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第2話 一粒の記憶

「なに……?こ、れ」


まるで、始っから何も書かれていなかったみたいだ。

……夢だこれは。夢だとしても変だということは置いといてこれはきっと夢だ。

ぎゅっ、と目をつぶり見開いたセカイに記憶が残っていることを願いながらぱっと目を見開くと


「パラメータが破れたみたいだね。かわいそうに」


見知らぬ男が目の前にいた。……って、え!?

まさにポルターガイスト現象!だれ!?不審者!?不法侵入?

目の前の男はニコニコと不気味なまでに笑顔をくずさない。

19歳、ぐらいだろうか。スッと高くのびた背に整った顔立ち。金髪の髪の毛が彼の整った容姿をさらにひきたてている。


「あ、あの。パ、パラパラ?」


彼の言った単語を復唱したつもりだったのに、くくくっと笑われてしまった。


「パラメータ」

「…パラメータ?」


ん?と首をかしげると、彼はその笑顔のまま口をひらいた。


「詳しく説明すると、とにかく難しい。んーで、アイツらに説明してもらおうという訳」

「は……、はあ」


正直言って意味不明。彼の言うパラメータという単語もアイツらという言葉の意味も全く分からない。

そしてなによりこの人馴れ馴れしい。もしかしたら、わたしのことを知っているのかもしれない。

わたしが覚えていないってだけでさ。


「わたしの事知ってるんですか?」


かなりバカげているであろう質問。それでも、それを上回るほどのバカらしい状況が今ここで実現している訳だからそう発言する事に文句は言えない。


「パラメータを見たからね。君の名前は|立松茅愛〈タテマツチナ〉。それ以上のことを教えるのはまたあとで。

今は先に君を連れて行きたい所がある」

「タテマツ、チナ」


自分の名前であろう単語を口にすると、頭の中に立ちはだかる壁が少しだけなくなったような気がした。

彼の言うそれ以上の事、とはきっと家族のことや出生の事だろう。

それを今は教えられないということはそれ以上にわたしを連れて行かなければならない所があるらしい。

パッと思いついた限りの場所は病院。それもそうだろう。

自分で記憶がなくなったことを自覚しているものの、きっとこれは記憶喪失に違いないのだから。


自分の中で少しだけ納得がついた所でそういえば彼は何者なのだ、と本当は最初に聞くべきだったことを思い出した。


「エル=モンヴェール、よろしくね」

「はっ…?」


エル……モンなんちゃら。

ええい、エルモンでいいや。とにかく彼は名乗った……ん、だよね?

いかにも日本人離れした名前なんですけど。

もしかして外国人?、にしても日本語ペラペーラだし。


しつこく考えて考えて考えるわたしの手を強引にとりスタスタと歩いていくエルモン。

待った!

あくまでわたしは華の女子高生……、のはず。そんな乙女の手をいとも容易くなに勝手に握っちゃってんのよ。


「あっ、そういえば確認忘れてたね」

「は?」


またもや意味不明。

確認、つまりなんの?なんの確認でしょうか。


「人間だれしも、行き方は自由だ。だから君も自由に選んでくれてかまわないよ?」

「……へぇ、あぁ、そ、そうですか」


分からん。

とにかく行き方を選べと言われているみたいだ。

行き方=どうやって病院に行くか。

それはつまりバスか電車か何かしらを選べということだよね?正直言います。

どうでもいい。


「何でも良いんですけど」

「ああ、そうわかった。じゃ、俺が選ぶ」


そう輝かしい程の笑顔を見せるエルモン。

一応確認しておこう。彼は病院が好きなのだろうか。わたしは断固として嫌いだ。

まあそれはどうでもいいとして彼に手を引かれ20分が経過した。




「ねぇ、どういうことですか?」

「え?なにが」

「だーかーら!これはどういう状況かって聞いてるの!」


理解できません。

理解したくありません。死んでもできません。


「あー、ちょっと我慢してくれるー?」


って、スルーですかい!

わたしとエルモンの目の前に広がったものはまさしくサスペンスドラマでお馴染み崖の先の先。

ミシっと音をたてて小石たちが真っ逆さまに落下している。


「ま、待って!待って!今、おしたよね?エルモン!落ちるよ?確実に死ぬよ!?」

「即死だろうねー」

「なに君そんな軽く認めちゃってんのよ!や、やだ。こ、殺されるジャストナウ」


そう叫ぶか弱い女子高校生の背を、奴は思いっきり押した。

てか、突き落とされた。


「うおぉォォオぉ!ナァぁあぁあああ!」



立松ちなおそらく女子高校生であろうわたしは今日、この日、見知らぬ男に殺されました。

お父さん、お母さん。名前も顔も覚えてないけど、今までありがとうございました。

何も覚えてなくてゴメンナサイ。

もしかしたら若ボケかもしれません。ゴメンナサイ。

どうかわたしの分まで生きて、わたしを裏切ったエルモンを観衆の前で裸逆さずりにしてください。

どうかどうか、お願いします。

それから、それから――――…。







―――――――――…



「あ、起きた?ちな」

「……っへ?」


ガバっと起き上がると、そこにはわたしの顔を心配そうに見つめるエルモンの姿があった。


「エ……っエルモン!なにすんのさアンタ!」

「エルモンってなんだよ。エルだしエル」

「あ、あぁエル。……、にしてもわたし……助かった、の?」

「え?即死だったケド?」


わたしの頭が180°回転することが可能ならば間違いなくエルモン改めエルの胸ぐらを掴んでいたと思う。

っていうかなんで!?エルによるとわたしは即死。

そしてわたしは生きてる。列記としてエルだってここにいる。


「待った待った待った!ていうかエル!アンタわたしに何の恨みがあんのよ!」

「恨みというか、ここに君を連れてくる為かな」

「はあ?意味わかんない。とにかく一から説明しろォ!」





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