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第91話 王都キンダーイ

 日差しは強いが、太陽は、正中を過ぎ次第にその光を弱めている。ねずみ色の雲も遠くに見えている。明日は、もしかしたら雨かもしれない。軽バンは軽快に畑や放牧地を走行している。


 ロラさんにたずねても天気予報は、してくれない。元の世界で見ていた天気予報のありがたみが、ヒシヒシと感じられる。


 アガットは、助手席のダッシュボードの上に足をのせて前を眺めている。できれば、足はダッシュボードに乗せて欲しくはないが、くやしいことにアガットの乗車態度にも慣れてきてしまっていた。


 ナーワを出てから7日が経っていた。仕事は順調だ。他人の土地に末社や中社を埋めるときも、アガットが口八丁手八丁で、丸め込んでくれるので、トラブルらしいトラブルもなく神域は拡大している。


 4人分の部屋代は、1部屋1日4MP。食事は車中がほとんどなので、水と合わせて1人1日4から5MP。みんなの私物を保管するために、倉庫代1日1MP。夜、俺は部屋で神威格闘術のDVDを見るので1MP。ホイットとアガットは毎日に晩酌をしているようなので、100KPほどかかる。それにみんなの下着の替えと洗濯代が合わせて1人1MP、合計4MP。ぜんぶ合計すると毎日約40MPかかっている。


 末社ひとつ神域にするのにかかる時間は、45分ほどだ。得られるポイントはたったの3MP。1日10時間働くとして、末社設置10カ所で、30M。10カ所設置できれば、もう一踏ん張りして、中社を設置できる。そうすれば、28MP追加でき、合計58MPを得られる。


 そこから、末社、中社代やら、ガス代やらが引かれるから生活はそんなに裕福にはならない。が、感謝ポイントの貯金もあり、それにはまだ手を付けていないので、まあ、まあ順調だ。ただし、やはり気がかりなのは、ギーガーの古迷宮だ。あの周辺は、空白地のままだ。


 ロラさんに確認したところ、、ギーガーの古迷宮を攻略しなければ、いつなんどきこれまで確保した周りの神域が奪還されてしまうかわからない状態だという。アガットが話しかけてきて俺の思考は中断された。


「それにしても、どうして王都なんだ。王都とは反対の東の都市オダツートラかと思っていたけど」


「どうして、そう思った?」


「だって、ナーワを追放されたんだよ。王都に向かうのは余り利口じゃないよ。ここは、すこしほとぼりがさめるまで地方にいた方がいいと思うのは普通じゃないか」


「それは、有りの考えだけど、神域の繋がりを考えると、この島の西側を固めて、できれば大社を設置したい」


「大社ってヤツは、中社をつなげた範囲ってことだろう」


「そう」


「なら、余計さあ。この地図をみると、グランツル、キナッシュ、ナーワ付近を中心に中社があってゆるく東に孤を描いて曲がっているからナーワから東、オダツートラから、海にも設置できるんだろう。ぐるっと回って、グランツル辺りまで囲った方が自然じゃない」


 まったく痛い指摘だ。古迷宮の苦い記憶やフランとディーラーのことが影響していた。できれば今はギーガーの古迷宮に近づきたくないというのが俺の本音なのだ。逃げ回っているわけには行かないのもわかる。けど、少し時間が欲しい。


「でも、あれだよ、アガット。どっちみち一つの大社だけでは、この島一つを神域にすることはできない。島周辺に三つ、四つ設置することになるから、多少、無駄ができてもいいのさ」


「そうか。難しいんだな」


「まあ、任せておいてよ」


 そうは言ってもノープランなのだが。軽バンの屋根がノックされた。運転席の窓を開ける。


「どうした。ホイット」


「もうすぐ街道に出るぞ」


 軽バンを駐め、みんなに降りてもらう。軽バンに鍵をかけ、少し歩くと、王都とナーワをつなぐ街道に出た。兵士たちが、隊列を組んでナーワに向かって進行している。街道を行く旅人たちは、道の脇にどいて膝をついて隊列を見送っている。意味はわからないが、俺たちもその真似をして、隊列が過ぎ去るのを見送る。アガットが、隣にいるホイットにヒソヒソ声で話しかけた。


「どう思う」


「どう思う、とは」


「防衛できると思うか」


 ホイットは何も答えなかった。きっと、俺に話しかけられても同じような態度になっただろう。今の俺たちにできることは、だまって見送ることだけだ。隊列が過ぎ去った方向とは逆方向に歩いて行く。しばらくすると、高い塔が見えた。フランがいつの間にか、俺の隣にきていた。


「あれが、由緒正しきバリースエイト王国の王都キンダーインの尖塔ミモレットです」


 よかった。今はフランの時間のようだ。


「有名なんですか」


「はい、かつて聖女もあの塔の天辺に昇って、この島に祝福をもたらしたと伝えられております。伝説ですが、あの塔だけは、幾度の戦乱を経ても一度も建て替えされることもなく、建設当時の姿のまま、立ち続けていると言われています。聖女が実際に昇った塔、そのものが残っているということは、とてもすごいことだと思います」


「まさに伝説だね」


「はい。そうです。ですから、いまでは、聖地として、教会の許可なく塔に昇ることはできません」


「王都の塔だけど、王様も登れないということ」


「そうですね。おかしな話ですが」


 フランがクスリと笑った。


「ところで、フランは、何の歴史を調べているの」


 フランが難しい顔をした。


「話したくないことなら、無理強いはしないよ」


「もう、話しても良いと思います」


「私は、幼い頃から、不思議な夢を見ていました」


「その夢には、必ず女性が現れて、私に話しかけてくるのです。何を言っているのかはわかりませんでした。口だけが動いていて、必死に私に何かを伝えようとしているようでした」


「今思えば、聖女が現れていたのだと思います」


「女性がどうして聖女だと思ったの」


「わかりません」


「だから、聖女様のことが知りたくて聖女様の歴史を調べるようになったんです。ご存じの通り、私の家は、裕福でしたから、色々な書物を読むことは簡単でした。ですが、書物を読めば読むほど、私の中に疑念が積もってきたのです」


「それは、何の疑念?」


「歴史の中の聖女様は、本物じゃない、という疑念。でしょうか。それは、大きな声では言えないことでした。今も言えませんが」


 いつの間にか、フランの隣を歩いていたアガットが相づちを打った。


「そりゃあ、そうだわな」


ここまで覚えた技。

聖掌握せいしょうあく

聖属性の掌握、不浄に効果的


邪当て《よこしまあて》。

邪属性の遠当て、神聖属性に効果的


爆炎掌握ばくえんしょうあく

火炎属性の追加ダメージ


師範級


上級者を無力化する

属性祝言詠唱

各属性を1種だけ身に纏う

初級、上級技と組み合わせ、強化する


技連携数 7


二重衣 厚衣x2

跳歩 3〜4mの跳躍

気相 相手のオーラ種類を知る

流し 相手の技を受け流す 成功率 50%〜。


最後まで読んでいただきありがとうございました。


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