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第8話

 

 キンコン、カンコン。キンコン、カンコン。

 教壇の横に設けられたスピーカーから終業を知らせるチャイムが流れる。

 今までは死んだような顔で山科の授業を受けていた生徒たちは、その音でようやく生き返ったかのように突然慌ただしく教科書とノートをカバンにしまい込む。黒板に文字を書いていた山科が教室のざわざわした雑音に後ろを振り返ると、もはや生徒は誰も山科のことも黒板のことも見ていなかった。

「今日は、ここまでだ」

 山科は諦めて、そこで授業を打ち切る。

「それでは、これからホームルームを始める」

 担任である山科の授業が六限目にあるときは、授業からそのままホームルームに移る。それ以外の日は、六限目の授業が終わっても山科が教室にやってくるまで待っていなければならなかったが、今日はその待ち時間もない。それは少しでも早くこの無意味な「学校」という束縛から解放されることを意味しており、そのことだけが生徒たちにとっての救いだった。

 ホームルームと言っても、特に何をするというわけでもない。

 聞いても聞いていなくても構わないような話を山科がだらだらと話し、我慢してその話を聞いていると、そもそもホームルームなんてなかったかのように終わっていく。その日も、通学についての二、三の注意事項を話し終えると、山科は、「ホームルームはこれで終わりにする」とホームルームを締めた。

 その言葉を合図にして生徒たちは立ち上がり、思い思いの場所に向かって教室を出ていく。

 凛も屋上に向かおうと思い、席を立つ。

 その際に窓際の席が視界に入った。そこでは翔がまだ頬杖をつきながら、つまらなそうな顔で窓の外を見ていた。凛は特に翔を気にすることもなく、他の生徒たちに紛れて教室の外に出ていった。


 凛の通う学校の校舎はL字型の形状をした四階建ての建物となっている。

 一階は図書室や美術室、保健室などの特別室が設けられており、二階は三年生の教室、三階は二年生の教室、四階は一年生の教室になっている。普通に考えたら、順番通りに二階は一年生、三階は二年生、四階は三年生になっていてもおかしくはないが、凛の高校は逆になっている。その理由を入学当初、誰かから聞いた記憶もあるが覚えていない。おそらく、つまらない理由で順番が逆になっているのだろう。例えば、扱いにくい三年生を低層階にして三年生におもねっている、というような。

 凛は二年一組の教室を出ると、階段に向かった。

 階段はL字のちょうど折れ曲がっている部分に設けられていた。


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