第79話 依頼
不機嫌な俺たちをヨハンは自分たちの宿舎へと引っ張っていった。
「そんなに、むくれるな、お二人さん」
「どうしてあの司教はあんなに威張り散らしている」
「教会の奴らは、だいたいあんなもんだ。もちろん良いやつもいるけどな。ただ、この街の司教は特別だ。領主と昵懇。領主も熱心な、人によっては、狂信とも言っているけど、そういう関係なんだ」
「だから、あまりこの街で教会と事を構えるな。おとなしくしていれば、この町から追い出されることはない。あれは単なる脅しだから。なあ、機嫌を直せよ。酒と飯をおごるから」
ヨハンは、そういうと部屋を小走りで出ていった。替わりに銀翼の他のメンバーが次々と部屋にやってきた。
フランが、握手を求めてきた。
「予想通り、再びお会いしましたね。お元気そうで何よりです」
「ええ、元気ですが。すこしがっかりしております」
「どうしてですか」
ヨハンが戻ってきた。部屋に、料理と酒が運ばれてきた。
「さあ、飲んで食べて機嫌を直してくれ」
「何かあったんですか」
俺は、先ほどの話をフランにし始めた。ホイットは、「お言葉に甘えていただく」といって酒を飲み始めた。
「それは、ひどい」
「そうなんですよ。でも、ヨハンは、あまり関わるなというんです。それも、まあ、なんとなく分かるような気がしますけど」
ヨハンが、酒を注いだコップを俺に差し出した。
「ここで、ナーワの領主や教会ともめるのは得じゃないんだと俺は判断したんだ」
コップを受け取った。
「それは、相談したいことと関係があるのか」
「ある。グランツルのギルドの仕事で俺たちは、ギーガーの古迷宮を探索することになっていた」
「ああ、そんな話を聞いた覚えがある」
「かつてギーガーの古迷宮にも白き獣たちが徘徊していた。冒険者ギルドが、いくども討伐を繰り返したおかげで、白き獣を根絶したと思われていた。実際、古迷宮の地図を作れるぐらい調査も進んでいるし比較的安全な迷宮だったんだが。先日のトリリオンたちの話からギーガーの古迷宮を調べようということになったんだ。それにちょうどフランもギーガーの古迷宮を調べたいと言っていたので、その仕事を引き受けた」
フランが、ヨハンの話を引き取って話しはじめた。
「現在、ギーガーの古迷宮には、かなり多くの白き獣が徘徊していました。というより迷宮の外にまであふれ出ていると言ったほうが正しいでしょう」
「そういうわけで、ギーガーの古迷宮が大変なことになっていた。簡単な仕事だと高をくくっていたんだがな」
そういうと、ヨハンは、グラスに入った酒を一気に飲み干した。俺が空いたヨハンのグラスに酒をつぎ足そうとすると、フランが俺の腕を押さえた。
「甘やかしてはダメです。ヨハンは飲み過ぎだから」
ホイットは、そのフランの手を払った。
「ヨハンが楽しく飲んだ方が、みんなもリラックスできるでしょう」
「ホイットさん。ヨハンは、私たちのリーダーですよ」
「分かった、分かった、これ以上は全てを話し終えてからにするよ。それで、俺たち銀翼の大鷲が、一番近い、ナーワの冒険者ギルドにそのことを報告したんだ」
「ご存じかもしれませんが、冒険者ギルドは、白き獣を退治するために生まれたのが起こりです。冒険者ギルドは、その生来を忘れていないようです」
「どういう意味ですか」
「ナーワの冒険者ギルド長は、領主の協力を得て、討伐軍編成を命令しました。今日明日にも、有志があつまってギーガーの古迷宮の討伐を開始するつもりです。また、アレッキオ司教も討伐に賛成とのことで、癒やし手として参加されるとのことです」
「それで、だ。バルサにも参加してもらいたい。他にも、ベテランパーティーが多数参加する予定だが、味方は多い方がいい」
たしかにまだ、ギーガーの古迷宮周辺は神域にしていない。避けて通れないが、火中の栗を拾う必要があるだろうか。俺が参加したのでは、足手まといではないだろうか。アレッキオ司教と顔を合わせることになるのは、かなり気まずい。
「それに、ギルド長アナトーリアは、アレッキオ司教の懐刀とも言われている。アレッキオ司教やアナトーリアに恩を売っておいて損はないと思う。もちろん、ギルドから報酬がでる。だから、今、教会と事を構えるわけにはいかないんだ」
それでもやりすぎだし、グランツルでも思ったが、神聖教会の奴らは、どうも馬があわない。気に食わない。左足が痛み出した。ナーワに来てから、左足がずっと痛いような気がする。想いが口からこぼれ出てしまうまえに酒で飲み込んだ。
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