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第96話 アンジブル島の行方

 月や星の光は分厚い雲に遮られ外は真っ暗闇だ。近くに街の明かりもない。運転している自分も、ナビの画面だけが自分の位置を知る唯一の手段だ。普段、夜中に走ることはないから、俺は間違っていないのかと何度も不安な気持ちに襲われた。


 フランは、まだ申し訳なさそう態度で軽バンの助手席に座っていた。フランが鉄山靠耀のダメージから回復し助手席に座れるようになって4日が経っていた。その間ディーラーは、現れていなかった。このままずっとディーラーが現れなければ良いと願うが、それが無理な要求だということもなんとなく察することができた。


「きっと、ホイットとアガットが何かしら良い情報を掴んでキンダーインで待っていると思うよ」


「はい」


 ホイットもアガットも、フランをディーラーから助けることには同意してくれた。ディーラーの誘いにのることに、ホイットはイヤイヤながら同意し、アガットは、興味を深く覚えたらしく積極的に同意した。


 ホイットもアガットもアンジブル島という地名を知らなかった。もちろん俺が知るよしもない。神域確定した領域なら、ナビの地図で名前の検索することもできるが、アンジブル島という地名はなかった。


 そこで俺たちは二手に分かれることにした。ホイットとアガットは、王都キンダーインに残ってアンジブル島の情報収集。フランは、一人にはできないし王都に残すこともできないから、俺と軽バンに乗ってせっせと地図を作成することになった。


 目の前に、明かりがちらっと見えた。速度を落として近づいていく。その明かりがたき火の明かりだとわかった。ナビを確認する。ホイットとアガットとの待ち合わせ場所で間違いないだろう。ヘッドライトに、手を振るアガットの姿が浮かび上がった。



***。



 軽バンから、風呂上りのアガットが出てきた。


「いやあ、さっぱり。さっぱり」


 両手には、缶ビールが一本ずつ握られている。たき火の前に大股を開いて座ると、隣のフランに缶ビールを手渡し、自分は勝手に缶ビールを開けて一気に飲み干した。


「こんな上手い酒を飲んだら、よその酒なんて不味くて飲めないね」


「まったく、どこのおっさんだ」


 少し遅れて、ホイットも軽バンから降りてきた。ホイットは、最近追加されたウイスキーボトルを持っていた。たしか、16KPほどだ。味噌ラーメン約20杯分だ。飲むなとは言えないが、ホイットの酒量は、底なしだ。


「まさか、ホイット。それ全部飲んじゃうの」


「ああ、これか。これは、極上だ。これさえ有れば、私は他に何も要らないよ」


 ウイスキーボトルを空にするなら、ラーメン19杯食べてくれた方がお得だが、ケチと言われるのはしゃくなので諦めよう。


「お嬢、ビールを飲みなよ。そんなしけた面していても何も解決しないよ」



 ふだんろくな事をいわないアガットだが、そのことに関しては賛成だ。


「そうだよフラン。冷えたビールは最高だ。飲んで少しリラックスしたほうがいい。ずっと緊張していたら、体が持たない」


「いつ、またディーラーが現れるかと思うと」


 アガットは、ホイットにねだって、ウイスキーを空いた缶ビールの缶に注いでもらっている。


「大丈夫、大丈夫。この酒もうまいね。ホイット」


 ホイットは、少し嫌そうな顔をした。


「あんたは、ビールを飲みなよ」


「そんな冷たい事を言うなよ。それに、お嬢。もしも、ディーラーが現れたら、また、ケンちゃんがやっつけてくれるよ。なあ、ケンちゃん」


「ああ、できればごめんだが」


「そういうなよ。今度は、ちゃんと手加減できんだろう」


 まったく痛いところを突きやがる。


「そろそろ、ホイットとアガットの報告を聞かせてくれよ」


 ホイットが、ウイスキーボトルをラッパ飲みし、口を拭った。


「簡単にいうと、アンジブル島という島はこの辺にはない。冒険者ギルドや商人ギルドに当たってみたが、そんな島はないと言われたよ」


「まずいな」


「ええ、すぐには見つからないかもしれない」


「甘いな、ホイットさん」


 ホイットがムッとした顔をした。


「調べが甘いって。それで世界第三位のシーカーなら、やっぱりあたしは世界一だね」


「アガットは、何か掴んだのか」


「もちろん」


 フランが、「本当ですか」と目を輝かせた。


「でも、話はそんなに簡単じゃないんだよ。あたしは、お婆に話しを持っていた。そしたら、ある術を教わった」


「どんな術?」


「たぶん、今回の件で役に立つはずだ」


「お願いします。勝手な言い分なのはわかっています。お礼はいくらでもします」


「お、さすが7商の娘。気前が良いね。でもね。カネじゃ解決しそうにないんだよねえ」


 ホイットが一口ウイスキーを飲んでいった。


「もったいぶってないで、早く言いなよ」


「術のやり方は教わったが、実際に試していない。失敗するかもしれない」


「命がけ?」


「そう。命は惜しい。ただ、ケンちゃんがどうしてもというなら、やってみる」


 アガットが真剣なまなざしで俺を見つめていた。ホイットも、フランも、俺の次の言葉を待っている。他に手はないのだろうか。地図を作れば、必ず見つかるだろうか。そうだとしても、それはいつのことになるだろうか。一月後、二月後、それとも一年。


 フランの顔を見る。肌は荒れていた。目の下に隈もできている。髪の手入れもおろそかになっているようだし、眠れていないようだ。はじめてあったときの溌剌さも今はない。ディーラーのことを思えば、それも仕方ないだろう。つまり、フランの精神がいつまでも持つとは限らない。


「アガット、俺に手伝えることはあるか」


「もちろんある」


「よし。お願いする」


「よし。早速やってみよう」


「おい、酒を飲んでやって大丈夫か」


「その方が良い。これからヤルのは、風の精霊に紛れて会話する風の聞耳もんじという術だ。風の精霊に好かれ過ぎると、戻ってこれなくなる。風に流されても構わないが、帰る場所を意識してないと、これもまた帰れなくなる」


「おい、本当に大丈夫なのか」


「だから、ケンちゃん。術を使っている間は、私をしっかり抱きしめていて欲しい。どこにもいかないように抱きしめて。道に迷っていても帰って来てくれと、強く願っていてほしい」


 生唾を飲み込む。こんな危険なことをアガットに頼んでしまったという自覚が、遅れて俺を襲ってきた。


「さあ、早く。抱いて」


 ホイットをちらっと見る。ホイットは、じっと俺を見ていたが、俺と視線が合うと視線をそらした。


「さあ、早く」


 俺は、アガットを強く抱きしめた。


「だめ、それじゃあ、弱い。もっと強く。痛いぐらいに」


 俺は、目をつむり夢中ででアガットを抱きしめた。


ここまで覚えた技。


木属性

範囲固定 成長力、再生力上昇

エイケツ ムジョウユウ ソウキ バクウンカン

金属性

範囲固定 固定力、固化力上昇

カイジョウ ショウミンゲ テンガイ キョウヒジ

光属性

外世界

五感感度の増加

ジュウジン エンヨウヨキョウセキ キソウシ

闇属性

外世界

五感感度の減少

ゲンショク リンコウマン ヒイカク ロジ

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