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フェリクスside

宜しくお願いします。


確認したい事があってカミルを探していると、中庭に面したテラスにカミルとシーナとその友人が居るのが見えた。聞こえてきた会話の内容に、咄嗟に木の陰に隠れそっと覗く。



「シーナ嬢はフェリクスのこと、どう思ってる?」


「……お慕い、しております」



(シーナが俺を…?本当に…?)



俯き恥ずかしそうに答える姿が、ヤバい、顔がニヤける。口元に手をあてるも、その下はだらしなく緩んでるのが分かる。



(嫌われていなかった…)



嬉しいし、ホッとした。今までのシーナの態度はやはり何か事情があったのだ。しかし、その後に続いた言葉に一気に心が凍りつく。



「だから是非、愛する方と幸せになってその姿をーーーってあああっ!!」


「シーナ!!落ち着いて!」



……そうか。


婚約破棄を告げた時、俺は理由を伝えなかった。だからシーナは俺に他に好きな人がいると思い込んでいるのか。



「じゃあさ、ーーーーー?」


「○#▼※△☆€▲※◎★◇●!!!」



バンっ!

バンバンバン!



カミルが小声で何かを伝えた途端、シーナは何事かを叫び、テーブルに突っ伏し、台を叩き出した。



(あれがシーナ!?)



あれほど感情を露わにしている姿は初めて見た。その後も、友人に泣きついたり驚いたり笑いかけたりと表情がコロコロ変わる。まるであの手紙の顔の絵のように。








「あ〜っ、フェリクスやっと見つけたー!」



(ちっ、時間切れか)



呼びかけられた声に、本人には気付かれないよう心の奥底からのため息を吐く。そして緩んだ顔を引き締め無表情で振り返る。少し離れた所には今日のお守り…ゴホン、護衛役のロードリックが仏頂面で立っている。



「エレナ様、こんな所でどうしました?」


「生徒会室で待ってても誰も来ないんだもん。つまんないから探しに来ちゃった」


「そうでしたか、お待たせして申し訳ありません。では一緒に戻りましょう」



手を差し出しエスコートする。そうしないと歩いてくれないから。


感情を露わにする今のシーナとこうやって並んで歩けたら、どんなに素晴らしいだろう。彼女のまだ見ぬ表情を引き出してみたい。怒った顔も、笑った顔も、真剣な顔も、全て俺だけに見せてくれたらいいのに。



(どうして俺は今、違う女の手を…)



そもそもこれは王太子の役目だ。なのに暫く外交や勉強で忙しいからと生徒会メンバーに押し付けてきた。王太子の命令だ。どんなに嫌でも俺らは従うしかない。


近い未来、王太子妃となるかもしれない女。護衛も世話も丁寧にやる。だけど勘違いさせないように、決して気を許さずに。万が一にも好かれたら終わりだ。特に俺とロードリックは公爵家。王家の遠くても縁者だ。王太子の代わりに女の人生ごと押し付けられる可能性は大いにある。そんな事になったらたまったもんじゃない。








「ねぇ、さっきカミルと一緒に居たのって誰?」



生徒会室に向かいながら、エレナ様が口を開く。



(気付かれてたのか…)



「セフチノ王国の留学生と、トランメル侯爵令嬢ですよ」


「トランメル…って、フェリクスの婚約者じゃないの?声掛けなくて良かったの?」


「ええ、まあ」


「それってなんか冷たいねー。あ、そっか。好きじゃないんだ」


「はい?」


「だってカミルと楽しげにしてても平気そうだったじゃん?私ならヤキモチ妬いちゃうなー。それにもしカミルに取られたらって心配になると思うー。


フェリクスは望んだ婚約じゃなかったんだね〜」


「え、は?」



エレナ様は爆弾を落とすだけ落として「ロードリック〜!」と言って後ろの男に腕を絡ませている。被害者(ソイツ)は物凄い形相で訴えてくるけど、悪い、今は無理だ。



さっき見たテラスでの3人の姿を思い出す。確かに盛り上がっていてとても楽しそうだった。



(シーナと…カミルが…?)



今まで全く考えもしなかった事を想像させられて、心が思い切り抉られた。

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