第二話 召喚の儀その1 最弱固有種があいつ!?んなもんあり得るわけねえだろ!!
「〜〜で、あるからして〜」
ゲーム内チュートリアルの通り、寮に荷物を置いて、翌日に入学式で、今は校長先生のなが〜いお話である。
寮は二人部屋で、幼馴染が同性だった場合は相部屋となる。つまり俺のルームメイトはラックだ。
ちなみに幼馴染が異性だった場合、第二NPCと言う所謂『ルームメイトガチャ』が始まる。そこには幼馴染のキャラは含まれず、その他NPCから選ばれるが、当たり枠は少ない。
まあ俺からしたら別に同性のラックがいる以上は不便しない、ということだ。
今日はこの後ビックイベントがある。
初めてモンスターを仲間にする『召喚イベント』だ。
この世界のモンスターは大きく二種類に分けられる。
基礎のまっさらな状態から無限の可能性を発揮する「基本種」、そして特殊な方法でしか入手できない「固有種」の2つである。
召喚イベントで仲間になるモンスターは低確率で「固有種」が召喚される。
固有種には初期から強力な性能を誇るモンスターが沢山いる。恐らくラックはその固有種を引くだろう。
まあ俺がほしいのはあくまで「基本種」だけどな。
このゲームの醍醐味は育成、そして進化。膨大な進化先に細かい条件、それらを踏まえると固有種は今のところ必要ない。できればあいつかあいつ辺りが良いかな・・・
そんなことを考えていると、入学式が閉会のタイミングになっていた。いつの間にか校長のお話も終わってたみたいだ。思考による合法スキップができて助かる。
「これから召喚の儀を行います。召喚されるモンスターランクと試験の成績に基づいてクラス分けが行われます。上はS、その次がAで下がHです。がんばってください。」
まあ序列ってやつだな。固有種持ちは優先してSクラス行きだ。俺とラックはクラスが異なるんだろうな。
並んでいると、他の列で歓声が鳴った。
「うおおおおお!!タイダクンが出たぞおおお!!固有種最強だぁぁ!!!」
タイダクンか、固有種の中でも癖が強い種だな、進化先によってはめちゃめちゃ強くなるけど、その進化が難しいし、性能もピーキーなんだが、タイダクンが騒がれる環境って・・・
・・・って、は!?固有種最強!?あいつが!?そんな進化先あるのか!?嘘だろ!?
タイダクンは頑張ることが嫌いという設定の固有種で、固有アビリティにMPが半分を切ると、その数値に回復するまで動かなくなる『惰眠』がある。進化先の系統によって、よりピーキーな性能のニート系統か、多少性能は落ちるが、固有アビリティが変わり、立ち回りに幅が出るリーマン系統のどちらかに分かれる。
ちなみに俺ならどちらも育てた経験があるので、問題はないが、どちらかといえばリーマン系統だな。一つ面白い使い方ができるやつがいるんだよな。
「ショウ、また悪い顔してるよ。」
ラックにぐさっと言われてしまった。悪い顔がデフォルトなんだよ!すまんな!!
「次!ラック、召喚の儀に応じよ!」
「はい!ショウ、頑張ってくるよ。」
「ああ、良いの引けよ!ラック!」
「引くって、そんなおみくじみたいな・・・」
そう言って苦笑いしながらラックは魔法陣の前に立った。
おみくじだよ!?故郷の村も君自身もおみくじで引いたようなもんだよ!?
これがカルチャーショックか・・・
まあ、ラックのことだから下手なもんは引かんだろ。
幼馴染のNPCが召喚するモンスターは確定固有種だ。
その中でもラックは6種類からの確定ピックアップみたいなものだ。
固有種の中にはラビット系統とマウス系統、低確率でスクワール系統もある。
ラビットとマウスは主に運気を上昇するアビリティ持ちで、野生のモンスターからのドロップアイテムが増えたり、レアドロをかなり引きやすくなるが、戦闘能力は皆無に近く、最初はドロップ品でワイワイできるが、進化系統を選ぶときに運か強さかどちらかを取らなければならないから、悩みどころの多いピーキー固有種である。
ちなみにスクワール系統ならどちらも当たりだ、ハッピースクワールならパンピースクワール系統に進化させれば優秀なバフやデバフを沢山覚える、だが俺が欲しいのはもう一匹のスクワール固有種だ。
正直固有種なんて進化させた特定の基本種を導魔学園領にある『モンスターコンパ場』でハッスルさせりゃ産まれるんだよな。進化に加えてこれもトプモンのモンスターが多種に渡る理由だ。ちなみにパターンが多岐にわたるが俺はすべて把握している。問題など存在しない。
ちなみにラックに俺が求めるもう一匹のスクワール種は、SNSや掲示板で『水色の悪魔』と言われていた。PvPの2on2ルールではトップランカーがこぞって愛用していたやばいやつだ。
「ショウ!召喚できたよ!」
そんなことを考えているとラックが召喚を終えたようだ。
「ラック!!おまっ!それやばいぞ!!!」
ラック!!お前って奴は!!引きやがったな!!水色の悪魔を!!
「はぁ・・・固有種最弱のエレキスクワールですね・・・。まぁ卒業できるように頑張ってくださいね・・・」
「は?」
召喚担当の先生がそんなことを言った。何を言ってるんだ??固有種最弱?エレキスクワールが??無知にも程があるぞ!?!?
「そんな感じで、多分固有種でも僕はSには行けないなあ・・・。ショウには良いめぐり逢いがありますように祈ってるね!」
「ちょ、ちょっと待てラック!エレキスクワールが最弱固有種って一体どういうことだよ!?」
「・・・え?だってエレキスクワールは攻撃力が低くて、とてもじゃないけどバトルで出せるようなモンスターじゃないよ。」
は? こいつが出せないくらい強いモンスターがはびこる環境なんてあるわけないだろ!?
「・・・俺には全然わからないけど、とりあえず引いてくるわ。」
まあ俺の場合はガチャではなく確定方法使うんだけどな。