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玲瓏館当主エルハルト・フォン・シュヴァルツベルクの華麗なるわからせ美学  作者: 柴石 貴初


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7-20

 「世界各地に点在する、創造主の遺産から発掘されるマナ結晶技術及び、それらを応用したマナ結晶技術もしくは魔法文明は、古代より人類史を支えてきた存在ではあるものの、現代ではより扱いやすい科学技術に取って代わられ、日常生活で接する機会も少なくなって来ている。だが、こと軍事においてはいまだ現役である場合も多い。また国政に関わる大規模な戦略及び経済拠点の存続においてもそれらの技術が大きく関わっている。これは遺跡から発掘される技術の中でも、マナ結晶技術がより高度かつ強力で、複雑すぎるあまり、研究がほとんど進んでいないからであるということと、そもそもがマナを感知できる人間がほとんどおらず、また感知方法も人それぞれであるが故に技術が体系化されづらいからで、マナ結晶技術も同じ科学の分野であるのにも関わらず、それらが独立した体系を維持しているのも――」


 「……長い」


 さすがに度が過ぎていると感じたエルハルトは、指揮者よろしく、もう少しテンポと音階を上げるように演奏者に要求した。


 「すまない。聞き流してくれて構わん――……」


 だが、そのおかげで先ほどまでの温度を少し取り戻せたような気もした。

 

 少し肩の力が抜けたようなテオスは、彼の要求通り微量に音階を上げて解説を続けた。


 「まあ、つまりは現代におけるマナ結晶技術は、いまだ流通の要である各主要都市における”大規模転移結晶”や、トーラスの”超長距離魔導レーザー”、エルフの”結界”といった大規模軍事施設のような、出来合いであり、容易に扱え、かつ強力な性能を保持するものといった非常に限定的な技術のことなんだが、それらの重要な施設においても、この物質を使えば、理論上は無力化できると考えられている……ということだ」


 「なるほどな……」


 「ああ、しかも都合の良いことに、散布量――使用する場合は新物質を霧状に散布させ、マナ結晶体に直接塗布する方法などが考えられる――を調整することによって、それらをどの程度の期間無力化するかを選択できるようになるはずだ。これはマナ結晶体の時間的可逆理論と同じメカニズムで作用する」


 「なるほど。無力化によって物資の流通や、人々の生活に大きな影響が出る、転移結晶なんかはほどほどに機能を制限できるわけだな」


 「ああ、故にとても都合の良い物質なんだ。そして最後に、ネームドの無力化。これは最も実践的で、俺たちにとってもより身近なものといえるな」


 「そ、そうだな……」


 空気は先ほどよりは和らいだが、結局は、彼らに迫る物理的な脅威は徐々に、そして確実に迫っているらしかった。


 テオスはいつもの調子で淡々と解説を進めた。


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