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第4話 事故物件らしいですが、何か?

「ちっ、失敗しやがったか!」


テロ組織『断罪の瞳』のリーダーである神崎は本部アジトで悪態を吐いた。市長が気に入らない人間を放り込むための収容施設を狙った自動運転車を使った爆弾テロ。


騒ぎに乗じて囚われた人たちを解放するための作戦だったが、結果は裏路地を走行中に爆発。収容施設の警戒を崩すことができず、やむなく中止となった。


「いったい何が起きたってんだ?!」

「ほ、報告によれば、通行人に衝突して爆発したそうです」

「バカ野郎! 車が通行人にぶつかったくらいで止まるわけねえだろ!」


作戦失敗の苛立ちを、血迷ったことを言った部下にぶつけるも、すぐに短慮だったことに気付いて大きくため息を吐いた。


「ハァ……計画は完璧だったはずだ」


人や車の通りがほとんどない見通しのいい裏路地を爆走しながら収容施設に突っ込んで爆破。難しいことは何一つないはずなのに、ものの見事に失敗した。


「だから女に止められたんっすよ」

「そんな化け物いるわけねえだろ……そういや、アイツらはどこにいる?」

「例の部屋で反省会らしいですぜ。ま、失敗したことを詰められるから、リーダーが落ち着くまでほとぼりを冷ましているんじゃないですかね」


そう言って部下はケタケタと腹を抱えて笑った。その態度に神崎は苛立ちを覚えるが、「それだから戻ってこないんですよ」と言われるのが目に浮かんで、グッと堪える。


「そもそも、あの部屋は俺たちのモノじゃねえだろ?」

「大丈夫じゃないですかね? あそこは事故物件だ。あんなバカ高い事故物件が売れるはずねえっすよ」


昔は安く貸して事故物件であることを隠すことができたが、今は情報が筒抜けで隠すことができなくなっている。それでも庶民に手の届くようなものなら価格を下げれば済むが、高級マンションでは難しい。


「……そうだな。だが、注意するように言っとけ」

「はいはい、わかりました、っと」

「それから……早く戻って来いと」

「了解っ!」


部下は敬礼をしてアジトから出ていった。



「愚民さまさまだな」


相沢は都市庁舎最上階の市長室で窓の外を眺めながらワイングラスを揺らす。眼下にはアリのようにせこせこと市民が動き回っていた。死ぬまで働くことを義務付けられた哀れな人間を嘲笑いながら、席に座ってモニタを眺める。


「完全栄養食のキックバックだけで1200万円か……ボロい商売だ」


相沢は完全栄養食を作っている会社に便宜を図り、キックバックとして利益の4割を受け取っていた。ウイルスを仕込んだマザーコンピュータに完全栄養食以外の食品の消費税率を2000%に設定する。それだけで彼の懐には毎月多額のお金が振り込まれた。


「そいつらのおかげで、俺は美味いものを好きなだけ食べられるわけだ。ガハハハ!」


大声で笑い、目の前に並んだステーキを頬張る。彼の品性を表しているようにクチャクチャと咀嚼する音が口から洩れていた。食事をしながら上がってきた報告を読み進め、一つの報告書が目に留まった。


「収容所に向かって暴走していた車が爆発しただと? またテロリストか!」


相沢にとってテロリストは目の上のたん瘤失敗しやがったか!」


テロ組織『断罪の瞳』のリーダーである神崎は本部アジトで悪態を吐いた。市長が気に入らない人間を放り込むための収容施設を狙った自動運転車を使った爆弾テロ。


騒ぎに乗じて囚われた人たちを解放するための作戦だったが、結果は裏路地を走行中に爆発。収容施設の警戒を崩すことができず、やむなく中止となった。


「いったい何が起きたってんだ?!」

「ほ、報告によれば、通行人に衝突して爆発したそうです」

「バカ野郎! 車が通行人にぶつかったくらいで止まるわけねえだろ!」


作戦失敗の苛立ちを、血迷ったことを言った部下にぶつけるも、すぐに短慮だったことに気付いて大きくため息を吐いた。


「ハァ……計画は完璧だったはずだ」


人や車の通りがほとんどない見通しのいい裏路地を爆走しながら収容施設に突っ込んで爆破。難しいことは何一つないはずなのに、ものの見事に失敗した。


「だから女に止められたんっすよ」

「そんなバカな話があるわけねえ……そういや、アイツらはどこにいる?」

「例の部屋で反省会らしいですぜ。ま、失敗したことを詰められるから、リーダーが落ち着くまでほとぼりを冷ましているんじゃないですかね」


そう言って部下はケタケタと腹を抱えて笑った。その態度に神崎は苛立ちを覚えるが、「それだから戻ってこないんですよ」と言われるのが目に浮かんで、グッと堪える。


「そもそも、あの部屋は俺たちのモノじゃねえだろ?」

「大丈夫じゃないですかね? あそこは事故物件だ。あんなバカ高い事故物件が売れるはずねえっすよ」


昔は安く貸して事故物件であることを隠すことができたが、今は情報が筒抜けで隠すことができなくなっている。それでも庶民に手の届くようなものなら価格を下げれば済むが、高級マンションでは難しい。


「……そうだな。だが、注意するように言っとけ」

「はいはい、わかりました、っと」

「それから……早く戻って来いと」

「了解っ!」


部下は敬礼をしてアジトから出ていった。



「愚民さまさまだな」


相沢は都市庁舎最上階の市長室で窓の外を眺めながらワイングラスを揺らす。眼下にはアリのようにせこせこと市民が動き回っていた。死ぬまで働くことを義務付けられた哀れな人間を嘲笑いながら、席に座ってモニタを眺める。


「完全栄養食のキックバックだけで1200万円か……ボロい商売だ」


相沢は完全栄養食を作っている会社に便宜を図り、キックバックとして利益の4割を受け取っていた。ウイルスを仕込んだマザーコンピュータに完全栄養食以外の食品の消費税率を2000%に設定する。それだけで彼の懐には毎月多額のお金が振り込まれた。


「そいつらのおかげで、俺は美味いものを好きなだけ食べられるわけだ。ガハハハ!」


大声で笑い、目の前に並んだステーキを頬張る。彼の品性を表しているようにクチャクチャと咀嚼する音が口から洩れていた。食事をしながら上がってきた報告を読み進め、一つの報告書が目に留まった。


「収容所に向かって暴走していた車が爆発しただと? またテロリストか!」


相沢にとって最大の邪魔者であるテロリストの動きに怒りを露わにする。収容所は最高レベルの警備体制ではあるが絶対ではない。


「鬱陶しいテロリストどもめ……」


吐き捨てるように言って、開いた口にステーキを放り込んだ。



「ところで……住む場所もないんだけど、どうすればいいですかね?」

「何で私に聞くんですか?!」

「えっ、何でも答えてくれそうだから……ダメかな?」


端末を受け取ったエリスが、今度は家が欲しいと言い出した。露骨にイヤそうな表情を浮かべて逆ギレしながら聞き返す。店員としては都合のいい男に見られたくなかった。しかしエリスが無邪気に訴えかけてきたせいで、毒気を抜かれて言い返せなくなってしまった。


「しかたないですね……今回限りですよ!」

「ありがとう、助かります!」

「えーっと、この物件なんか安くていいですよ。事故物件ですが……」

「事故物件?」


チャンスだと思った店員は、ダメ元で一番厄介な事故物件の高級マンションを提案してみた。エリスには事故物件の意味が分からなかったらしく、首を傾げながら聞き返す。


「事故物件ってのは、部屋で死んだ人がいる物件のことですよ!」


聞かれたら正直に答えなければいけないため、店員は包み隠さず説明した。しかし、エリスの答えは想像の斜め上をいくものだった。


「何か問題でもあるんですか? もしかして、死体が放置されてるとか……」

「そんなことあるわけないでしょう。キレイに清掃してますし、見ても分かりませんよ!」


一瞬だけ顔をしかめたエリスだが、店員の言葉を聞いてきょとんとした表情に変わる。スラム育ちのエリスにとって、人が死んだことあるから住めないと言ったら、どこにも住めなくなってしまう。


「なんだ、そんなこと?」

「そんなことって……」

「それでいくらなの?」

「もともと10億円なのですが、2億円でお売りいたします」


店員は少し欲張って嘘を吐いた。実際は2億円だったものが2000万円にしかならない物件だったが、エリスなら買ってくれるかもしれないという打算が働いてしまう。


「うーん、確かに安いな……じゃあ、そこにします!」

「えっ、いいんですか?」


ほぼ即決で購入を決めてしまったことに、少しだけ罪悪感が湧いて聞き返してしまう。しかし、エリスは少しも疑う様子がなかった。


「売ってくれるんでしょ?」

「あ、はい。それはもちろんです!」


罪滅ぼしとばかりに手続きは店員が全て行い、部屋にある説明も懇切丁寧に行った。そのお陰でエリスも満足した表情で鍵を受け取った。


「あの、よろしければ。建物まで車で送りましょうか?」

「えっ、いいの? なんか悪いねぇ」


エリスは店員の車で送ってもらい、購入した501号室へと向かった。


「この部屋かな?」


 エリスが鍵を持って触れると『ピー、カチャリ』という音と共に、ロックが解除された。


 中に入ると鉄のような匂いが鼻につく。


「何だろう、まるで血の匂いのような……?」


 薄暗い部屋の中央に、倒れている人の姿が見えた。慌てて駆け寄って手を触れると、ぬるりとした感触が手のひらに付く。


「血……?!」


 慌てて抱き起すと、差し込んだ光が顔を照らす。


「久我さん?! 死んでる……?」


 先ほど別れたはずの久我が、血まみれになって倒れていた。


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