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――――――…………
「ああ!なにやってるんですか!エルハルト様!私は味方ですよ!」
「す、すまん……でも操作が難しくて……ああ、また!」
「え!?わああああ!!」
――――……
「ナイス!メアちゃん!やっぱり器用だねメアちゃんは!」
「えへへ……そうですか?」
「うーん、最高!!強い!!可愛い!!メアちゃんしか勝たん!!」
――……
「――知ってた……」
そして戦いは終わりを告げた。
「……エルハルト様……これは、酷い……酷すぎる。思ってたんより、酷い……下手くそとか言う……レベルじゃない……」
「す、すまん……」
「やったね!メアちゃん!私たちの勝ちだよ!」
「やりましたね!アリアちゃん!やっぱりすごいです!アリアちゃん!本当にゲームが得意なんですね!」
「ううん、違うよメアちゃん。全部メアちゃんが頑張ってくれたおかげだよ!」
始まる前から分かりきっていたことだった。このゲームはただのくじ運なのだと……
「エルハルト様……一体どういう事ですか……もしかして、相手チームのもぐりなんですか?普通スター送る相手間違わないでしょ……わざわざ貴重なアイテム使って味方攻撃しないでしょ……運ゲーのミニゲームで全部負けるとかありえないでしょ……」
「いや……本当にすまん……まだAボタンとBボタンの区別が付いてなくて……でも本当に真面目にはやってたんだ……信じてくれ……」
「いや、それは見てたらわかりますまけど――――……うっ……まあ……私も悪い所はありました……途中、きつい言い方になってしまった所もありましたし……」
あまりにみすぼらしく項垂れる主の姿に、メイリは思わず身を引いて、同情の声を投げかけざるを得なかった。
「本当にすまん……メイリ……ゲームが下手で……ごめん……」
「いや、あの……人には向き不向きがありますし――――はあ……どうして、こうなっちゃたんだろう……」
強いて言うなら、日ごろの行い……?
「あ、あの……ごめんなさい。メイリさん……私も最初言い過ぎました……罰ゲームの事はもういいですから、最後にみんなでワイワイできるミニゲームでもして終わりましょ?」
アリアは思った以上に荒れ果ててしまった戦地に、今更になって罪悪感を抱き、世論を考慮して、可及的速やかな停戦の申し入れを行った。
「いえ……私も悪かったんです……ごめんなさい。弱いくせに生意気な口叩いてごめんなさい……」
しかし、敵軍の将に掛けられる情けとはなんと惨めなものか。アリアの妥当な戦略は、プラスチック製の安いメイリのプライドを粉々に打ち砕いただけの結果に終わった。
「お、お姉さま……!?」
「ええ!?これ、運ゲーですからね?実力とかあんま関係ないですからね?」
「いえ……これが実力です……だから……早く言ってください、罰を……」
「そ、そんな事言われましても……こんな空気の中じゃ……」
「な、なあ、メイリ……?アリアさんもこういっていることだしさ……もう罰ゲームのことは――」
しかし、さすが負け慣れているエルハルト……どれほど落ち込んでるように見えても、死地での嗅覚はさすがである――ではあるが……
「何言ってるんですか!?エルハルト様!?あなた、それでも戦士ですか!?ヴァルハラに行けなくてもいいんですか!?」
「いや、お前こそ何言ってるんだよ。いい加減ゲームで聞きかじった単語を適当に使うのはやめろ。ていうかそもそも僕は魔導士だし――」
「アリアさん……どうか、早く……早く罰を……この憐れな弱者に導きを……」
「ねえ、聞いて?主人の言葉くらいには耳を傾けて?」
「――――……そこまで言うのならいいでしょう……メイリさん、覚悟して聞いてくださいね――」
「ああ、これだめだ……未来を変えられないタイプのループ物の奴だ」
最終的に国を滅ぼすのは大抵、外的要因よりむしろ土台からの根腐りである。どれほど巨大で形の無い国体と言えど、世を支配する自然の法則には逆らえないのかもしれない。
「おいたわしや……エルハルト様……」
項垂れる領主を憂うメアの呟きと共に、アリアの口から断罪が下される。罪には罰を……罪が合っても無くてもショタにはわからせを……
「では、メイリさん、エルハルトさん……あなたたちには――」
――――――…………
――――……
――……




