猫がいる古書店
“どのような本をお探しですか?”
ニャどとオイラは言うハズもニャい。
オイラは老夫婦が営む古本屋に勝手に居すわる猫だからだ。
そう。オイラは猫である……名前はもうニャい。
産まれてすぐにペットショップで飼われ、オヤジとお袋の顔すら知らニャい。
オイラを買った男の顔も、捨てやがったあの時から付けられた名前とともに忘れている。
もう野良にニャってからの方が長く生きちまっているぜ。
そんニャオイラが彼女に恋をしたのは半年前。
『おいネコ。オマエさんエサ食うけ?』と、いつものようにこの家のバァさんがオイラに梅干しを差し出す。
実にいらん。
そして小さニャ自転車を押しニャがらオイラの前に現れたのが彼女である。
よく来る客人でこの店の夫婦ともよく喋る。
大学生をしているらしいが、オイラにはよく分からん。
しょっちゅう店に来ては何かしらの本を手に取り読みふける。
しかも天然ニャのか癖ニャのか。本を逆さまにして読むことが多い。
どう読めているのか? すごく不思議である。
たまに本を購入しては近くの公園のベンチに座り読んでいる。
いつも彼女は小説を読み、ベンチにはコーヒーとサンドイッチ。無糖と加糖は日によってバラバラだが、たまに紅茶を飲むこともある。
そんニャ彼女の隣で寝るのが思いのほか居心地が良い。
それから半年後の現在。オイラはもう彼女に夢中でドキが胸胸。いや胸がドキドキと言うヤツだ。
だがしかしニャんたることか。大学生の娘に恋をしてしまったオイラだが。やはり彼女は人間であり、オイラは最近腹が出始めて太り気味ニャ野良猫だ。
どうしようもニャい。決して壊せぬ分厚い壁だ。
生まれて初めて猫として生まれた事を後悔したさ。
彼女が笑顔でオイラに話しかけてくるたびにオイラの胸は苦しくニャる。
趣味の読者以外にも海外に興味をもち、特にイタリアが好きで。ローマやヴェネツィアへ旅行に行きたいとも行っていたニャ。
大学の友達と行くために今はお金を貯めているらしい。
そのへんには沢山の猫が生息する場所もあるそうで彼女は真剣にオイラのガールフレンドを探してあげる、と無邪気に語るのだ。
――違う。
――いらニャい。
好きニャ『人』ニャら日本にいる。
いま目の前にいるアナタだ。
時々自分のために買って来るコンビニのポテトサラダをオイラにくれる君が好きニャのだ。
実にいらん。だが頂こう。他ニャらぬ君からのご厚意だ。
この瞬間は忘れニャい。この空間を忘れニャい。
ジョギングをする中年夫婦。辺りを物色するカラス。公園の砂場で遊ぶ少年少女。
たまに姿を見かける、リストラに遇い家族に言えず、公園でヒマを潰す平日の父親。
全てを目に焼き付ける。
だがいつの日か。仲良くニャったオイラに彼女は話しかけてくるだろう。
彼にプロポーズをされて結婚を考えている、とか。
もし……そんニャ時がきたら暖かく見守ろうと思う。当然だ。
だが、もしオイラと心が通じ合えているのニャら。オイラの気持ちを理解してくれているのニャら。
どうかオイラには報告しニャいでほしい。
デリケートすぎるオイラには、その言葉は耐えられニャい。
猫であるからこそである。もうあの本屋にもいられニャくニャる。
日が暮れて彼女は家路に向かう。
夜にニャり、再びあの公園のベンチでくつろぐオイラは空を見上げた。
いつ見てもニャんと美しい。
夏の大三角は見飽きニャい。
小説を書き始めてから相変わらず成長してない感じな文章力や表現力ですが、気にせず読んでいただければ幸いです。
コレからも何とぞヨロシクお願いいたします!
いつも堅い文面ですが、自分フツウに気さくで~す♪