第13話 新たな試み
昨夜は、ベットに横になってもちっとも眠れそうになかったので、2つの新しいことを試してみた。
一つ目は、ランドリーサービスだ。部屋のノブに袋が掛けられていることに気がついた。袋に書いてある説明には、以下のように書かれていた。
ランドリーサービス 1MP/回 いつでも清潔な服装を心がけましょう
若干高いとおもったが、おもらしした下着はやはり洗濯したい。他に誰がいるわけでもない。廊下で素っ裸になって、すべてをランドリーバックにつめて、廊下に置いておいた。部屋の中では、素っ裸で過ごすことになったわけだが、それこそ、誰に気がねする必要もなし。ロラが見ているかもしれないと思ったが、かまうものか。
翌朝、入口のドアに、ランドリーバックが吊り下がっていた。中身を確認すると、ズボンもシャツも、下着も全部、血のシミ一つない状態だ。もちろん臭いもしなかった。昨夜、ナイフで切り裂かれたズボンも元通りに直っていたのには少し感動した。
無料ではないが、下着や服を清潔に保てるのは、精神衛生上もたいへんよろしい。これからもポイントに余裕があるうちは、使っていきたい。
2つ目は、ビデオをレンタルしたことだ。ラインナップは、究極の家事魔法100、初めからわかる神威格闘術1000、基礎からわかるオーラのすべて147、歴史に学ぶ戦略戦術の極意130の4つだ。
料金は一律1KP/本で、他のサービスに比べてリーズナブルだ。さてどれから見るべきか。
ロラの声が天井から聞こえてきた。
「この『見るだけですべてを体得』シリーズは、ほんとに見るだけで、知識や技を習得することが出来るすんげービデオなんだけど、見れるのは、一日一本だけ。さらに学習効率を考えて、系統立てて順番に見ていく必要があっぺ」
「ロラさん、家事魔法って、本物の魔法ですか。ライフハックみたいなものじゃなくて」
「本物の魔法に決まっているべ。ライフハックってなんだべ」
「ライフハックのことは忘れてください」
ロラと改造された軽バンを見て、薄々は感じていたが、この世界には魔法がある。それもビデオを見るだけで、習得できるとは、なんとお得なことだ。一点だけ引っかかるのは、家事魔法というところだ。
「家事魔法ってどういう魔法ですか」
「家事に役立つ魔法に決まってんべ」
魔法は習得したいが、今の俺に必要かと言えば微妙だ。
歴史に学ぶ戦略戦術の極意130も、そういった意味で今の俺には必要なさそうだ
そうすると、初めからわかる神威格闘術1000か、基礎からわかるオーラのすべて147だが、どちらが今の俺に必要か
「神威格闘術とオーラのすべて、どちらがロラさんおすすめですか」
「そんなこと、自分できめろや。どっちを選んでも同じだっぺ」
きっとロラは、俺に強くなってほしい。そのロラが、どっちも同じだというなら、きっとどっちも今の俺に有用なのだろう。でもオーラ云々は、すこしうさんくさい。俺は、神威格闘術を見ることにした。
「バカ野郎、初めからわかる神威格闘術1000、購入ありがとう」
本当にありがとうと思っているのか不思議な感じだ。
「ほんとに見るだけで身につくの。つかなかったら返金してほしいんだけど」
「バカ野郎、もちろん、返金保証つきだ。ただし、身につかなかったらな。女神様がつくったビデオにそんな欠点があると思うか」
すっごい自信と信頼だが、まだそこまで俺は信用できていない。
「よく聞け。神威格闘術1000シリーズは、5つの練度、25の技、10の属性から構成されってっぺ」
「ちょっと待って。5x25は、125x10=1250じゃない」
「よおく聞け、属性は技との相性があっから、全部掛け算という訳にはいかねえのよ。練度は初心者、上級者、師範、達人、仙人ってぐあいに分かれてって。もちろん初心者からはじまんだ」
「初心者から上級者には、試験とかあるの」
「ねえよ。初心者のビデオを全部見終われば、自動的に上級者だ」
「それってどれくらい強いの」
「まあ、初心者編を全部見終われば、町のチンピラには絶対に負けねえぺ。まあ正確な説明はビデオを見ろ」
できることなら、徹夜しても一気に全部見たいところだ。よくよく考えてみれば、1日1本では全部見終わるのに3年以上かかる。どちらも俺に有用なら、オーラの方にすればよかったかもしれない。
もしも役に立ちそうにならなかったら、明日は、オーラの方を見てみよう。 俺は、そんな軽い気持ちで神威格闘術1000の視聴を開始した。
(お買い上げありがとうございます。このビデオは、神威格闘術を習得するために作成された特別なビデオです。まず最初に、神威格闘術の神髄をお話しましょう)
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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