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第6話  この人の癖、わっかりやすいなぁ……


「没設定、まさかそんな伏兵が現れるなんて……」


 それも諜報員なんて設定、かなり初期に棄却したものだ。

 いっそ文章として残してあるかも怪しい。

 そんな代物が私の生きるこの世界に顕現してる、これはかなり怖い。


「マリンネスタ以外に影響しそうな没設定がなさそうなのは不幸中の幸いだけど……」


 少なくとも私がヘンテコ忍者を退けたのは気づかれたわけだし。

 絶対向こうも警戒するよね。


「うぅ……、念のためにって思って後先考えずに動き過ぎたかぁ!?

もっと慎重にやるべきだったか!?」


 いろいろ考えることが多すぎて頭がパンクしそうになる。

 というかもう面倒くさくなってきた。


「よし、……寝るか」


 明日のことは明日の私に任せましょ。

 







「うーん、今日の事は今日の私が頑張るつもりでいたけれど……」


 片道35分、場所は学園東寮。

 ここに住むのは特別に高貴な貴族ばかり。

 

「こーんにーちわーー」


 少し緊張した声でのお宅訪問、ほぼ顔パスな私はストレートに自室へと通される。


「折角の休み中なのにすみません、マリン様」


「構いませんわよ。

さぁ、寛いでくださいな」


 私には考えて紐解ける頭はない。

 ならば直接乗り込んで行くしかないのだ。


「わざわざ来たということは、大事な用なのでしょう?」


「そうなんですよ、実は昨日私の屋敷に不審者が出まして」


「ほぅ、それはどんな相手ですの?」


 マリンネスタは特に変わった様子もなく紅茶に手を付ける。


「んー、顔とかはよく見えなくて。

マリン様の方で不審者の情報とか、そういうの聞きません?」


「残念ですけれど、そういうのは聞いてませんわね」


 マリンネスタはショートケーキのイチゴを口に運び、軽く髪をかき上げる。


「そうですか、わかってるのは性別が女って事だけで、なんか情報があればなーって思ったんですけれど」


 今ので確信した。

 マリンネスタは嘘をつき、不審者の情報を持っている。

 私が撃退したのも、すでに小耳に入れてると見た。


「もしかしたらマリン様の家にもいるかもしれません、気を付けてください!」


「大丈夫、わたくしの住む寮のセキュリティーは万全。

不審者はおろか羽虫一匹通しませんわ」


 そう言いつつ、マリンネスタは髪をかき上げる。

 私の小説の備考欄、マリンネスタは嘘をつくとき髪をかき上げる癖がある。

 うーん、バッチリ当てはまってますね。


「ほかの人の家にも、そういう人がいたらいやだなー」


「まぁ、そうそういるもんじゃありませんわよ」


 まだ髪をかき上げる。


「マリン様は、私の家にまた不審者が現れると思いますか?」


「さすがに二度目は無いのではなくて?」


 まだまだ髪をかき上げる。


「そっかー、困ったなー」


「力になれなくて申し訳ありませんわ」


 懲りずに髪をかき上げる。

 美しいまでの嘘八百、大変有益な情報ありがとうございます。


「お邪魔しましたー」


 そそくさと退散する私。

 とりあえず今わかったのは、私の家には懲りずに諜報員が来るらしいってこと。

 さらには私の家以外にも諜報員を派遣してる。

 まぁ、その諜報員は学園と王子のそばで滞在してるんだけど。

 ほんとこんなの私が執筆してなきゃわかるわけないじゃん。


「どうしようかなぁ、少なくとも王子が転校するまでの一か月間は物語が進まないのよね」


 小説ではこの辺雑に描写したりして、

 ―――そして一か月後。

 とかなんとかやってしまったけれど、現実はそうもいかない。

 

「こんな板挟み状態で一か月、何にも進展ないとかありえるの?

いや無理でしょ!?」


 ルビアちゃんに大人しくいじめられてもらわない限り、どう立ち回ったってマリンネスタと敵対する。

 でもルビアちゃんが傷つくのを無視するなんて、そんなの私のメンタルが耐えられない。


「……説得するしかない、あのマリンネスタを」


 このままへーこらする三下キャラでいるのは簡単だ。

 そうすれば傷つかず、地位も安泰で楽しく暮らせる。

 

「でも、あんな可愛い女の子を犠牲にして食べるご飯は美味しいのか!? 否!!」


 ここは私の世界!

 私が生みだした物語!

 この世界に、バットエンドは認めない!!


「うっしゃー! やるぞぉ!!」


 私は溢れんばかりにやる気を漲らせ、学校での対決に備えるのだった。








 作戦に作戦を重ねた熟考の末、一夜が明ける。 


「わ゛ぁあああああっ、パールぢゃんだずげでぇーー!!」


 私の出した結論、友達に全力で泣きつく。


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