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第156話 スイートルームでの会話

 義父母は私たちをホテルのスイートルームに案内すると、今後のことについて説明してくれた。


この部屋は念のために1カ月借りていると言う事。 

そしてセシルの入院している病室を今は個室だけれども、明日は特別個室に変えてもらうということ。

その特別個室には病室の他にベッドルームがあるので、ルークを病室に連れて行っても大丈夫だということを伝えるとすぐに義父母はいそいそと部屋を出て行った。



**


「本当にこんなに素敵な部屋を用意して貰って良かったのかしら‥‥。何だか申し訳ない気持ちになってしまうわ」


あまりにも立派な室内なので、何だか気後れしてしまう。

広々とした部屋に、高い天井には豪華なシャンデリア。床に敷かれた重厚そうな毛足の長いカーペット。


室内にはダブルサイズのベッドが2つもついている。

他に設備として、バスルームにシャワールーム迄もがついていた。


感心して部屋の様子を見渡していると、母はにべもなく言った。


「何を言っているの?別に申し訳なく思う必要は少しも無いわよ?何しろこれからあなたはセシルが目を覚ますまでは毎日あの病室に通わなければならないのよ?しかも何時間も」


母の口調はどこか苛立ちを含んでいた。


「お母様……」


「大体、あの方たちは昔から強引で……フィリップとローズの婚約だって無理やり結ばせて……」


その時母は私の視線に気づいたのか、慌てて口を閉ざし…次に謝ってきた。


「ごめんなさい、エルザ。別に私は貴女を傷つけるつもりで言ったのではないのよ?」


「ええ、分かっているわ。私の為を思って言ってくれているのでしょう?だけど私なら大丈夫よ?私は自分でセシルの病室に付き添うことを選んだのだから。それよりおお母様こそ大丈夫だったの?お父様、驚いていたわよ?私と一緒にホテルに滞在することを知って」


「いいのよ。屋敷のことは家政婦さん達に任せればいいことだし……。セシルの病室に付き添いながら、ルークのお世話をするにはエルザ1人では無理でしょう?」


「ええ…そうね…」


義父母にはセシルの病室にルークを連れて行っても大丈夫だと言われていたけれども、やはり何時間もルークを病院においておくわけにはいかない。そうなるとルークの面倒は母の手が必要だ。


明日からは毎日私は病室に付き添っていなければならない。

そこで、母と取り決めをした。

ルークが起きている間は病室で過ごさせ、授乳とおむつ交換が終わったら母にホテルに連れ帰って貰うことにしたのだ。



その後、明日から病院に付き添わなければならないのだから今日はゆっくり休んだほうがいいと母に言われた私は夕食の後は早々に休ませてもらうことにした。



****


 夜――


ルークと同じベッドで添い寝をしながら、私は思った。


どうか、セシルの目が早く冷めますように…と。




そして私の願いが通じたのか、セシルはすぐに目を覚ますことになる。


それがまた予想外の新たな問題を引き起こすことになるとは、この時の私は…いえ、私達は誰一人として知る由は無かった――。







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