずは、俺が何時間ここで寝ていたのか把握しよう。

「え、えーと...今は何月何日でしょう?」

「はい。今日はクロノス暦17日目でございます。」

 ...は?

「えと、何月何日?」

「はい。今日はクロノス暦17日目でございます。」

 まるでド〇クエのように、同じセリフを繰り返す。


「ちなみに、ここはどこですか?」

「ナルシア湖の畔。並びに私の家でございます。」

「...え?」

「ナル...」

「いや、もういいですから!」

「何か説明に不備がありましたでしょうか?」


 キョトンとする少女は嘘をついているような目ではない。

 第一、白い髪の少女なんて人は日本では珍しいのだ。

 それに地名からして日本ではないだろう。

 ...じゃあどこだ?

 相手も日本語を話している。ここは日本じゃないのか?


「あの...」

「申し訳ございません。申し遅れました。

 私は『メア』。1流のメイドを目指して日々精進しております。」

 メア、それがどうやら少女の名前らしい。

 いや、そうじゃなくて。

「ここって...日本ですか?」

「ニホン?

 ...あぁ!儀式に使うロウソクですか?

 ご心配為さらなくても2本どころか100本はありますよ。」

 どうやら日本では無いらしい。


「え?貴方は魔術師では無かったのですか?」

「なんでそういう結論になったんだよ...」

 彼女にこの場所のことや、俺がどうなっていたのか聞いていたのだが、途中混乱してしまい...まぁ今も分かっていないが。

 しかし、彼女と話しているうちに敬語は抜けていった。メアさんの方も積極的に話しかけてくれ、距離が縮まったのを実感した。


「だって...昨晩、泉に紋様が浮かび上がったとともに、貴方が泉の近くにびしょ濡れで倒れてて...」

「それで、介抱してくれたんだ。」

「取り敢えずは荷物を確認したんですが」

「なるほど。荷物を盗もうとしてたんだ。」


「ひかひ...はんかひたほほのはいほんはかひて...」

 俺が口をつねったから相手は喋れないようだった。

 本当はゲンコツをしようかと思ったけど何故か拳を握ると頭痛がするのでやめた。

 普通に拳を握るのはどうも無いのに...。不思議だ。


 ちなみに通訳すると

「しかし...なんか見たことのない本ばかりで...」

 らしい。

「文字も見たことはあるのですが...魔術文字でしょう?私は魔術文字は読む事が出来ないのです。」

「え?ま、魔術文字?」

「?、そうですけど...」

 嘘だろ。俺は学校で実は魔術文字なる物を必死こいて学んでたのかよ。

「魔術...例えばメラガイアーとか?」

「...?」

 ニコッと笑いながら困ったように首を傾げる。きっとマンガやアニメなら『あの汗のマーク』が出てるところだ。

「違うか...」

「えと、めらがいあーとは?」

「気にしないで。」

 おかしい。結局ここはどこなんだ。

 俺の家はどこで、俺は何故ここにいる?

「ところで貴方のお名前は?」

「あぁ、俺はスメラギ トウヤ。...立派に名前負けした名字だよな。」

「トーヤ様ですね。了解したした。」

「え?様?」

「はい。私はメイドとしての修行をしておりまして...嫌でしたか?」

 いや、そんなわけでは無いんだけどさぁ...

「分かりました。ではメイドの勤務時間ではない夜は『様』も付けず、普通の人同士として応対致します。」

「う、うん。何でもいいけど...」

「今は8の刻を刻んでおりますね。...明日から応対を変えますので。」

 まぁいきなりキャラ替えなんてのは結構難易度高いよなぁ。

 いや、というか

「お、俺はこれからどうすれば...?」

「はい。トーヤ様は記憶障害か何かで基本知識さえも覚えてらっしゃらないようなので私が明日から教えさせて頂きます。」


「で、でもここは君の部屋だろ?君の両親だって...」

「メイドの修行ですから。親はここにはおりません。ここは我が家は侍女一族でして。ここは私の修行の為に頂いた、言わば私の家でございます。」

「か...金持ちなんだね...」

「とある富豪のメイドをしていた先祖がおりまして。その遺産のおかげでしょう。」

「でもここ、君の部屋じゃ...?」

「あぁ、大丈夫です。私の部屋はこことは違いまして。

 ここは来客用の部屋でございます。」

「でも本棚の荷物とかは...」

「ただ置いてるだけです。

 何も置かなかったら寂しく見えません?」

 気持ちは分からなくはないなぁ...



 なんだかんだで俺はナルシア湖の畔に住むメイド見習い。メアの家に居候する事になった。

 メアは俺がここにしばらく滞在する事が決まり次第、

「明日の朝食の準備をします。」

 と言ったっきり戻らない。

 きっと寝たのだろう。


 これから俺は、何をすればいいんだろう。

 俺は少なくとも『思い出せない空白の時間』に何かがあったとにらんでいる。


 俺はここがどこで、どんな場所かも分からない。だけど絶対に元の世界へ戻ってやる。


 メア風にいうと『10の刻を刻んだとき』、俺は1人、そう誓った。



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