表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

77/105

第77話 フランカ一族

「重ね重ねご迷惑をおかけしたがね」


「あなた達は何者ですか」


「そうじゃったね。まだ挨拶の途中だった。ワシは、フランカ。みんなからはフランカ婆と呼ばれておるよ。ボルクラウの野蛮人どもから助けてくれたのが孫娘の一人、クラリ。そして、ここまで案内したのが、クラリの母親のリリアーナ、私の義理の娘だがね」


 老婆は、一呼吸置いてから話を続けた。


「儂らは、フランカ一族。シービアンのフランカ一族じゃがね」


「シービアン」


「そうじゃ。世間じゃ、あまりあたしらのことを良い風にいわんからね」


 当たり前だ、という言葉を飲み込む。オルフェーオの村から作物を盗んだシービアンと同族なのだろうか。それとも関係ないのか。ホイットの顔が脳裏によぎる。チャンスは一度きりと言っていた。手の平にじっとりと汗をかく。3人を一度に捕縛することはできないかもしれないが、目の前の婆さんだけなら、捕まえられる。人質にできれば、交渉も可能になるはずだ。

 フランカは、顔を正面にいるクラリとリリアーナに向けたまま、俺に言った。


「馬鹿なことを考えるもんじゃないが」


「何も馬鹿なこと考えてないよ」


「ほう、そうかね。声が震えているが、気分は大丈夫かね」


「オントラント村で先日、農作物が盗まれた。盗んだのは、多分シービアンだと思う。あなた達と関係があるのか」


「オントラント村。さあね。クラリ何か知っているかが」


「姉ちゃんと、爺さんが、祈りに行った所かもしんねえな」


「祈りじゃない。盗みだ」


「だから、神聖教会の馬鹿どもは嫌いだよ」


「俺は、信者じゃない」


「ほうほう、珍しい。では何を信じて生きておるが」


「そんなことよりも、あんたらが盗んだのか。盗んだなら、返してくれ。俺は冒険者ギルドに所属していて、それに関して依頼がでている。わかるだろう。盗まれたものが返ってこなければ、あんた達を捕まえる必要がある」


「あんたらから見たら、盗みかもしれんが、儂らが、畑でお祈りをするから、毎年作物が収穫出来ていると言ったらあんたは信じるかね」


「俺は、ケンだ。信じる信じないじゃない。勝手に他人の作物を持って行ったら泥棒だ」


「おばあ、こいつらには話してもわかんねえんだよ。無駄無駄。だから、あたしがいつも言ってんよ。泥棒呼ばわりする奴らのために、祈ってやる必要なんてないんだよ」


「お前は黙っておれ。これは、我ら一族にしかできん使命じゃが」


「誰に何を祈っている?」


「精霊の皆様方に、祈りを捧げている」


「おばあ、説明しすぎ」


「クラウ、黙ってお聞き。ワシは、この出会いが偶然だとは思えん」


 それまで黙っていたリリアーナが口をはさんだ。


「どういうことですか、お婆様」


「これまで、クラウが仕事をしくじったことがあったかのう」


「いいや、ない。今回は、たまたま手がすべった」


「シービアンの名を聞いて、これほど動揺せん人はこれまでいなかった。まるで、生まれたての赤子のようじゃが」


「それは、買いかぶりすぎだ。こいつが、間抜けだからだろう。それともおつむが足りないか」


「間抜けや、考えの足りない御仁が男3人に絡まれているシービアンの娘を助けてくれたか、これまで」


「そんな骨のある、勇気のあるヤツはいなかった」


「あんたらの話に興味はない。早く作物を返すか、どうか決めてくれ」


「せっかちじゃのう、ケン殿は」


「気持ち悪い。殿なんてつけないでくれ」


「作物は返せん。だが、売って得た代金は返そう」


「おばあ、それじゃあ、あたしらの祈り損じゃないか」


「これも精霊様のお導きじゃが」


「のう、ケン殿。手付金として、これを持って行ってほしい。残りは、後で届けるとな」


「差し出された袋の中身を確認する。硬貨が数十枚入っていた」


 まあ、婆さんを人質に取って、これで良しとするしかないだろう。


「それじゃ、約束は守ってくれよ。婆さんは、俺といっしょに来てくれ。人質じゃないが、担保が必要うだ」


「けっ。人が良いね」


「それじゃ、お嬢さん。一緒に冒険者ギルドに人質として同行してくれるかい」


「あたしを捕まえられたらね」


「およし、クラリ。あんたじゃ敵わないよ」


 リリアーナが心配そうに娘をたしなめた。ドアがノックされた。リリアーナが、ドアを少し開けた。ドアの隙間から見えたのは、ひげ面の男だ。


「移動の時間だ」


「それじゃ、ケン殿。またお会いしましょうが」


いつの間にか婆さんは、リリアーナの隣に立っていた。


「おい、待て。婆さん」


 婆さんが移動したのに全く気づかなかった。いつのまに。どうやって?


「兄ちゃん、こんどは、懐に気を付けなよ」


 一瞬、部屋の中が光に満たされた。目を開けると部屋にいた三人は、音もなく部屋から消え去っていた。残されたのは、香炉の煙と俺だけだった。


「なんだよ」


 それまでフランカ婆さんが座っていた目の前の席に腰を下ろした。イスには、婆さんのぬくもりが確かに残っていた。机に突っ伏した。


「婆さんひとり、捕まえておけないじゃないか。くそったれ」


 拳で机を叩く。乾燥した木の音がした。


「種も仕掛けもありませんか。ああ、むかつく。なんなんだ、シービアンって」


 ドアがいきなり開いた。小太りの中年男が、棒を持って立っていた。


「おいこら。この部屋で何をしている」


「いや、何も」


 婆さん一人、捕まえられず落ち込んでいるなんて言えやしない。


「この浮浪者め、どうやって忍び込んだか知らんが、とっとと出て行け」


 男は、棒を振り上げ、威嚇した。


 キョハイ ゲミョウゲ ツエイ セイサンジン


 飄歩


 さっと、男の脇を通り抜け通りに出た。

 男は、俺が脇をすり抜けたことに気づいていないようだ。まだ部屋の中を見ている。これ以上面倒を起こさないために、さっさと逃げだすとしよう。




ここまでで新しく覚えた技。



縦拳烈火じゅうけんれっか

縦拳の強化版 火傷の追加ダメージ


正拳氷牙

正拳の強化版 凍傷の追加ダメージ


二連拳風牙

二連拳の強化版 裂傷の追加ダメージ


貫手漏地ぬきてろうち

貫手の強化版 エナジードレインの追加ダメージ


一本木成いっぽんぎなり

一本突きの変化版 微少な傷回復機能


退歩金剛掌破たいほこんごうしょうは

一歩引いた脚と、前に突き出した反対の腕を一直線にすることによって、向かってくる相手を返り討ちにするカウンター技。使うのに勇気が必要であり、さらに使いどころが難しい。


最後まで読んでいただきありがとうございました。


「面白い!」「続き読みたい!」などと思った方は、ぜひブックマークをお願いします。

↓の評価で5つ星にしていただいたら励みになります。


よろしくおねがいします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ