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第25話 礼拝

 教会の建物の中から誰かがアレッシアを呼んでいた。


「おおーい、アレッシアさん」


 アレッシアも声を張って男の声に答えた。


「オットーリオさん、裏庭です」


 しばらくして15歳ぐらいの少年が現れた。小柄だが、体つきはたくましく、全身、日焼けしていた。


「こちらは、漁師のオットーリオさん。こちらは、ええと冒険者ギルドの、すみません名前をお聞きしていませんでしたね」


「俺はケン、こっちがホイット」


 オットーリオは、両手でもっていた箱をアレッシアの足元に置き、手を差し出した。


「おお、よろしくな」


 人懐っこい笑顔だ。


「これが今日、教会に寄付する魚だ。今朝取れたてだから、皆なで食べろ」


「まあ、いつもいつもありがとうございます」


「んな、気にすんな。オラは、アレッシアさんの歌声に毎日癒やされてんだから」


「オットーリオさんは、たいへん熱心な信仰をお持ちで、毎日新鮮な魚を寄進してくださるのです」


「んな、カネがねえからこんなことしかできん。これで天国に行けるなら安いもんだ。そろそろ礼拝の時間だろう。俺は先に行ってる」


 そういうと、俺たちにも手を振って小走りで裏庭を出ていった。アレッシアが、箱を持ち上げた。


「皆様も是非、礼拝に来て下さい。司祭様もリースも礼拝に参列するなら、喜ばれることでしょう」


 俺たちは、すこしでも依頼主の印象を良くしようということで午前最後の礼拝に参加することにした。


「神聖教会って、どんな神様をあがめているんだ」


ホイットは、アゴに人差し指をあてた。


「たしか、光の神だったと思う」


「ホイットは神聖教会とは関係がない?」


「私は、まったく神を信じない」


「それが、冒険者として普通?」


「いいや、人それぞれだ。たまたま私は、信じる必要を感じないだけだ」


 礼拝所に入ると、席は半分ほど埋まっていた。席の一番まえには、オットーリオが座り、熱心に祈りを捧げていた。正面には、女神だろうか、まぶたを閉じ、口元に微笑みを浮かべた女性の立像がある。その背後には、ステンドグラスで、光輪が描かれている。


 祭壇のすぐ前まで進んで女神像を仰ぎみる。近づくと案外大きな立像であることがわかった。高いところから見下ろされているせいか、何故か意地悪そうに見えた。下から見上げると口元がゆがみ、人を小馬鹿にしているように見えたからか、それとも、何かの被害妄想か。


 正面脇のドアからアレッシアが出てきた。慌てて、後ろの空いている席に移動する。アレッシアの後ろから1人の男が続いて出てきた。うっすらと黄色味がかった生地に金銀刺繍でいろどられた服をきた中年の男だ。眼光は鋭く、険しい。男が中央の祭壇の前に立ち、両手を広げるとアレッシアが歌い出した。


 礼拝のマナーは知らないが、周りに合わせて、頭をさげて祈っている振りをした。キレイで澄んだ声だ。歌の意味はまるでわからない。聞いているうちに、目がまわりはじめ、吐き気がこみ上げてきた。俺は、我慢できず、礼拝所の外に逃げ出した。


 ホイットが、後を追って礼拝を抜け出し、俺の背中に手を当てた。


「大丈夫か」


「大丈夫。なんか気持ち悪くなって。今はもう大丈夫。申し訳ないけど、仕事に戻ろう」


「そうだな、ところで相談なんだが、ケンは、ジジェット村にある薪を取ってきてくれないか。その間に私は薪を割っておく。気分転換にもなるだろうし」


 俺は、その提案を有り難く受け入れ、ジジェット村に向かって軽バンを走らせた。


 教えてもらった道に沿って3時間ほどのんびり走ると柵で覆われた放牧地が見えてきた。断崖の上の草原とは、草の色が違う。こちらの方が青々として元気が良さそうに見える。放牧されている牛たちが、のんびり牛が草を食んでいる。


 何頭かは、俺の乗っている軽バンに頭を向け、警戒しているのか、オーとかモーとか、鳴いていたが、他の牛は我関せずといった態度で草を食み続けていた。


 そんな放牧地を10分ほどさらに進むとジジェット村とおぼしき集落が見えてきた。壮年の男性たちが、ジジェット村と書かれた看板の前で立って軽バンを睨んでいた。


 男たちは皆、手に鍬やら鋤やら棒きれなどを持っていて、物々しい雰囲気だ。看板の前で軽バンを停めた。角材を手に持った背の高い男が軽バンの前に進み出た。


「何者だ」

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