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第95話 キンダーインの夜明け

 木々の隙間から、朝日が昇っていくのをぼんやりながめる。助手席では、アガットが助手席の窓ガラスに体を預け、ダッシュボードに脚を乗せて寝ている。


 アガットの寝顔は、かわいい。昨夜は、本当に疲れたのだろう、アガットは熟睡しているように見えた。よくよく見れば、美人だ。それにしてもよくもあの場所から逃げ切れたものだ。アガットが、フランを抱え、俺がホイットを助け起こしたとき、ちょうど俺たちの背後には警備兵達が迫っていた。あのときアガットが、何かしら呪文をとなえ煙を発生させてくれなかったら、姿や顔を見られ、今頃俺たちはお尋ね者になっていただろう。アガット様々だ。


 軽バンの運転席で伸びをする。首と腰が張っている。軽バンを降りて、静かにドアを閉める。後ろのスライドドアを開けると、ホイットと目が合った。声を潜め、話しかける。


「どう」


 ホイットは、首を横にかしげただけだ。荷室を覘くと、毛布の上に、フランが横たわっていた。本来なら、部屋をレンタルして休ませたいところだが、ホイットがそれに反対した。


 もしも、また、ディーラーが目覚め、勝手に行動し始めたら、もう一度、塔を燃やしに行くと言い出したら、対応できないというのがホイットの主張だった。たしかに、そうなのだが、これから毎日そんな心配をして生活を送らなければならないと思うと憂鬱だ。ホイットの脇に座る。


「少し寝たらどう」


「一晩ぐらい寝なくたって問題ない」


「でも長丁場になるかもしれない」


「まったく、とんだお荷物を押しつけられたものだ」


「そんな言い方は、どうか」


「それじゃあ、思い切ってフランとは縁を切るか。今後何が起こっても、関係ないと割り切るか」


「それも、どうか」


「じゃあ、やっぱりお荷物じゃない。仕事はどうするの」


「やらないわけにはいかない。そっちは俺の命がかかっているから。フランからディーラーを引き離す方法があれば良いんだけど」


「何か手掛かりがある? ほんの少しの手掛かりでもあれば、探し出してみせるけど。今のところまったく足がかりも思いつかない」

「幽霊がフランに取り憑いたのなら、霊媒師とか、聖職者にお祓いしてもらうとかは、どうかな」


「おいおい、乱暴者やな、君たちは」


 おどろいて、荷室を見る。フランは、1ミリも動いていないし、目も閉じられているが、口だけは、動いている。


「除霊とか、ワレに効くわけないやろ」


「フランをどうするつもりだ」


「どないもこないもない。この娘は、選ばれたんや」


「誰に」


「ワレと、聖遺物レリックにや」


「どうして」


「運命っていうことやろ」


 ホイットが、ベンチシートをひとっ飛びにまたいで、フランの首元にナイフを突きつけた。


「勝手なことを抜かすな」


「おおーこわあ」


 言葉とは裏腹に、ディーラーがホイットのことをちっとも怖がってないことを示すような言い方だ。


「あんまり、この娘にえげつないことせんようにな。昨夜の攻撃で、だいぶ命削たようやで」


「フランを起こしてくれ。そうすれば、万能薬を飲ませてあげられる」


「冗談や。冗談。多少ダメージをうけたようやけど、大怪我にならへんように、ワレが護ってやったからな」


 ホイットは、ナイフをフランの頬に強く押しつけた。


「お前は、フランをどうするつもりだ」


「そうやなあ。教えて欲しければ、これからワレが言うところを探し当ててみい」


「どうして、そんな茶番に私達が付き合わなければならない」


「お互いのためやと思うぞ」


「それに探し当てればわかる。ぜったいオノレたちに不利になることやあれへん。むしろ、見つけた後は、ワレに土下座し、崇め奉りとうなるはずや。それとも、ここでこのお嬢さんを殺すか」


「ふたりとも、待って。ホイット。話だけでも聞こう」


「坊主の方は少しは、話ができそうやな。いいか、満月の夜、アンジブル島の影にできる扉をくぐり、海底宮殿に行け」


「何がある」


「いけばわかる」


 フランが、うめいた。まぶたが痙攣し、しばらくして目を開けた。上体を起こそうとしたが、手足、体が思うように動かないようだ。すまん。これから絶対、仲間に鉄山靠耀は使わない。


「すみません、ホイットさん、ケン様」


それだけ言うと、力尽き再び、目を閉じ眠りに入ってしまった。


ここまで覚えた技。


地属性

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スイジ ドウコウイン スイゴ カブンサン

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