協力者
お待たせしました。
宜しくお願いします。
ーーーモブはモブらしく、メインストーリーに影響を与えないようひっそりとーーー
「って、ええっ!何故ここにカミル様が!?」
「ほーらーねー、だから言ったじゃない、絶対現れるって!ストーカーなんだから来るに決まってるでしょ」
「えっ、ストーカーって僕!?ちょ、それは誤解だよ!って、あああ、シーナ嬢までそんなゴミを見るような目を向けないで〜」
放課後の中庭に面した食堂のテラス席。他の生徒はもう殆ど帰った後で、私たちしか居ない。
今日になってもマヤの怒りは収まらず、カミル様誘き出し作戦を決行した。否、してしまった。なるべく攻略対象とは関わらずにいたいから、それはそれは必死に止めたんだけど…
「では何故、この時間にここに居るのです!?何故、令嬢の話を盗み聞きしたのです!?何故、教科書の在処を知っていたのですかぁあ"あ"ん!?」
「ひいっ!それは、その…」
ご覧の通り、感情的になったマヤは恐ろしすぎてもう誰にも止められない。マヤの後ろにお不動さまが見えるような…
「ほ、本当に、話はトイレの前で偶然聞こえてしまっただけで、教科書は頼まれていた事案の調査中に偶然目撃しただけで、今ここに居るのはシーナ嬢に用があっただけなんだよ」
「ふんっ、そんな都合のいい事ばかり起こるもんですかねー?」
ポリポリと頬を掻く苦笑いのカミル様と、鬼の形相のマヤ。まるで旦那を尻に敷く鬼嫁のよう。
…って、あら?あららら?
この2人、意外とお似合いじゃない!?ゲームでは絶対に描かれない攻略対象とモブの恋。え、ヤダ、なにそれ面白そう!妄想が暴走しちゃう!
でも、残念ながらそれは無いのよね。この世界がスペシャルルートならカミル様だってヒロインと…
お似合いなのに…はぁ残念だわ、と呟いた独り言をマヤは聞き逃さなかった。
「シーナ、変なこと言わないで!ストーカーなんて願い下げよ!」
「僕ストーカー決定なの!?しかも求愛したわけでも無いのに振られた雰囲気なのはどうして!?」
おかしいな?ひっそりと生きるつもりなのに、ぎゃいぎゃい言い争う2人に、オロオロしてしまう。
カミル様だって(まさか本性がストーカーとは思わなかったけど…)朝のあの廊下を歩けば歓声が上がる程の人気者なのだ。人気が無いとはいえ、まだ残っている生徒に見られたら大変だ。さっさと用事を済ませて帰ろう。
「カミル様、このことは他言致しませんのでご安心下さい」
「いやいや、だからね、違うからね?我がハウストマン侯爵家に誓ってもいいよ」
「そんな大仰な。それより用があったのではないですか?」
「ああ、そうだった〜。シーナ嬢があがり症だっていう話が聞こえてしまってからずっと考えてたんだ。僕に治療の手伝いをさせてもらえないかな?」
「え?」
「は?」
「いえ、結構です」
「何を企んでるの!?」
「……何だろう、君たち面白いね。嫌われてるのがとても伝わってくるよ、うん」
昨日はあんなに胡散臭い笑い顔だったのに、今日は終始苦笑いのカミル様。目的は何なのか。
「シーナ嬢はフェリクスのこと、どう思ってる?」