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1-2

 ――――――…………


 「くそ!何もあはれじゃねえよ!あはれなのはこっちだよ!」


 館の中枢にある大結晶の前に転送されたエルハルトは、謎の石材からできた床の冷たさを頬に感じながらわめいた。


 「落ち着いてください、エルハルト様。その分仕事が少なくなっていいじゃないですか」


 先に転送されて、エルハルトを待ち構えていたメイリは、わめく主を見下す様にその前に立って、涼しげな顔でそうのたまった。 


 「少なくなってるのはお前だけだよ!なんだよメイリンスキップって……ただ単に僕がボコられてるだけじゃないか!」


 「それが仕事ですから」


 「いや、お前今回ほとんど仕事してないじゃん――――ていうかそもそも台詞と演出が長すぎるのがいけないんだよ。なんで20%ごとに台詞があるんだよ。こっちは魔導士だぞ?台詞で詠唱できないから、その間ほとんど何も出来ないんだよ!」


 「まあ普通は無敵フィールド張られますからね。でも創造主様(お母様)はそういうの嫌いでしたから……」


 「ぐぬぬ……」


 「あのう………」


 リスポ――エルハルトたちは創造主たちにならって大結晶がある部屋をそう呼んでいた――の扉を恐る恐るといった体で入ってきたのは、メイリと同じようにメイドの衣装を纏い、銀の髪を煌めかせた小柄な少女だった。


 「ああ、なんだメア」


 メアと呼ばれた少女は、言い合う二人におどおどとした態度を見せながらも、自らの仕事を完遂させるために言葉を紡いだ。


 「お客様がフォトオプションをご希望です」


 「そうか、わかったすぐ行く」


 思わずエルハルトは自分の口調が柔らかくなるのを感じた。


 「ありがとう、メア」


 「はい!!」


 それはメイリも同じだった。柔らかな口調でメイリはメアにお礼を言うと、二人の返事を受けたメアは笑顔でお辞儀をして、次なる仕事へ向かうために、そのままとたとたと走り去っていった。


 「はー、お前の妹は働き者だなー、誰かさんとは違って」


 「そりゃあ、そうですよ、私の妹なんですから」


 絶妙に噛み合っていない会話を繰り広げつつも、可愛らしく走り去るメアにメロメロの二人はそんな事気にも留めなかった。きっと二人の弱点はあの少女であることは間違いなさそうだった。


 「――――あ、そういえば、知ってましたかエルハルト様、うちのフォトオプ率全ダンジョン中3位らしいですよ、比較的低難易度で周回も楽なのに」


 「――――ああ、フォトオプ……?ああ、フォトオプね……フォトオプかあ……」


 緩んだ空気の中、これから味わうことになる憂鬱な気配を感じてエルハルトは途端に怪訝な顔になった。


 「てか、そんなん、どーでもいいわ!そもそも僕は元からそんなのやりたくなかったんだ。このみすぼらしい姿を見ろ、何がフォトオプじゃい、これじゃあただの公開処刑じゃ」


 「これも仕事ですから」


 「だからおめーは新品じゃねえか。くそ!!」


 エルハルトはぶーたら不満を垂れながらも、メアの仕事を無駄にしないために、立ち上がってぼろぼろの衣装のまま“リスポ”の出口に向かった。


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