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第174話 セシルからの話

その後、私達は世間話をしながら食事を進めた。


私は途中、席でルークが目を覚ましてぐずったので途中退席をさせてもらった。


おむつ交換と授乳を済ませてダイニングルームに戻ると、義父母の姿が見えない。


「あら?お義父様とお義母様はどうされたの?」


1人、ダイニングルームに残ったセシルに尋ねた。


「父も母も食事が終わったから部屋に戻ったよ、俺はエルザに話があったからここに残っていたんだ」


「まぁ、そうだったのね」


時計を見ると席を外してから30分以上が経過していた。


「こんなに時間が経過していたのね…気付かなかったわ。ごめんなさいセシル。貴方の事待たせてしまって」


「気にすること無いって。赤ん坊の世話は手がかかるからな。それでルークは眠ったのか?」


セシルが腕の中のルークに視線を送る。


「ええ。よく眠っているわ」


「そうか……寝顔見せてもらえるか?」


「いいわよ」


ルークを抱いたままセシルの側によると、眠っているルークを見せて上げた。


「うん……。可愛いな。腕がこんなんじゃなければ抱いてみたかったな」


セシルは包帯で巻かれた両手を私に見せると苦笑いしてきた。


「……腕が治れば抱くことが出来るわよ」


そう、ルークは貴方の子供では無いけれども血は繋がっているのだから……。


「うん、そうだよな。それで、実はそのことについてなんだけど…」


「何?」


するとセシルは一瞬躊躇ったように俯き……顔を上げた。


「やっぱり、食事は毎回エルザとルークの顔を見ながら一緒に取りたいんだ。だから俺も離れに移ることにしたよ。離れの使用人の人数が足りないのは分かってる。そこで本館の使用人を何人か移動させることに決めたんだ。部屋もエルザの隣の部屋に住むことにした。もう今夜からそこで暮らそうと思ってね。実は以前から考えていて…既に部屋の用意は出来ているんだ」


「え……?」


部屋の準備は出来ている?

以前から用意してあった?


それらの話は私に取っては全く寝耳に水だった。


「え…?そ、そうだったのね?」


戸惑う私の姿が気になったのか、セシルが悲しげな顔で尋ねてきた。


「エルザ……。ひょっとして迷惑だったか?ルークの世話で大変なのは知っている。だからお前に迷惑を掛ける気は一切無いよ。ただ…少しでも長く一緒にいたいんだ。

今の俺はこんな身体だし……本当に元通りの身体に戻るのかも…不安なんだよ。記憶のこともそうだし」


「セシル……」


セシルは真剣な表情で私を見つめてくる。

彼は私を妻だと思っているのだから、彼にしてみればこの訴えは当然のものなのだろう。


記憶を失う前のセシルは私に色々良くしてくれていた。

そのことを考えると無下にすることは出来なかった。


「ええ、分かったわ。セシル」


「本当か?ありがとう。それじゃ、早速離れに戻ろう」


セシルの顔には安堵の笑みが浮かんでいた――。

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