表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
玲瓏館当主エルハルト・フォン・シュヴァルツベルクの華麗なるわからせ美学  作者: 柴石 貴初


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/210

3-17

 親子の行く末を固唾を飲んで見守っていたメイリは、そのエルハルトのドヤ顔をみて、大きく息をついた。 


 (はあ……一時はどうなるかと思ったけど――)


 おもむろにメイリは歩を進めてアリアの席の横に立つと、じいやが淹れたハーブティーをまだ中身残っているのにも関わらず押しのけて、自らが新たに淹れた紅茶を彼女の目の前に置いた。


 「アリアさん。決めるのはあなたです。でも私たちは再びあなたがこの手を取ってくれることをいつまでも待ってますからね――」


 そして、メイリが台詞を言い終わらないうちに応接間の扉が、ばっという音を立てて開いた。


 「はあ、はあ……!そうですよ……!アリアちゃん!そしてまたお話をしましょう?私、アリアちゃんの事まだ何も知らないんですから……!」


 ぎりぎりクライマックスに間に合ったメアが息を切らしながら姉の隣に並んだ。


 「メイリさん……メアちゃん……」


 姉妹揃ってタイミングは最悪だが、割り込み性能は高いのかもしれない。

 そんな姉妹の姿を微笑みながら見届けたエルハルトは言葉を続ける。


 「そうだ、アリアさん。君には選択肢がある。手を差し伸べてくれる人達がこんなにも。そしてそれ以外のまだ見ぬ手も……だから君が決めるんだ。そして、選んだなら、それを阻むものたちに決して負けちゃいけない」


 「――――はい……」


 「うん、それでいい。それに君の今回の旅路は間違いも多かったかもしれない、でも全てがすべて、間違いだったわけじゃない。そうだろ?君が踏み出した最初の一歩のその勇気は間違いなく本物で、君自身の覚悟の証だ。きっと彼女たちはその蛮勇に感謝していることだろう」


 メアとメイリはエルハルトの言葉に大きく頷いて、アリアに笑みを送った。


 「ふふ、そうですよアリアさん、これでも仕事のこととかいろいろ、あなたには感謝しているんですから」


 「はい!ありがとうございます!アリアちゃん!玲瓏館ここを選んでくれて!私もアリアちゃんと過ごした日々、とっても楽しかったですよ!」


 アリアはその笑みに応えて、彼女もまた久々の笑みを浮かべた。


 「はい……!こちらこそ……ありがとうございました……!こんな私を受け入れてくれて……私も……とっても楽しかった……!」


 「ふっ……ではまた会おう。そして道を決めたのならこの手を取るがいい。たとえ君がどのような選択をしたとしても、君が我が従者であることに変わりはないんだからな――」


 そして最後にアリアのその笑みを受け取ったエルハルトは、芝居がかった仕草と口調でそう、場を締めくくった。


 「ふふ……よおーし!!これで解決だね!良かった良かった――――あ、もちろん私のことも頼っていいんだからね。大抵のことは私がぱぱっと解決しちゃうんだから」


 エルハルトのカーテンコールを見届けたミーシャは、こちらも満面の笑みで解決を祝って、自らもまたアリアに勇者としての祝福を送った。


 「あ……はい、ミーシャさんもいろいろありがとうございました。もしまた何かあったら――」


 「だが気をつけろ、そいつは諸刃の剣だ。物凄く切れ味の良いな」


 「エル君……?」


 「……こほん!――――ではそろそろお開きとしよう。まだ夕餉には時間がある。それまでゆっくりと親子の時間を過ごすといい」


 「え゛っ……」


 アリアはエルハルトのその場しのぎの提案に思わず、心の底から嫌そうな声が喉元から漏れ出てしまった。


 「えー?いやなのー?アリアちゃん」


 「別に嫌じゃ……ないけど……」


 「アリア、もう酒は飲めるだろ?どうだ、今夜は一緒に――」


 「お父さん、それ、息子にやるやつだから、ていうかお兄ちゃんにもそれぐらいやってあげてよ」


 「まあ、あいつはいいだろ……」


 「アルド君、そういうところよ。めっ、いい加減学びなさい!」


 「お母さんもね……」


 「えー?どうしてー?――あっ、もしかして、アリアちゃんも、めっ、てして欲しかった?」


 「うーん、そういうところ」


 しかし、アリアも実は満更でもなかったようだ。その控えめな笑顔も心の底からのものだったように見えた。



 ――――……



 「アリアちゃん、戻ってきますかね……エルハルト様」


 「さあ、どうだろうな……」


 「メア……良かったのよ、これで……だって――」


 「ふん、まだまだだな、メイリも」


 「――むっ……偉そうに……」


 「お前にだって選択肢はあるんだ。確かに僕たちは玲瓏館ここから離れられない。だけど、お前が望むのなら、その絆を保つ方法なんていくらでも見つかるはずだ」


 「――――……」


 「あ、そうだ!お姉さま!今日の晩御飯は二人で作りませんか!?とんでもなく美味しい料理を作って、アリアちゃんを私たちの料理なしでは生きてけない身体にするんです!」


 メアはこの三人の中では最もダンジョンボスに向いてる性格をしているのかもしれない。


 「メア、頼むから、一時停止だぞ。右見て、左見て、そしたらもう一度右見てだ」


 「?……はい!」


 「――――……メイリ頼んだぞ。玲瓏館の未来はお前に懸かってるんだ……いろんな意味で」


 「もう……仕方がないですね……これも玲瓏館の未来のためなんです。アリアさん、覚悟しておいてくださいね」


 「あ、あれ……?これ大丈夫かなあ……」


 ……アルスティア一家の滞在期間中、どんな事件が起こったのかは読者の皆さまの想像にお任せしたい。

 

 

 ――――――――


 ――――


 ――…………


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ