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第四話「危険な相手」

仙希(せんき)は第一ビルを出た。

太陽はだいぶ傾いている。もう一時間ほどで沈むだろう。

仙希の姿を見るなりひとりの少女が走ってきた。

「仙希さん!何話してたんすか!」

(そら)だ。仙希はお返しすると言っていたことを思い出す。

――そういや、約束してたな…忘れるとか自分らしくねえ。

仙希は空に笑いかける。

「悪いな、待たせちゃった。お礼の件だけど…」

「い、いやっ!無理しなくていっす!あたし、仙希さんと話せただけでも嬉しいし…」

空は顔を赤くして言う。

「いや、遠慮しなくていいよ。でも俺、今は時間無いからこれ…」

仙希は空に一枚の紙を手渡した。

「なんすか?…これ。」

「俺の名刺。俺も一応、社会人だし。時間あいてたら電話して。その時にお礼する。」

「え…え゛ええ!いいんですか?あたし迷惑なときに電話するかも…」

「いいよ、俺、基本暇人だし。今はちょっと珍しく忙しいだけ。それじゃあ、また今度。」

そういい、仙希は空に手を振った。空も振り返す。

――よし…作戦は上々だな…

仙希は携帯を取出し、ある番号に電話した。

相手はサンコール以内で出る。そしていきなり怒鳴り散らしてきた。

『おい、仙希!今まで何やってたんだこの野郎っ!またデートかモテ男!』

「……耳壊れる。あんたは大音量スピーカーか。てか、デートとかしたことねえし。」

『嘘つきやがって!手前はいつもだ!仕事中にいきなりいなくなりやがってよぉ!』

「出掛ける前にちゃんと伝言頼んだはずだけどな…鳩に…」

『手前どんだけふざけてんだ!鳩の言葉なんて俺ぁ聞けねえ!』

「ご愁傷様。…そろそろ要件話していいか?」

『帰ってきてから話せ!大体、副隊長とあろうものが部隊ほったらかして何やってんだ馬鹿野郎!』

仙希はそこで電話を切った。相手は自分と同じ部隊の隊員だった。

「玄太郎の奴……話聞けよな…」

携帯をしまい後ろを振り返る。

丁度、夏秋が第一ビルから出てきたところだった。

仙希に気付いた夏秋は何やら怒鳴っている。

「それじゃあ、またいつか…」

仙希は逃げるようにその場を立ち去った。




玄太郎は、本を読んでいた。時刻は午後九時。月が煌々と輝いている。

玄太郎は7.22特殊部隊に属している三十八歳の男だ。

真っ黒で短く切りそろえられた髪、キッとしたつり目、そして眼鏡をかけている。何とも真面目そうな顔だちをしていた。

玄太郎がいるのは7.22特殊部隊本部である。

まあ、本部と言ってもとあるアパートの一室。そんなに立派なものではない。

そんな狭い部屋で、いつもなら十数人の人々が仕事をしている。

しかし、今は夜。皆、勤務を終え帰って行った。

普通なら玄太郎も帰宅する時刻なのだが今日は違った。

なんせ、隊員の一人がなかなか帰ってこないのだ。

7.22特殊部隊隊長の玄太郎は、いつも隊員の帰りを確認してから帰る。

しかしなかなか帰ってこない奴が約一名。

先に帰ってもだれも責めないのだが、なんせ仕事熱心な玄太郎である。

そんな行為は自分の良心が許さなかった。

しかし…本当に遅い。

いい加減イライラしてきた時だった。

ドアの開く音、同時に気の抜けた声が聞こえてきた。

「ただいま帰りました~」

玄太郎は思い切り立ち上がり、迷惑な隊員の頭を殴りつける。

しかし、隊員はそれをするりと交わした。

「手前っ!迷惑掛けやがって!俺の拳に打たれとけ!」

「いやいや、玄太郎よ。自分から殴られなきゃいけないほど俺は病んでねえ。」

「病んでる病んでねえの問題じゃねえ!とりあえず謝れよ!俺に迷惑かけただろうがっ!」

「いや、マジですいませんでした隊長。…腹減った。何かねえ?」

全く反省した様子はない。玄太郎はため息をついた。

なかなか帰ってこない隊員とは7.22特殊部隊の副隊長、仙希だった。

前々から迷惑をかける隊員だった。毎回イライラさせられる。

仮にも副隊長という肩書を背負っているにもかかわらず、いつも仕事から抜け出しどこかに消える。

全く迷惑な奴だ。

「腹減ったのか?あいにくお前に食わせれる物はねえよ!」

「あ、おにぎりだ。もーらいっ」

「なにっ!ちょっと待て!それ俺の!」

おにぎりの取り合いが始まる。無様だが日常茶飯事だ。

その時だった。携帯の着信音が二人だけの部屋に鳴り響く。

「おっ、メールだ。…玄太郎、そのおにぎり盗るなよ。」

「いや、もともと俺のだし…」

仙希は玄太郎の言い分を無視して、携帯を開く。

そしてにやりと笑った。

「おい、なんか良いこと書いてあったか?」

「ああ、めちゃくちゃ良いこと。」

仙希はそのまま携帯をいじりはじめる。返信をしているのだろう。

その隙に玄太郎はおにぎりにかぶりついた。

中身は梅干し。そしていつもより塩辛い。

玄太郎は携帯をいじる仙希の姿を見つめる。

仙希は二十歳。7.22特殊部隊では最年少だ。

不真面目で、いつも仕事をさぼる。

しかし、そんな奴が副隊長の座を任せられているのにはもちろん理由はある。

成績優秀、約束だけは守る律儀な性格、その上たくさんの情報をを持つデーターバンク。

なんだかんだ言って信用はされてるのだ。

ぼうっとしていた玄太郎を仙希は睨む。

「何だ?ボーっとして。とうとうボケてきたか?」

「何だとうとうって。俺はまだまだボケない。てか手前前から言ってるけど俺の方が年上だからな。上司だからな。敬語使えよ、敬語!」

「人間は中身で決まる。」

「…何が言いてえんだ?」

仙希はそこで口を閉ざす。そしてふふっと笑った。

「さあね。それより玄太郎、いい情報だ。俺らに心強い恋人が付くぜ。」

「ほう…誰だ、それは?」

仙希はそこでにやりと笑う。

何かよからぬことを考えている…玄太郎はとっさにそう思った。

「夏秋。」

「…夏秋?誰だそれ。」

「十三年前の生き残り…」

玄太郎は息をのむ。

「それは、確かか?」

「ああ、確かだ。火傷の跡がくっきりあった。あ、だけどな玄太郎。」

仙希は玄太郎の首筋に右手を当てた。ひんやりとした感覚が玄太郎に伝わる。

「心強いとはいえ、まだ敵だ。あんたは簡単に人を信用する。気を付けてかからねえとこの首飛ぶぜ?」

そう言い、仙希は面白そうに笑った。なんとなく子供っぽい笑い方だ。

「まあ、気をつけろよって話。じゃあ俺帰る。おやすみ~」

仙希は玄太郎から手を離すとそのまま玄関に向かった。

そんな仙気の後ろ姿に玄太郎は呟く。

「たしかに俺は人を信用しやすい…だけどな、手前のことは一時も信用したことはねえよ。」

仙希は聞こえたのか聞こえなかったのか、手を振りながら家から去って行った。

今回はなんとなく仙希さんメインでしたね。

7.22特殊部隊のことも何となく見えてきました。

それでもまだ謎だらけ(笑)

玄太郎はなぜ仙希を信用しないのか、十三年前の事件とは何か、

仙希にきたメールはだれからか…まあ、いろいろ謎はあります。

それでは次回もぜひお越しください。それでは!

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