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第151話 突然の涙

「あの…こちらにエルザ様はいらしておりますか?」


青ざめた顔のコレット令嬢が義母に尋ねている。


「はい、私ならここにおります」


ルークを胸に抱いたまま、私は返事をした。


「まぁ…エルザ様。良かった‥…お会いできて。あの…2人だけでお話したいことがるのですが…宜しいでしょうか?」


「え、ええ‥‥あの、席を外しても大丈夫ですか?」


コレット令嬢に声を掛けられ、私は義母と母を交互に見つめた。


「ええ、大丈夫よ。エルザ」

「そうね。いいわよ」


母と義母が頷く。


「それではルークをお願い」


そこで私は眠っているルークを母に託すと、コレット令嬢と病室を後にした。



病室を出ると、すぐにコレット令嬢が話しかけて来た。


「この病院内にカフェテリアがあります。そこでお話をさせて頂いても宜しいでしょうか?」


コレット令嬢は以前よりも随分腰の低い、丁寧な話し方で語りかけてくる。その様子が少し不思議だったけれども、私は返事をした。


「はい、大丈夫です」


「では参りましょう」


そして私達は病院に併設されたカフェテリアへ向かった――。



****


 カフェテリアは1階の日当たりのよい南棟にあった。

来店客はあまり多くなく、大きな窓からは病院内の中庭が良く見える。


「宜しければ窓際の席に座ってお話しませんか?日当たりも良いですし」


「ええ、そうですね」


コレット令嬢の提案に頷き、私達は窓際の席に移動した。



「いらっしゃいませ。こちらがメニューになります」


着席すると、すぐにウェイターがメニューを持ってきたので私とコレット令嬢は受け取った。


「ありがとう」

「ありがとうございます」


コレット令嬢の後に私もお礼を述べると、「ごゆっくりどうぞ」と言って、去って行くウェイター。


「エルザ様は何にしますか?」


メニュー表を広げたコレット令嬢。


「そうですね‥‥。ではアプリコットティーにします」


「では、私も同じのにしますね」



コレット令嬢がサッと手を上げると、すぐにウェイターがやってきた。


「ご注文の品はお決まりでしょうか?」


「ええ、アプリコットティーを2つお願いします」


「かしこまりました」


コレット令嬢の注文に頭を下げて去って行くウェイター。

するとすぐに私に話しかけて来た。


「エルザ様が先ほど抱いていた赤ちゃんがフィリップ様との間に生まれたお子さんですね?確か先ほど、名前を言っておられましたね?」


「はい、ルークと言います」


「ルーク‥‥とても素敵なお名前ですね?それにとても可愛らしかったですし」


「はい、ルークは私の宝物です」


やはり誰かから子供のことを尋ねられると嬉しい。


「宝物ですか‥‥羨ましいです‥‥でも、私には‥‥」


悲し気に目を伏せるコレット令嬢。


「コレット様?」


様子がおかしいコレット令嬢に声を掛けた。


すると…‥。


「ご、ごめんなさい‥‥エルザ様…」


突然コレット令嬢の目に大粒の涙が浮かんだ――。



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