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第99話 ヴィントーンをたずねて

 朝食後、軽バンの屋根で寝そべっているホイットに声をかけた。


「つい先日、達人級に昇格したんだ」


「稽古のお誘い?」


「お願いできるかな」


「夜までやることもないしね」


 軽バンの屋根から飛び降りた。自然体で立っている。これがいつものホイットの臨戦態勢だ。羨ましいほど、体に余分な力が入っていない。まあ、それがわかるようになっただけ、俺も進歩したということか。


「それで、達人級になると、何が変わるの」


「まず、1つの技の習得に2日かかる。これまでの倍だ」


「その分、得られるものも多いってこと」


「そうなのかもしれないけど、いまのところそれほど実感がわかない」


「具体的には」


「オーラによる防御力がついたのと、水の上や、壁、天上を歩ける吸歩という歩行法を覚えた。秘相という見方を覚えた。返しという防御技も覚えた」


「それだけでも、すごいけどね」


「一番使えそうなのは秘相なんだ」


「それは何?」


「秘相は、魔術の源、魔力の源泉を見る方法なんだ」


「魔力が見えるなんて初めて聞く話」


「正確には、オーラが見える」


「オーラ?」


「つまり、魔力の種類や量だけじゃなく、生み出す経路、過程まで見える」


「すごいことは、わかるけど、私には難し過ぎる。それで、今日の稽古は」


「これまでの技に新しい返しと吸歩を組み合わせて使ってみたい」


「了解。それじゃお手並み拝見」




****



「稽古ご苦労様」


 アガットが、両手にビールを持ってやってきた。


「飲み過ぎじゃないか。朝からずっと飲んでいる」


「だって、夜までここで待機なんだろう」


「フランが言うには、ね」


「それに、これくらいじゃ全然酔いやしないよ」


 そういうと、アガットが俺の隣に腰を下ろした。


「フランとホイットはどこにいるの」


「フランは、海岸の見える崖の方に散歩にいった。ホイットは、その監視」


 アガットは缶ビールを開け、一気に飲み干した。


「何杯のんでもうまい。それにしても、ほんとにここがヴィントーンなの」


「ああ、間違いない。ナビの画面にそう表示されている」


 ここは、バリースエイト王国の南、ヨハン達の故郷から、さらに南東に行った海岸沿いの遺跡だ。人が住むことを放棄してどれくらいの月日がたったのかさえわからない。草木が生い茂り、かすかに、加工した石材がちらほらと草木の間から見える程度だ。海外沿いといっても、付近に船を着けるような場所はなく、基本的に断崖が続いている。もしも、ここに来ようという旅人がいるならば、道なき道を数日歩かなければならないだろう。


「辺鄙なところだけど、たしかに崖からの眺めは最高だったよ。精霊様が好きそうな、静かで清いところだ。でも、逆に言うと、どうしてこんな辺鄙なところに村ができたのか、不思議だ。隠里だったのかな」


 アガットは、そういうとポケットから、ナッツを取り出して口の中に放り投げた。


「ところで、なあ、ケンちゃん。本当に海底にあったのは、あれだけだったのか」


「そうだけど」


 アガットには、海底に残していった山盛りの財宝のことは、内緒だ。本当のことを言えば、シービアンのことだ、取りに行くと言って聞かないだろうし、お婆や母親に渡りを付けて回収しないとも限らない。今の俺たちには、持ち帰った財宝だけで十分満足だ。これでしばらくカネのことを気にしないで済む。


「俺のプレゼントが不満か」


 アガットの薬指と中指には、宝石の付いた金のリングが収まっていた。一つは、赤い宝石。もう一つは緑色の宝石だ。


「いや、いい宝石だ。ありがとう。さて、こんどは、どんな事が起こるんだろうね」


「さあな。ろくでもないことに違いはないだろう」


「もしも、あたしが、お嬢みたいな事になったら、ケンちゃんは助けてくれる」


「はあ? アガットが悪魔に憑依されるとか」


「そうそう」


「ううん。そしたら、逃げる」


「嘘」


 アガットは、目を見開いて驚いている。


「嘘だよ。でも、そのときは、覚悟しろよ。思いっきりぶん殴るかもしれないから」


「ああ、そうだ。忘れてた。あのうら若き乙女に体当たりをぶちかましたんだった」



***



 そよ風が吹いている。たき火の光は、不規則に揺らめいている。少し欠けた月が昇った。薄雲に隠れて、月は見えたり見えなかったりする。準備は万端だ。いつも通りフル装備で、何かが起こるのを待ち構える。何が起こるのかは、フランにもわからないらしい。そんなフランも、背中にリュックを背負い、土のゴーレムを準備していた。ホイットが、フランに話しかけた。


「そういえば、ディーラーが言っていた雷蛇と双子は、どうなったの」


「使えそうなんですが、頭に靄がかかったようになっていて、確実に使える自信がないんです。まだ魔導具のほうが安心です」


「そうね。一か八かの魔術なんて使う必要ない」


「ええ。ありがとうございます」


「アガット。精霊は何か言っている」


 アガットは、おどけてホイットにむかって敬礼をした。


「はい、ホイット隊長。日が暮れてから、ずっと逃げるように言ってきます」


「オーマイガだ」



ここまで覚えた技。


達人級。

達人級の技は習得まで2日かかる。


技連携数 9。


革衣

 強度倍増。

 2種以上の属性を身に纏う


混合言祝詠唱

 キョズ ボウサンゲツ テイトウ シコキュウ。


吸歩

 物体に吸着しながら歩行

 壁、天上、水上も歩行可能。


秘相

 気相の上位バージョン

 オーラに完全にピントが合う状態

 オーラの流れ=経絡まで知る。


返し

 反射的に技を相手に返す

 成功率 50%〜

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