第8話 ポイントシステム
やはり女神との取引は詐欺だったのではないか?
「ロラさん。他の仕事は、契約に入っていないと思う」
「次の仕事を教える前に、ポイントについて説明すっべ」
さらっと俺の話は、無視された。
「いいか、バカ野郎。これから教える作業も一連の仕事の一つなんだよ。まあ、いいからだまって話を聞け」
反抗してもしようがない。
「了解です」
「ポイント得るには3つの方法があっぺ。1つは、敵を倒すこと。敵の格に応じてポイントが入っぺ」
これは、まったく無理だ。想像するのも無理。サッカーは比較的得意だったが、今は運動をしていないし、格闘技は、ビデオでみているだけだ。自分で戦えるという気は全然しない。
「2つ目は、神域を獲得すること。面積に応じてポイントがもらえっぺ。1平方キロで10000ポイント(= 10KP)だ。ただし、もし、神域を敵に奪還されっと、持っているポイントからその分差し引かれっからな。ポイントの合計がマイナスになると、あたいは消滅しちまう。そして、とっても大事なことだけんど、バカ野郎も一緒に消滅すっから」
とてもサラリと怖いことを言ったな。つまり、ポイントマイナスは即死ということか。
「3つ目は、善行を積むだ。人々の様々な願いを叶えて上げると、ポイントがもらえっぺ」
「これは、奪還の心配は?」
「ねえよ」
これは、いい。善行が何かという問題はあるが、これは目減りしないということは、一つの安心材料になりうる。
「その善行のポイントはどうやって決めるの?」
「それは、善行によって、その時時で女神様がお決めになるべ」
つまりわからんということか。
「気をつけんのは、神域を奪還されないこと、そしてポイントの管理だっぺ」
「なるほど。ポイントは何の役にたつのでしょうか」
「食べたいものを食べたり、武器を購入したり、ロラや軽バンをカスタマイズしたりだ。でも、それらには、すべてポイントを使う必要があるわけ。だから無駄遣い厳禁だ」
ずいぶんと世知辛いシステムだ。誰のためにこんなことをしているんだと喉元まで上ってきた言葉を飲み込んだ。
「今、作った神域は、実は次第に元の白い地図に戻ろうとすっから。これを食い止める必要がある」
「元に戻る。そんなことをしていたら、一生地図なんて完成しないし、ポイントがマイナスになってしまう可能性が高い。つまりポイントなんて使えない。結局、絵に書いた餅だ」
「そこよ。ポイントを失わないために神域を安定化させる、というお仕事が発生するわけだ」
なるほど、とは思うが、もう少しましなやり方はなかったのか。
「それが、守護システムだ。守護システムには、末社、中社、大社の三種類の御札を使う。中社は末社約10社を統括できて、大社は中社約10社を統括できる。もちろん、中社、大社のほうが守備力は高いから、どんどん作っていくべ。ただし、新しく獲得した神域には、末社を使うのが決まりだ。末社の性能は、半径10キロの円の範囲を90日間保護できっから。それを過ぎると効力は失効すっからな」
「なっ、と言われても。たった90日しか持たないの」
「慌てんな、バカ野郎。順番で説明すっから。そんで、末社を使うか」
「はい、としか返事のしようがないだろうに」
「はあ。何が気にくわねえのか知らねえけど、使うか使わねえかは、バカ野郎の自由だっぺ」
またしても、新手の詐欺に引っかかっているような気分だ。選択肢は実質無いのに、あくまで選択したのは、あなたですから、と迫られている哀れなカモ、それが今の俺だ。
「末社、お願いします」
「素直にそう言えや。末社を使うには、1MPが必要だ。現在取得しているのは、3.25MPだ。使っていいですか。いいべね」
そこは、俺の了解を取らないのか。
「ちょっと待ってくれ、計算したい。俺のスマホを返してくれ」
「残念だが、スマホは返せん」
「それじゃ、何か書くものとメモ帳はない?」
「あっべ。ついでに、アイテムリストを説明すっか」
ナビ画面が切り替わり、表が現れた。
「この表に、小型タブレットがあっぺ」
小型タブレット(1MP/日)
「ある。1日、1MPということ? 買い切りじゃなくて、レンタル?」
「もちろん。毎日のメンテナンスもバッチリ」
「今、作った神域から得られたポイントが3.25MPだから。ちょっと高くない?」
「あたいの仕事に文句を言うんかい」
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