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第99話 喧嘩腰の話し合い

「嫁いでから4ヶ月近く経ってようやく私達の元に挨拶に出てくるとはな…」


「待ちくたびれてしまったわ」


応接室に入るや否や、私達を待っていたお義父様とお義母様が鋭い言葉を投げつけてきた。


「はい…申し訳ございません」


俯いて頭を下げると、フィリップが私の右手を握りしめてきた。


「大丈夫だよ、エルザ。2人の言葉は気にすることはないからね?」


その握りしめる手は病に侵されている人の者とは思えない力強さで…それが私にはとても嬉しかった。


「フィリップ!」

「お前…何ということを!」


途端に2人の視線が険しくなった。


「エルザ、まずは座ろうか?」


フィリップが優しく声を掛けてくる。


「ええ」


彼に手を引かれ、私達はテーブルを挟んで義父母の向かい側のソファに腰を下ろした。


義父母は私とフィリップにずっと鋭い視線を投げつけていたが…やがてお義父様は忌々しそうに口を開いた。


「フィリップ…お前、どういうつもりだ。エルザと婚姻する前に我等と交わした約束を忘れたのか?」


「その話をまさかエルザの前でするつもりですか?」


フィリップは冷たい声で言い放つ。


「ああ、そうだ。お前は少しも言うことを聞かないし…それにどうやら約束も破っているようだからな…」


そして義父様は私を忌々しげな目で見つめてくる。


「…」


その視線が居た堪れず、思わず俯くとフィリップに手を握りしめられた。


「大丈夫だよ、エルザ。僕がついているから」


「フィリップ!その娘の手を離しなさいっ!」


お義母様が鋭い声を上げた。


「いいえ。離しません。エルザは僕の愛する妻ですから。あなた方から妻と…お腹の子供を守るのが僕のつとめですから」


ついにフィリップは私のお腹に子供がいることを伝えた。


「な、何だってっ?!」

「こ…子供ですってっ?!」


義父母は相当驚いたのか目を見開いた。


「ええ、当然でしょう?僕達は夫婦で…愛し合っているのですから当然のことです」


すると義父母は声を震わせて私を見た。


「そ、そんなまさか…。お前とローズは恋仲だったはずだろう…?」


「だ、だってお前はエルザの事は愛していないと言っていたじゃないの…」



「僕とローズが恋仲だったと勝手に勘違いされていたのは父さん達の方ですよ?僕達は一度も互いのことを恋愛対象として見たことはありませんでした。第一僕がずっと好きだった女性はエルザだったのだから。それなのに、あなた達はローズを僕の婚約者に選んだのでしょう?ローズと結婚しなければこの家を継がせないと言いましたよね?エルザの事を愛していないと言ったのは…あなた方から彼女を守る為です。僕がエルザに興味が無いと分かれば…嫌がらせをしてこないだろうと考えたからです」


フィリップはきっぱり言い切った。


「そ、それは確かに言ったが…だが、どう見てもエルザよりも社交的で明るいローズのほうがアンバー家の嫁として迎えるのにふさわしいだろう?!」


「そうよ!エルザは…ローズより見目も劣るし…社交的とは言い難いわ」


お義父様とお義母様の言葉は私を傷つけるには十分過ぎた。

それでも大丈夫。だって…今私の隣にはフィリップがいてくれるから。

今のうちだけは…。


「いい加減にして下さい。あなた方がどう思うかは関係ありません。僕が子供の頃からずっと好きだった女性はエルザなのです。この気持は変えられません」


「フィリップ…」


フィリップの言葉が嬉しく、涙が出そうになった。


「な、何て親不孝な息子なのだ…アンバー家を継げなくても良いのか?」


あろうことか、お義父様はフィリップを脅迫してきた。


「ええ、構いません。僕にはエルザと子供がいれば十分です。それに…僕はもう癌に侵されて…長くは生きることが出来ませんので、どのみちこの家の後を継ぐのは無理ですから」


「何っ?!」

「何ですってっ?!」


義父母が驚愕で目を見開いた―。

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