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玲瓏館当主エルハルト・フォン・シュヴァルツベルクの華麗なるわからせ美学  作者: 柴石 貴初


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2-13

 「あ゛あ゛あーーーーー疲れた……」


 日中の間断なく続く雑務を、決死の覚悟で全てこなしたメイリが、念願の自由な時間フリーダムタイムを得られたのは日が沈み、こうしてベッドに身を投げ出しても許されるような時間になってからだった。


 「……明日からもこれが続くの……?本当に……?」


 とはいえ、まだ寝るには早い時間帯。メイリは気だるい、纏わりつくような疲労感に抗いながらも、翌日以降も自らを襲うだろう困難について思いを巡らせた。


 「教えてくれ……メア……私はあと何個、蔵書のイミテーションを作ればいい……あと何日、気まずい夕食の時間を過ごせばいい……エルハルト様は私には何も言ってはくれない……」


 普通に聞けば教えてくれそうではあったが、変なところで引っ込み思案なメイリは、創造主の忘れ形見である、可愛らしいメアちゃん人形とエル様人形に語りかける以外、この苦痛を和らげる方法を知らなかった。もちろん二人の姿を模した、二頭身ほどにデフォルメされた二つのぬいぐるみは、何も答えてはくれない。


 「はあ……もうまじむり、クラレやろ……」


 掲げたスマホの画面を見ながら、一日中連れ添い、今宵も招かれて、飯時までも共にしたエルフの少女を思い浮かべる。


 「本当に手強いわ、あの娘……」


 仕事ぶりは真面目で優秀。何事にも器用で、体力を使う仕事や力仕事は不向きの傾向が出ているものの、それ以外はともすればメアに匹敵するほどの才能を、その身に秘めているかも知れなかった。


 「もうすでに今日の時点でぼろが出そうだったのに……本当にあと何日、彼女の教育係をしなくてはならないの……もう教えることなんて何も無いわよ……」


 教育係というのは生徒あっての教育係なのだ。全てを教師と同等レベルでこなす生徒はもはや生徒ではない。


 「それに……なんかあの娘、見た目と違って妙に頼りがいがあるというか……うーん……隣にいるとなんか安心感がある……ような……?おかげで気を抜くと、素が出てしまいそうに――って、はっ……!もしかして!――――」


 画面内のロードが終わって、異世界へとつながる扉が開き、メイリを架空の電子世界へと誘う。


 「――――あれが、バブみ……?」


 しかし、電子世界に身を投じたメイリを出迎える者は誰一人いなかった。オフライン状態を示す電線が途切れたようなアイコンの赤が、メイリのフレンド欄を埋め尽くしていた。


 「はあ、今日も一人……ありりあるさんも……だめ……この時間にいないなら、今日はもう無理ね……」


 今日もメイリは一人、日課のデイリーミッションをこなす。


 「そうだ……他のゲームも……デイリー……今日はまだ終わらせてないんだっけ……」


 手を伸ばせばすぐ届く距離……だけど見えないものに手を伸ばすことはできない。急激に密度を増した日常に、立ち止まって目を凝らす暇は今のメイリにはなかった。



 ――――――――


 ――――


 ――…………


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