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第40話 休息

 トリリオン三人組を領主に突き出した二日後、俺とホイットは、銀翼の宿泊しているホテルに招かれた。部屋に入ると、昼間だというのに、酒や食事が大量に運び込まれていていた。


 銀翼のメンバーの他には、アレッシアがいた。アレッシアは、救出されてから一度も教会には戻らず、ここで保護されていた。ヨハンが、俺に握手を求めてきた。ヨハンは、もうすでに酒を飲んでいるようで息が酒臭い。


「フィロンの野郎は、ナーワに移動しているところを冒険ギルドのメンバーによって拘束されたと、今朝、連絡が入った」


 フィロン司祭とその子飼いの部下リース守門官は、どうやってトリリオンの失敗を知ったのか不明だが、いち早くグランツルから逃亡を謀っていた。それが、今朝発見されたということらしい。


「領主は、フィロン司祭をどうするつもりだろう」


「もちろん、今回のことは、領内で起こったことだから、領主が基本的に判断すべき問題だが、一応、筋として教会にも事情を説明するだろうが、こんだけ証拠がそろっているんだ。教会もいちいち口を挟まないと思う」


 アレッシアをちらっと見ると手に持ったグラスを見つめていた。顔色はすっかり良くなったが、以前の明るさは見えない。


 フランは、グラスに注いだワインを俺に持たせた。


「そんな話は、後にして、今日は私の奢り。盛大に飲み食いして」


 フランは、そう宣言すると俺の腕をひいてソファーに座らせた。


「ねえ、あなたのことを詳しく教えて」


 酒ビンを持ったホイットが俺の空いている方の隣に座った。


「それは、企業秘密よ。あなただって、自分の魔道具のことをベラベラしゃべったりしないでしょう」


「私は、ケンに教えてとお願いしているの。あなたじゃないし、魔道具のことを教えてなんて言ってない。それに、私は、ケンになら自分の魔道具のことをしゃべっても良いわ。ただし、あなたには言わないけど」


 ホイットは、その言葉には反論せず。酒をラッパ飲みしはじめた。


「まあ、お上品なこと」


 ホイットがビンを机の上に、乱暴においた。


「私は、冒険者。あなたみたいなお嬢様じゃない」


 何が気に入らないのか、ホイットはフランを睨んだ。フランも、ひるむ様子もない。


「『冒険者は粗野』というイメージがちっともなくならないのは、そういう教養の低さからなのよ。生き残るためには、すこしくらい教養が必要じゃないかしら。ところで、ケンは、歴史に興味がある」


 あると言えばある。なんせ、この世界のことは何にも知らないに等しい。


「ええ、あります。でも何にも知らないんです」


「知りたいという気持ちが大事です。私、こう見えて歴史を研究しているんです」


「本当ですか」


「ええ、そのために、冒険者になったようなものです」


 この会話に、陽気になっているヨハンが俺の前に座り、会話に割り込んだ。


「フラン様も、それぐらいで勘弁してくださいよ。ホイットさんも、ね、ね」


何が、「ね」なのかはわからない。酔っ払いなのだから、大して意味は無いのだろう。ヨハンの隣に、アレッシアが座って、俺とホイットに頭を下げた。


「お二人にはまだ、ちゃんとお礼を言っていませんでした」


「気にしないでください」


 実際、今回の件で、感謝ポイントが375MP獲得出来ていた。どういう計算で、どういう内訳なのか不明だが、かなり多量の感謝がポイントになったので俺としては苦労した甲斐があった。


「アレッシアさんは、これからどうするんですか」


「新しい司祭様が来られてから考えたいですが、神聖魔術を覚えたいと思います」


「そうですか」


「今回のことで、自分の無力を思い知りました。世の中には、力を悪いことに使う人もいます。これまでは、自分とは関係ないと思っていましたが、今のままではそういう力に対して私は余りに無力です。守りたい物を守る力が欲しいのです」


 ヨハンは、微妙な表情で妹を見ていた。冒険者である自分に、妹の旅立ちを思いとどませることは出来ないと思っているのかもしれない。


「ところで、バルサは、今後どうするんだ」


「北に行こうと思う」


「キナッシュか」


「ナーワを拠点にしようと思う」


「たしかに。キナッシュには冒険ギルドはないが、ナーワにはある」


 軽バン自体が、走るホテルのようなものなので、一つの町を拠点にする必要もないのだが、そこまで説明する必要もないだろう。


「銀翼は」


「俺たちは、白き獣の件でギーガーの迷宮の再調査を頼まれているから、まずは、そこに。」


 ギーガーの迷宮か。まだ地図に載っていない場所だ。もしかしたら、また出会うかもしれない。ヨハンが勢いよく立ち上がった。


「それじゃ、バルサと銀翼のこれからの活躍を祈願して、乾杯」


 俺も、グラスを掲げて「乾杯」と言った。フランが、俺に向かって「また、お会いしましょう」といってグラスを掲げた。


****。


 ここまでで新しく覚えた技。


上級者に昇級。

 クリティカル率上昇。

 より多くの気を身に纏う

 (攻防力上昇)

 連打数上限 5


練気言祝

 キョハイ ゲミョウゲ ツエイ セイサンジン


飄歩ひょうほ

 旋風のように突然素早く移動したり、風をうけて進む帆船のように相手の力を推進力に変えて受け流す。


最後まで読んでいただきありがとうございました。


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