クリアブルーのイルカ
待ちかねていたAマゾNからの段ボールを受け取ったカナは、急いている気持ちそのままに乱暴に封を切った。
中には少々雑な感じで本が3冊と小さな箱がビニールの覆いを掛けられて入っている。
本のうち2冊は親が一緒に頼んで欲しいと言っていたもので、もう1冊は、カナ自身用。
最後に残った小箱が一番の目的だった。
箱を傷つけないように慎重に取り出す。
「よかった。」
カナは安心を口に出した。
カナが大事そうに両手で持つその小箱には、アクリル製のイルカの小物の絵が描いてある。
特別製の何かというわけではなく、むしろ、どこかの水族館に行けばお土産用に類似品が大量に並んでいそうなものだ。
「色も完璧。」
カナは中のものを取りだして確認したわけではないが、イルカの絵がクリアブルーに着色されていることに満足しているようだ。
いそいそとカナはスマホをとりだし、手慣れた手つきで操作すると、SNSのアプリに表示されたある画像を拡大した。
そこには、カナが手にしたイルカとそっくりなものの、色だけがクリアーピンクのアクリルイルカを手にした制服姿の少女が写っていた。
やっぱり間違いない。同じイルカの色違いだ。
「マツリの誕生日までに綺麗にラッピングしないと。」
カナは今度は自分用に買った、かわいいラッピングのやり方がたくさん載せられている本を段ボールから取り出し、ぱらぱらとめくって、どれにしようかと選び始めた。
選びながらカナは、イルカをマツリに渡す自分の姿をいろいろ想像してみる。
ただ、渡すときに伝える言葉は決めてあった。
「マツリ、この子は一人で寂しそうって言ってたよね。」
こう切り出して、
「この子が一緒にいたいって。」
こう言いながら手渡す。
どんなラッピングで、どんな仕草で手渡せば、カナが本当にマツリに伝えたいことが伝わるのか。
カナは何度もイルカの小箱と、ラッピングの本を見ながら、お気に入りのクリアブルーのリボンをつけた自分がカナにイルカを手渡すシーンの想像を巡らせた。