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第95話 母からの衝撃の言葉

「お母様…い、一体何を言ってるの…?」


心臓がドキドキしてきた。

すると受話器越しから母の言葉が聞こえてきた。


『つい最近のことなのだけど…お父様が取引先の方が入院されたので病院にお見舞いに行ったのよ。そうしたら…フィリップを見たのですって』


「え?!」


『フィリップは…青白い顔で車椅子に乗せられて看護婦さんが押して診察室に入っていく姿を見たそうよ?』


「…っ!」


そ、そんな…まさかお父様がフィリップを病院で見たなんて…っ!


『帰宅してきたお父様からその話を聞かされた時は本当に驚いたわ。フィリップは今にも倒れてしまいそうな青白い顔で、かなり具合が悪そうに見えたそうよ?…尤も車椅子に乗せられていたそうだから、体調は相当悪かったのだろうと思うけど…』


「…」


フィリップは…私の前で気丈に振る舞っているだけで…本当はそうとう具合が悪いのだろうか…?


『エルザ、教えてちょうだい。私達に何か隠し事があるんじゃないの?それとも…本当に何も知らないの?フィリップのことを…。私もお父様もエルザのことが心配でたまらないのよ』


母の必死の訴えが私の胸を抉ってくる。


…どうしよう。

もう、これ以上…両親に隠しておくことは無理なのかもしれない。

ごめんなさい、フィリップ。


私は母にフィリップの病気のこと白状することにした。


「あのね…実は、フィリップは…胃癌に侵されているの。…もうお医者様からは1年は持たないと言われているわ…」


『な、何ですって…っ?!そんな…まさか…っ!あ…でも言われてみれば…』


母は何か思い出したのだろうか?


「お母様?ひょっとして…フィリップのことで何か心当たりがあるの?


『え、ええ…。ちょっと思い出したことがあって…ローズとフィリップの婚約が決定して暫く断ってから…ローズが1人、部屋の中で泣いていたことがあったのよ。可愛そうなフィリップ…と言っていたわ…。あの時は何のことか分からなかったし、盗み見をしているような気持ちになってしまって何も聞けなかったのよ』


「そ、そうだったの…?」


お姉さまが可愛そうなフィリップと言っていた…。

きっとそれはフィリップの病気のことを口にしていたのだろう。


「お姉さまは…フィリップの病気のことを…知っていたのよ…」


『エルザ、本当に…フィリップはあと1年も持たないと言われているの?』


「え、ええ…そうなの…」


『それならどうするの?子供が産まれて…フィリップが亡くなった後は?』


「え?」


まさに私が今考えていることと同じことを母が口にした。


「そ、それは…」


今、考えている最中で…。

そう、母に伝えようとしていた矢先…母の口から思ってもいなかった言葉が飛び出してきた。



『当然アンバー家を出て、この家に戻ってくるのよね?子供も一緒に。あの家とは縁を切るのでしょう?』


「え…?」


私は母の言葉に顔が青ざめていくのが分かった―。

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