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第102話 後始末

 セシルに支えられながらフィリップは馬車に乗り込み、私もセシルの手を借りて馬車に乗った。


「エルザ…椅子の上にあるバスケットの蓋を開けて貰えるかな…?」


フィリップは息も絶え絶えに声を掛けてきた。


「ええ、分かったわ」


椅子の上に置かれたバスケットを開くと、中には吸い飲みと薬が入っていた。セシルは事前に薬を用意していたのだ。

急いで薬包を広げると目を閉じて痛みに耐えているフィリップに声を掛けた。


「フィリップ、薬よ。口を開けて?」


「うん…」


フィリップは薬を口に含むと、私はすぐに吸い飲みをあてがった。


喉を鳴らしフィリップは薬を飲み込むと息を吐いた。


「離れに着いたらすぐに横にさせたほうがいい」


セシルが私に声を掛けてきた。


「ええ、そうね…」


私は返事をしながら、馬車の椅子に横たわるフィリップの髪にそっと触れた―。




****



 離れに到着すると、チャールズさんとロビンが駆け寄ってきた。

ロビンは車椅子を押している。


「フィリップ様っ!大丈夫ですかっ?!」


チャールズさんはフィリップに声を掛けると、一緒に駆けつけてきたロビンに命じた。


「すぐにフィリップ様をお部屋にお運びするのだ」


「はい」


「それじゃ兄さんを頼む」


「かしこまりました」

「お任せ下さい」


セシルはチャールズさんとロビンにぐったりしているフィリップを託すと、2人は交互に返事をした。

そしてすぐにフィリップを車椅子に乗せると、2人はすぐに歩き去って行った。



「ありがとう、セシル。ここまで着いてきてくれて」


「当然の事をしたまでさ。ところでエルザ、俺は本館へ戻らないといけない。恐らく、両親はかなり混乱しているはずだからな」


「ええ、恐らくそうよね。…ごめんなさい、貴方には迷惑を掛けるわ」


「別にそんなこと気にしなくていいさ。エルザは何も悪くはないんだから」


「でも…」


「気にするなって。俺たち…家族だろう?」


セシルは私の頭を撫でた。


「ええ…そうよね?私達は家族よね?」


笑みを浮かべてセシルを見上げると何故か神妙な顔つきで私を見ている。


「どうしたの?セシル?」


「あ…エルザ…。もし…もしものことだけど…この先…俺が…」


しかし、セシルはそこで言葉を切ってしまった。


「セシル?」


一体セシルはどうしてしまったのだろう?


「いや、何でも無い。それじゃ俺はもう戻らないと。両親を宥めてこなくちゃならないからな」


「ごめんなさい、貴方に嫌な役目を押し付けてしまったようで」


「気にするなって。兄さんに…事前に色々頼まれていたからな。後処理は俺の役目だよ。そんなことよりエルザは兄さんの側にいてやってくれ。今…一番兄さんが必要としているのはエルザなんだから」


「ええ、分かったわ。それじゃあね、セシル」


「ああ」


セシルは短く返事をすると踵を返し、エントランスへ戻っていった。


私は彼が扉を開けて出ていく姿を見届けると、すぐにフィリップの元へと向った―。



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