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第51話 私の決意

「それじゃぁ、エルザ。また明日な」


私を部屋の前まで送ってくれたセシルがにこやかに手を振る。


「ええ。ところでセシルは今夜この離れに泊まるの?」


「ああ、そうしようかと思っている。どうせ客室はたくさん余っているからな。両親もまだ戻っては来ないし、兄さんもいつ戻るか分からないしな」


「そう…。分かったわ、それじゃまた明日ね」


「おやすみ」


そして私とセシルはその場で別れた―。




****



 22時―



 クララが私の部屋にベッドメイキングの為に訪れていた。


「クララ、ありがとう」


「え?何がですか?」


クララが振り向き、私を見た。


「私の為にこの部屋を用意してくれた事よ。こんな素敵な部屋…本当に嬉しいわ」


本を閉じるとクララに声を掛けた。


「いいえ…そんな事は…」


クララは一度俯き、そして意を決したように口を開いた。


「あの…セシル様とエルザ様は…そ、その…」


「?」


クララの言葉に思わず首を傾げる。


「お2人は…どのような御関係なのでしょうか…?」


「え…?」


私とセシルの関係…?


「あ、も、申し訳ございませんっ!今の話…どうか忘れて下さいっ!ご無礼をどうぞお許し下さい!」


クララは慌てて頭を下げてきた。


「クララ…どうか頭を上げて頂戴?」


「エルザ様…」


「私とセシルは幼馴染、それだけの関係よ」


「え…?そ、そうなのですか?」


「ええ。だから何も心配するようなことは無いわ」


だって、私の好きな人は子供の頃からずっと変わらずフィリップただ1人。

でもそのことはここでは言えない。…言えるはずはなかった。

フィリップに冷たい態度を取られている事をこの離れの使用人達…恐らく全員に知られているのに、彼のことが好きだとは言えなかった。


「そうですか、それを聞いて安心しました」


クララはホッとしたかのような笑みを浮かべた。


「それではエルザ様。おやすみなさいませ」


ベッドメイキングを終えたクララが私に挨拶してきた。


「ええ、ありがとう。おやすみなさい」


クララは頭を下げると部屋を出ていった。



パタン…


扉が閉じられると、私はライティングデスクに向かった。本日の日記を付けるために。



「あ…」


日記の入った引き出しを開けると、そこにフィリップから預けられた離婚届が目に入った。


「…この離婚届…別の場所にしまっておいたほうが良さそうね…」


日記を取り出す度に、嫌でも離婚届が目に入ってしまう。


以前までの私はフィリップに嫌われていると思っていたから、彼が離婚を要求してくればすぐに応じざるを得ないと考えていた。

だからいつでも目に触れる場所に離婚届をしまっておいたのだが…。


ここ最近になって私の考えは変わってきた。


それは私に対するフィリップの気遣いが垣間見えてきたこと。

私の為に新しく女医の主治医を雇ってくれたこと、私の好きな料理を用意してくれたこと、そしてこのラベンダーの部屋…。


「フィリップ…自惚れでなければ…少しは私の事を思ってくれていると考えてもいいのよね…?」


決めた。


フィリップが帰ってきたら、彼と話をしよう。嫌がられてしまうけれども…もうこれ以上何も分からないままではいたくない。


私は決意を固め…ベッドに入った。




 そして翌日…。


事態は大きく動くことになる―。



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