2/16
免罪符は権力
王都アスリーンは王族専用の巨大な城とその周囲『カクア』と、貴族専用の高級住宅街『ザルア』、平民の住む『ズログ』がある。城には及ばないものの巨大な屋敷や公民館程度の大きさの屋敷、貴族の力の見せ合いの場とも言えるこの貴族専用住宅地ザルアに、似つかわしくない怒号が響き渡る。
殺してやる、捕らえろ、そんな次元ではなく、 もしそんなことを叫んでいれば普通貴族でも連行されお小言を受けることになるがこの場合それは適用されない。
なぜなら怒号を上げているのは憲兵団だからだ。
追いかけられるのはたった一人の青年、カロスだ。
しかし彼の事を捕まえられた事は無いうえ見た目からわかる青年という情報しか掴めていないのだ。流石に威信に関わると考えた憲兵団が仕事を放り投げて追いかけているのは彼からするととても愉快なことだろう。彼がなぜ捕まらないのか、それは憲兵団への妨害と彼の乗り物、そしてスキルによるものだ、あまりにも差が開くので馬に騎乗している者たちが驚愕している様子が彼の目にちらりとだけ映った。カロスは記憶を探る、次の一手を考えるためにも。