第五話 さて!特訓DA!その1 やっぱり低いよ環境水準
「・・・ショウ、まだ5時半だよね?」
「おう、そうだな。」
「ここは?」
「南門だな。」
「二人との集合時間は?」
「7時だな。」
「ショウ、どうして僕にはそんなに厳しいのおおおお!!!」
早くもラックが壊れた。まあ、これから強くなるんだ。早く壊れて治ってを繰り返して廃人としての快感を脳に刷り込ませてあげないとなぁ。
「ショウ、どうじて、どうして今日に限ってそんなに爽やかな笑顔なの、悪い顔って突っ込めないじゃん!どうじでえええ!!」
ラック、いいぞ、もっと壊れるんだ。それが修復されたとき、君は廃人に一歩近づくんだ!これは素敵なことなんだよ!フフフフ!
「俺の笑顔が爽やかな理由?それはね?純粋な笑顔だからだよ!」
「この人でなしぃぃぃ!!!人どころか鬼より鬼畜だよおおおお!!」
ラックがすごく泣きわめくなぁ、これは仕方ない。
「許せラック。これもお前のためなんだ。だけどラックがそんなにも辛いなら、残念ながらエルを強くすることはできない。そうなるとラックは卒業するのが難しくなると思う。俺たち二人で村に恩返ししたかったんだけど、ラックが無理なら仕方ないよな・・・。」
ちなみにこれは飴ではない。
「これからは俺一人で村に恩返しできるように頑張ろうと思うよ。ラックはラックで」
「待ってショウ!僕もやるっ!!やらせてっ!!頑張るがらあっ!!」
はい言質〜♪
「そうか!ラックもそう言ってくれて嬉しいよ!!頑張ろう!俺にとってラックが一番の幼馴染だから俺もラックと一緒に強くなりたいんだ!頑張ろうな!ラック!」
「うん!ごべんねぇショウゥ!僕が間違ってたよぉ!!」
この幼馴染、チョロいよな。このチョロさだったらいくらでも沼に引きずり込めるな。
単純にこのエルを水色の悪魔に育てるにはこの太陽が登ってすぐのタイミングが必要なのと、ラックに廃人精神を刷り込むので早めに連れ出したんだが・・・
・・・予定より早く叩き込めそうだな。
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朝7時、南門
ラックをほんの少しだけ教育し、エルのステ振りを終えた後に南門に向かうと、キョウとシャーリーは既に制服姿で待機していた。
「二人とも早いな、おはよう!」
「おはようさん!ショウ、そこのやつ、ラックくんやんな?どないしたん?絞られまくった雑巾みたいになっとるけど。」
「ん?これは世界の一端をちょろっと勉強しただけさ♪ラックも楽しかったよな?な?ラック?」
「うん、ぼく、たのしかった。ははは、後ベースロック3体で次はベースラビットを同量、はは、ははは。」
うん、ラックもとても楽しそうだ。いい光景だ。
「え、えっと、ショウさん、これは、絵的に大丈夫なんでしょうか・・・」
シャーリーが心配してるよ、ベクトルが30度ぐらいずれてるけど。
「ん?ああ、大丈夫、キョウとシャーリーさんはこうはならないから。」
「・・・あれやな、ショウの一番恐れるべき顔は悪い顔じゃなくてこの爽やかな笑顔っちゅーことだけはようわかったわ。」
「いや〜、そんなに信じてくれるなんて嬉しいなぁ。」
「ショウさん、信じてはいますが、私は限りなく黒い方向で信じちゃってます。」
「大丈夫大丈夫、合法だから白だよ〜。」
チートじゃないからセーフ。裏ステはれっきとした公式の仕様だ!
「それで?二人は考えてきた?」
「おう!考えてきたで!」
「はい、一応考えてはきましたけど・・・」
「とりあえず教えてくれる?うーん、じゃあシャーリーさんから」
「はい、一応スラちゃんのためにベーススライムの文献を調べました。そしたらベーススライムからの進化先にスライムキングと言うものとスライムエンペラーと言うものを見つけました。この二つが種族の最強種と言うことなので、このどちらかにしたいのですが、どちらにすればいいのか・・・」
なるほど、文献にもそのレベルか・・・しかし、方向性としては悪くないな。
「うーん、じゃあ質問だけど、シャーリーさんはスラちゃんで素早く相手を倒したいのか、相手の攻撃を後手で返したいのか希望はある?」
これは方針を決める上で絶対に必要なことだ。このモンスター育成は自由度が高いがゆえに育成が失敗すれば器用貧乏な中堅が出来上がってしまう。確かにそれは現環境ではトップを張れるだろう。しかし環境水準が上がれば途端に弱くなる。それでは勝てるものも勝てない。
「私自身がドジなので、多分スラちゃんが早くなったらついていけなくなっちゃうかも・・・」
「ふむふむ、他に何か希望はある?」
「これは私の我が儘なんですが、痛いのは嫌なので、なるべくスラちゃんを傷つけたくありません。」
その言葉の時だけ、少しだけだが、シャーリーの目に力が入った。
知ってるぞ。その目は相棒に希望の情熱を注ぐマイナー厨の勇ましい目だ。ならば俺もその目に応えねばなるまい。
「シャーリーさん、方針としては、2つある。」
そう言って昨日アホほど書き溜めたメモの内、ニ枚を取り出す。
「まずこっちが、分身を使い、相手をじわじわ追い詰めるスライムマザー系の育成計画。」
一枚目は、ベーススライムの派生先から更に亜種化を施し、派生させてから進化させる、完全に元の系譜からは外れるが、スライム本体が傷つかずに上手く行けば現実世界でも相手を嵌めゲー化させられる分身受け撒きスライムマザー系。
「そしてこっちが、圧倒的なVITで相手の攻撃を食らっても中々傷つかない上に、多種多様な技を駆使し、相手を狩り倒すスライムフォートレスの育成計画。」
二枚目は、ベーススライムを正統進化させ、スライムエンペラーまで育てた後、亜種化させ、進化させ、更に進化させた正統派ながらもスライムマザー系が嵌めで使いやすすぎるので、マイナー扱いをされているスライムフォートレス系。
「うーん、スラちゃんはどっちがいい?」
シャーリーのベーススライムのスラちゃんがうねうねと見てからこっち!と言わんばかりにスライムマザーの紙を触った。
・・・あれは触ったって言うのか?
「そしたら、こちらでお願いできますか?」
「わかった!任せとけ!」
俺的にはスライムフォートレス系がおすすめだけどな!それを強制するのは無粋ってやつだぜ!
「ところでショウ、アタシ亜種化って知らんのやけど、それなんなん?」
・・・やっぱりか。
まさか亜種化まで浸透していないとは、これは適応化とかその他諸々の条件とかも浸透してないかもなぁ・・・
「亜種化っていうのは、特定のアイテムや行動を満たして、亜種、いわゆる固有種みたいになるようなもんだよ。一応進化とは別の扱いだね。」
「それのメリットとデメリットは?」
「メリットは基本種から亜種に変わることで、ステータスが伸びたり、強力な進化先が増えることだね。デメリットは、亜種化すると、基本種の進化先は二度と選べなくなる。ってとこかな。」
「デメリットは派生とあんまり変わらんのやな。」
「まあ派生は基本種の分岐進化だしね、条件以外はそんなに変わんないよ。」
「相変わらずの知識やなぁ、ほんま何者なんか気になるわぁ。触れへんけどさぁ。」
「モンスター好きの田舎者だよ。」
「はいはい簡易説明どうも。」
キョウはもうそこの詮索は諦めたのかめちゃめちゃ軽く流す。これは、こいつ!早くもこの状況に慣れたか。
「それで?キョウは?」
安心していただろう!しかし君にも同じことを聞いたはずだぞ!
「アタシは、できるならベースメタルを龍種にしたい!・・・無理なんはわかってるけど・・・」
なるほど。
「できるぞ。」
まあ、できるからなぁ。というか、アレはめちゃめちゃ強いぞ。
・・・あれ?キョウ固まってる?
「キョウ、どうした?」
「あ、あんた、嘘ちゃうやろなぁ、嘘やったら針千本どころの話ちゃうで!?」
キョウが半狂乱のように俺の肩を力強く掴み、前後に物凄く酔う勢いで揺らす。
「そこは嘘つく所が見当たらないんだけど、どこで嘘を付けばいい?」
とりあえずそれの育成方針メモ出そう。そうしよう。これ以上は俺がリバースしちゃう。
「・・・これ、とりあえず方針メモな。」
「うん、すまんかったな、ショウ、揺らしすぎたわ・・・。」
「ああ、まあ、ちょっと気持ち悪いけど、まあイケる。大丈夫だ。」
俺がキョウに渡したのは、ベースメタルの進化先から適応化させ、進化をしてから亜種化して進化というクソめんどくさい育成ルートでしか辿り着けないメタル系統の龍種プリズムドラゴン系の育成ルートメモ
「ちなみに二人に言っとくと、そのメモがゴールじゃないからね?まだまだ先はあるけど、一応その段階が目的地だから。」
そう言うと、二人とも固まった。