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リアリアリア 〜完璧リア充なのにトレチェリーなオレって・・・・・・〜  作者: ゴウゴ
第一章【彼女が俺に、ヒトの優しさを教えてくれた】
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3.キャンプ部ってビリーブートザキャンプするんじゃないからね②

 マーガレット先生の様子に、多少の驚きを隠せないオレたち1年生であったが直ちに乗車し、〇〇市の△△キャンプ場へ向かった。

 部長の如月(きさらぎ)充一郎(じゅういちろう)さんと副部長の四谷卯月さんはキャンピングカーが定員オーバーということで交通機関&タクシーで現地へ向かうとのこと。


「先生はキャンピングカーを運転するのが好きなんですね」

 と、睦月が話す。


「そうなの。生徒たちと毎回違うキャンピングカーで出掛けるのが好きなのよ。でも運転出来るのが当然、私だけだから遠出は出来なくてね。いずれは西日本方面にも行きたいの」

 本当に好きなんですね・・・・・・キャンピングカー。


「キャンプ部が発足してから三年。ようやく他に運転してくれる当てが見つかりそうなの。他の高校の男性教師で、その人も英語を教えていることもあって、縁あって仲良くなったのよ。今その人、大型車の免許とるために車校通ってるの。別に通わなくてもキャンピングカー運転出来るのに」


 その人きっとマーガレット先生のこと好きなんですよ。男性は自分の弱みを女性に見られたくないし格好つけたいものなのです。その辺のこと理解してるのかな、ミスマーガレット。


「それじゃあ今後は関西方面にも行くんですか?楽しみです」


 普段ポーカーフェイスの睦月はマーガレット先生の前では本当に笑顔だな。クラスメイトの前でも見せて欲しいものだよ。



  道中の会話もそれなりに弾んだままキャンプ場に到着するキャンピングカー御一行。


「先生遅い〜!私と充ちゃん待ちくたびれました〜」


  キャンプ部の先輩、四谷卯月さんと如月充一郎さんがキャンプ場の入口付近で待機していた。


「ごめんねー。今回のキャンピングカー大きくって運転に手こずっちゃって」


「いや、これくらいの大きさのキャンピングカー前にも乗っていましたよ。ねぇ充ちゃん?」


「そうだね。これくらいの大きさのキャンピングカー余裕で乗り回せるって言ってました」


「うっ・・・・・・ほっ、ほら今回は人数多いし運転しづらいのよ」


「いや、3年生の送別会で六人乗りのキャンピングカー乗ってましたよー。ねぇ、充ちゃん?」


「うん。物忘れの激しい先生でも流石に送別会のことは覚えてますよね?」


「・・・・・・私は過去の思い出にすがらないの。とにかく、道が混んでて遅くなったの!」


 漫才が三人で繰り出された後、ようやくキャンプ部の活動が始まった。


 今回の活動は半日ということもありテント等は設置せず、みんなで調理した料理をウッドデッキで食すとの事。

 みんなで料理することでお互いの距離を縮めることが今回の主旨なのだろう。

 

 芝生で休憩したり遊んだりした後、夕食の準備にとりかかることになった。食材はマーガレット先生がキャンピングカー内にある買い込んだものを使用するのだが、何も考えず買い込んだのがわかる内容である。


「男子は木炭にと薪で火を着けて、それから飯盒でご飯の用意ね」

「スペアリブと野菜は私が焼くので女性陣はそれまでのカットだったり、残りでサラダを作ってね。あと食材が余るようならカレーを作りましょう!」


 マーガレット先生はオレ達に指示を出すと、買いだしたスペアリブを見てニヤニヤし出す。どうやら先生はスペアリブを食べたくて仕方が無いようだ。


「こうやってキャンプ場で火を焚くなんて久しぶりだよ」


 求が不慣れながらも着火作業に勤しむ。楽しそうな求を見てオレも思わず笑みをこぼす。


「久しぶりっていっても中々手際がいいじゃん。流石だな求は」


「これで上手く火が広がればいいんだけどね」


  オレたち二人の様子を見ていた如月先輩が着火部を覗き込み、遂に話し出す。


「今日の木炭と薪には水分が含まれて無さそうだから消えることは無さそうだね。キャンプ場によっては木炭に水分が多くて着火剤を使っても火を焚くのに一苦労なんだよ」

 

 如月先輩は富んだ知識を織り交ぜながらオレたちに指示を出す。適切なその指示に一切の無駄が無い。流石は学年1位だ。


「男子達!お米を炊く準備が出来たら今度はこっちに火を着けて頂戴」

 

 マーガレット先生はスペアリブを焼きたくて仕方が無いようだ。


  一方その頃、水場では女子達がおしゃべりしながら野菜をカットしていた。オレはその近くで米を洗っている。


「むっちゃん、野菜切るのホント早いね。かっこいいなー」

 いつの間にか奈々が睦月をあだ名で呼んでいて驚いたが、流石は奈々という感じだ。


「そんなことないよ。普段家で料理してたらこれくらいは誰でも出来るようになるよ」


「そうなんだ。私普段料理しないけど時間があったら頑張ろうかな」


「奈々ちゃんは運動神経いいし、きっとすぐ上手くなるよ」


 そんな二人をよそに、四谷先輩は焦って作業をしていた。

「二人とも話しながらなのに野菜切るの早いよー」


 すっかり親しい間柄となった三人。マーガレット先生の作戦はお見事ですね。


オレが彼女たちを見ていると、その気配に恐らく気づいていた睦月がオレに話しかける。


「鎌田君。お願いがあるんだけど、残りの野菜とお肉でカレー作りたいから火を起こしてくれませんか?さっきマーガレット先生と車内で話していたんだけど、先生カレー食べたそうだったんです。だから作りたいなって。調味料関係はこのマーガレットボックスに入っているものを好きに使っていいらしいです」


 マーガレットボックスって何だ?ドラえもんの道具かなにかか?


 睦月の気の利いた行動に拒否する権利はオレには無い。だから早速火を焚くことにした。そして、オレと求は離れていながらもお互いに頷き、共通の思いを睦月に伝える。


「オッケー。急いで準備するよ。ただこちらからのお願い。むっちゃんもオレたちに敬語使わないで、下の名前で話せよー」


 少し離れた所にいた求も「むっちゃん、よろしくね!」と手を振る。

 オレの発言、というか、むっちゃんと呼ばれたことに睦月は予想外のようでただポカンと立ちすくんでいた。



「どれも美味しそうじゃないの。特にこのスペアリブの焼き加減はきっと最高よ」


「先生、スペアリブに拘り過ぎですよ。骨付き肉に何の思い入れがあるんですか?」


 オレはキャンプ場に着いてからというもの、ずっとそのことで気が気でなかったので質問してみた。

 すると、ミスマーガレットのよくぞ聞いてくれましたと言わんばかりの表情に、質問したことを後悔する。


「だってキャンプといったらバーベキュー。バーベキューといったらスペアリブじゃない!そうなったら如何に美味しいスペアリブを作れるかが最重要課題なのよ」


 スペアリブについてのマシンガントークに、行きのキャンピングカー論を思い出すオレたち1年生。


「それに海外ではスペアリブにかけるソースを競う大会だってあるんだからね。それだけスペアリブという存在は厳かなのよ」


 ソースについても熱弁する先生だが作ったの女子生徒たちだからね。最もそう思っていると、


「先生、私たちのソースは先生の焼いたスペアリブを引き立てられていますか?」


 ミスマーガレットに対する気配りと嫌味をどちらも織り込んだ質問をしたのは睦月。取扱説明書でも持ってるのかよと思いたくなる対応だ、今日の睦月は。


「ソースも最高よ。今日のスペアリブは本当に美味しいわ」


 物凄く上機嫌の先生に何故だか安心したオレたちはようやく歓迎会の食事を楽しむことになる。

あれっ?オレたちの歓迎会でどうしてこんなに気を配らなきゃいけないんだよ。


 

 先輩方とも話せてそれなりに距離感が縮まったことに満足したオレは、トイレの帰りに近くの川沿いを散歩することにした。それにしても同じ都内でこんなにも空気が美味しく感じるものなんだな。

 体を伸ばしたくなったオレは近くの芝生の上で軽く寝転びながら手足を目いっぱい伸ばした。本当に幸せな気分だ。


「鎌田君?」


 突然呼びかけられたオレは再び緊張感とともに驚いたことを隠すかのように背筋をビシッとして起き上がった。

 振り返った先にいたのは睦月。なに驚かしてるんだよと思いながらも、

「どうしたの?むっちゃん?」

と話しかけると、オレの問いに睦月は一瞬戸惑いの表情を見せながらも話し始めた。


「トイレの帰りに歩いてたら鎌田君がいたから話しかけたの。今日は楽しかったね。わたし、こうやって外でみんなと食事するなんて久しぶりだったからテンション上がっちゃった」


「オレもキャンプ場に来るのは久しぶりで楽しかったよ。ちょっと郊外に来ただけでも空気が澄んでて気持ちいいよな。それに睦月ともこうやって話せて良かったよ。今までクラスでも部活でも全然話せてなかったし。それに皆と協力して何か成し遂げるって気持ちいいよな。今回はバーベキューだったけどサッカー部でもお互い頑張ろうな」


 オレがとりあえず言いたいことを話した後、睦月も話し始める。


「こちらこそよろしく。あと、私のことをむっちゃんと呼ぶように、今度から鎌田君のこともあだ名で呼んでいい?」


 オレは睦月のその言動を何となく不思議に感じたが、「もちろん」と了承すると、睦月は駆け足でオレとの距離を取り、そして振り返ってこう話した。


「よかったー。じゃあ明日からもよろしくお願いします、むっちゃん!」


 急に「むっちゃん」と呼ばれたことにオレは思考停止に陥った。と同時に睦月がそれを発した時の、彼女の今日一番のあどけない笑顔に、何故自分がむっちゃんと言われたのか疑問をぶつけるのを忘れてしまった。


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