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第41話 穏やかな時間

 22時―


 家族水入らずの食事が終わり、私は部屋に戻っていた。


「美味しい…」


入浴後の一時。本を片手にお気に入りのハーブティーをゆっくり飲みながら、食事で交わした会話の内容を思い出していた。


『請負先の家具職人にラベンダー模様の家具をフィリップ様自身がオーダーされたのだよ』


『エルザに知られると照れくさくて恥ずかしいからだと話しておられたよ。本当にあの方は愛情深い方だね』


「分からない…。私にはフィリップが何を考えているのか分からないわ…」


思わずポツリと言葉が口をついて出てくる。


結婚直後からのフィリップの冷たい態度。サイン済みの離婚届を預けられ、本館には行かないように釘を刺された。与えられた部屋は姉の為に用意されていた薔薇の部屋。


『僕は…君の愛なんていらないないのだから』


フィリップの拒絶の言葉が蘇ってくる。


それなのに何故?

わざわざ家具職人にラベンダー柄の家具をオーダーして用意してくれたのだろう?


「私は…まだフィリップに…期待してもいいのかしら…」


フィリップは今頃何をしているのだろう…?


「考えても仕方ないわね…。でもアンバー家に戻ったら、もう少しフィリップに歩み寄ってみようかしら?嫌がられるかもしれないけれど…それでもやっぱり私は彼の事が好きだから…」


読みかけのページに栞を挟むと私は本を閉じた。そして部屋の明かりを消すとベッドに潜り込んだ。


約1週間ぶりの私のベッド…。


今夜は久しぶりに安眠出来そうな気がする…。


「おやすみなさい、フィリップ…」


私はフィリップの事を思い…眠りに就いた―。




****



 翌朝―


久しぶりにスッキリした寝覚めの良い朝を迎えた。胃の痛みも今は完全に落ち着いている。


「やっぱり、実家に戻ってこれたから心身共にリラックス出来たのかしら…」


ここでは何にも気を使う必要は無い。…だからだろうか?



「…着替えましょう」


私はベッド下に置いた室内履きに足を通した―。





午前7時―


「おはようございます、お父様、お母様」


白いブラウスにラベンダーカラーのカーディガンとロングスカートという出で立ちで私はダイニングルームテーブルに着いていた両親に朝の挨拶をした。

テーブルの上には既に朝食が用意されていた。

デニッシュにミルク、サラダにポーチドエッグにヨーグルト。

我が家のいつもの定番メニューだった。



「おはよう、エルザ」

「よく眠れたかしら?」


父と母が交互に声を掛けてきた。


「ええ、昨夜は22時過ぎには眠ってしまったわ。お陰で今朝は体調が良いみたいなの」


そして着席すると母が言った。


「そうね、今朝は昨日に比べると随分顔色がいいみたいだわ」


「うん、確かにな。体調がだいぶ良くなったみたいで安心したよ。さて、では頂こうか?」


「はい」


「エルザ、どう?食べられそう?」


母が気遣う様に声を掛けてきた。


「ええ、今朝は胃の調子も良いみたいだし食べられそうだわ」


こうして、家族団欒の穏やかな朝は過ぎていく―。





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