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とある日の出来事

作者: 樹 亜斗

嘗て、これまでの人生でこんなにも真剣に何かに向き合ったことがあっただろうか。いや、ない。……と言いきりたいが残念ながらある。


だが、今は真剣に“やつ”と向き合っている。


何で朝っぱらから向き合っているのか訳が分からないが、これは大事なことだ。


なぜなら放置をしておくと大変な事になってしまうからだ。


そう。私は今、室外機に何故か巣を作っている蜂とにらみ合いをしている。


両手に軍手をした上にビニール袋を持ちながら……。



※※※


その日はいつも通りと少しだけ違った朝だった。


ただ前日の仕事がハードでまだ疲れが残っている上に、少しだけ腕が筋肉痛になっているだけで、いつも通りの朝だったのだ。私がそれを見つけるまでは……。



洗濯物をして、その間に朝御飯を食べて、その後はボーとしていた。


洗濯機が洗濯が終わりましたよ、という合図が鳴り、いよいよ洗濯物を干そうとしたその時だった。


ふと、室外機の方を見ると蜂がいる。


蜂がいるのはよくあることで、こちらが何もしなければ大丈夫だ。だけども少し変だなと思い、よく見ると蜂が何かを作っている。


…………巣じゃないか!


蜂の巣だよ!まだ作り途中だから二、三センチだけど、危険だよ!!



私は今のうちに、どうにかしないと思い、洗濯物を後にする。


私は家の中に入り、ビニール袋を二重にし、掴みやすいように袋を裏側にして、蜂と戦うことに。


……直ぐに蜂との戦いは終る。


私の負けで終わったのだ。



私が次に蜂と対抗できそうな何かはないかと考えて思い付く。


軍手を使えば良いのだ、と。


また部屋に戻り、軍手を探して利き手の右手に装着し、またビニール袋を二重にして蜂と対峙する。


だか、またもや私の負けだった。秒殺である。


何がいけないのだろうと考えながら、後回しにしていた洗濯物を干す。


洗濯物を干し終わっても、まだ良い案が浮かんで来ないので、私が便りにしている人物。そう、姉に相談をすれば良いんだと思い、直ぐ様メールを打つ。


……暫くしてもメールの返信が来ないので、まだ寝ているのだろうと思い、諦める。


母親は仕事中だろうからメールしなかった。



私は気分転換に掃除をしようと思い、掃除機を掛ける。


自分の部屋、リビング等の掃除機を掛ける。そして母親の部屋。


母親の部屋だけは唯一畳部屋である。その部屋で掃除機を掛けていたら布団の下から虫が出てきた。


私はびっくりして直ぐにティッシュを取り、バンッ!と虫を潰す。


続けて二匹、三匹目と虫が大量発生してきたので、腕を素早く動かし、ババンッ!!と虫を始末し、ふぅ、と一息をついて思った。


三匹の虫で経験値を積んだのだから蜂と対抗できるのでは?と。


私はそう考えると直ぐ、軍手とビニール袋を持ち、蜂とその巣がある場所へと行き、今度は両手に軍手をつけ、その上にビニール袋を裏側にしてつけた。


そう、両手でガバッと蜂と一緒に巣を捕れば、何も怖くなんてない!と思いながら蜂と向き合う。



蜂との距離は縮まり、腕を伸ばせば捕まえられる距離に私はいた。


蜂は私の方を見ながら微動だにしない。


私はゆっくりと腕を伸ばす。


蜂と私の両手との距離は十センチくらいになった時に、私は蜂との距離は縮まらなくなった。


腕を伸ばせなくなったのだ。蜂の気迫に呑まれて……。



蜂は必死だ。


巣の中にはもしかしたら卵があり、さらに自分の命も危険なのだ。当然、必死にもなる。


蜂は色々なものを守っている。


そして私はただ安全な暮らしのために早く蜂の巣を取り除きたいと思っている。


こちらは自分の命や未来の命を掛けてはいないのだから、必死さが違うのだ。


だから私は蜂の気迫に呑まれているのだと気付く。



実際の私と蜂のにらみ合いは十数秒だろうけど、私の感覚では数分か数十分ぐらいに感じた。




私は覚悟を決める。


このまま蜂を野放しにしていたら、被害者が出るかも知れないし、蜂も早めの方が被害が少ないと考える。


これはエゴだと分かっているが仕方のない事だ。だからガバッと蜂と一緒に巣を取るんだ!と自分に言い聞かせながら、腕を少し伸ばした。

そしたら蜂がほんの少しだけピクリと動き、私の腕はまた固まった。


先程からじぃーっと動かなかった蜂が少しだけ動いただけで、ついさっき覚悟を決めた筈なのに、いとも簡単にその決意は崩れ去った。



私vs蜂の第三開戦は見事、蜂の勝ちだった。


三回戦共に蜂の勝利で、この戦いは終わった。



※※※


あの蜂との戦いの後、パソコンで少しだけ蜂の駆除の事を調べたら、素肌を晒してはいけないと書いてあったのを見て、そう言えば私、半袖のTシャツでやっていたと気付く。


そんな当たり前の事に気付かなかったのは多分、前日の仕事の疲れが抜けていなかったからだろう。




尚、蜂の巣は外が暗くなった夜に、姉が薬局で買ってきた蜂の殺虫剤を蜂の巣に掛け、次の日の朝に蜂がいない事を確認してから蜂の巣を取った。


できれば、もう蜂が巣を作るのはやめて欲しいと願う。




蛇足ですが、蜂はアシナガバチです。



読んでくれてありがとうございました。

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