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第52話 朝食の席で

 翌朝―


いつものように6時に起きると、部屋にはラベンダー柄の天井が見える。


「すごい…。天井の壁紙もラベンダー柄なんて…」


ゆっくり身体を起こし、改めて部屋を見渡す。淡い上品な色の薄紫色のインテリア。私の大好きなラベンダーの柄…。


「フフ…。こんな素敵な部屋を貰えるなんて…私は幸せ者だわ」


足元に置かれた室内履きに足を通すとクローゼットに向かい、早速私は朝の支度を始めた―。




****


 朝食の時間は午前7時。


ダイニングルームに向かうと既にセシルがテーブルの席に着いていた。


「おはよう、エルザ」


「おはよう、セシル。驚いたわ、もうダイニングルームに来ていたのね?」


椅子を引いて着席すると、すぐにデイブが現れた。


「おはようございます、セシル様。エルザ様」


「ああ、おはよう」


「おはよう、デイブ。今朝は貴方が給仕なのね?」


「はい、宜しくお願い致します」


デイブは会釈すると、次々と朝食をテーブルの上に並べていく。オムレツにスープ。スコーンの生クリーム添えにサラダ。ヨーグルト…。どれもが普段から私が食してい料理ばかりだった。


これも…フィリップの計らいなのだろうか?


「へ〜…スコーンなんて珍しいな。でも美味しそうだ」


セシルは何処か嬉しそうだった。全ての料理を並べたデイブに私は声を掛けた。


「ありがとうって…機会があったら告げておいて」


フィリップに…。


「…はい、かしこまりました」


デイブは少しの間の後、返事をした。もしかすると私の意図に気付いてくれたのかも知れない。


「ごゆっくりどうぞ」


デイブはお辞儀をすると、ダイニングルームを出ていった。


「よし、それじゃ食べようか?」


「ええ、そうね」


そして私とセシルの朝食が始まった…。




「なるほど…スコーンて滅多に食べたことが無かったけど…生クリームとすごく良く合うんだんな」


「そうでしょう?ブライトン家では朝食メニューの定番だったのよ」


「そうなのか。エルザの実家では朝食にスコーンを食べていたのか。でも美味しいな。…今度からここで朝食を食べることにしようかな」


「え…?セシル?」


冗談とも本気とも取れない言葉に思わずセシルをじっとみた。


「冗談だよ、本気にするなって。新婚家庭の邪魔をするほど野暮じゃないさ」


セシルが笑いながら言う。


「新婚家庭…」


本当に私とフィリップは新婚家庭と言えるのだろうか?会話だって殆ど無いし、部屋は別々。それに私はフィリップの自室の場所すら知らないのに?


「何だ?神妙そうな顔して。何か悩み事でもあるのか?俺でよければ相談に乗るぞ?」


セシルはそう言うけれども…相談なんて出来るはずは無かった。だから私は嘘をつく。


「いいえ、こんなに幸せなのに何も悩みなんか無いわ。でも…気にかけてくれてありがとう」


「当然だろう?第一エルザは俺にとって…え?」


何故か一瞬セシルの顔が青ざめた。


「どうしたの?セシル?」


「に、兄さん…」


セシルの視線は私を通り越して遠くを見ている。


「え?兄さんて…?」


驚いて振り向くと、そこにはフィリップが扉に寄りかかるようにして立ち、こちらをじっと見つめていた―。

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