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ある晴れた午後の日にいちごパフェを食べよう

作者: 佐野智香

例年と変わらず、梅雨入り宣言がされてから数日がたっていた。

その日は、雨ではなかったがどんよりとした曇が広がっていた。

「どこで間違えたのかな…」

1ヶ月位前に買ったゲーム。いいところまできたのだがクリアできない。

「アイテム取り忘れあるのかな?それともレベルか?…」

ポテトチップスを食べながら呟いた。

この間、本屋に行った時に攻略本買えばよかったかな。いや、検索すればいいかな。

スマホを持ったが、それ以上の作業はしなかった。というかやる気もなかった。

しばし、ぼーっとしながら園香はペットボトルのキャップを開けてオレンジジュースを飲んだ。

カラカラと窓を開けて狭いベランダにでた。

湿度が高いのか生暖かい風が吹いてる。こんな風でも少し気持ちよく感じた。

そして、2年前の事を懐かしく思い出した。

19歳の学生だった。席が近くになった雅人に講義が終わった時に声をかけられたのだ。

「先生の話聞いてると眠くならない?」と。

「あっ、なるなる〰️」というようなどうでもいい会話が始まりだった。

そして、その日は二人ともバイトが無いことがわかりいくつかの講義が終わった後に会うことにした。

LINEを交換し、時間と場所を決めた。

「じゃあ、後で」と手を振る彼に、こちらも笑顔で手を振った。

「やった!!」と心の中で叫んでいた。実をいうと雅人に一目惚れしていたのだ。初めて講義で見かけた時にすでにいいなと思っていた。

その後の講義は、平常心を保っていたつもりだが、バレバレだった。

「何かいいことあった?」と彩に聞かれた。

「わかるー?」と満面の笑みで返していた。

彩とは、高校から一緒で合格発表の日には二人して涙した仲だ。

「わかるよ。園香、めっちゃ顔にでるタイプだもん。」

「そっかなぁ。あのね、さっき講義が終わった後に会う約束したんだー。」

「えっ?誰と?ま、まさかこの間言ってたチワワ?」

「ちょっと、チワワじゃないよ!トイプーくんだよ」

そう雅人君のことをトイプードルみたいにくりっとした目をしてるので勝手にトイプーくんと呼んでいた。

「ねぇ、前髪大丈夫かな?」と身なりを整えつつ彩に確認した。

「大丈夫。じゃあ、後で話聞かせてね」と言われ別れた。

私が店に着くと、彼は席からこっちと手招きしてくれた

私達は、改めて自己紹介した。

どれもたわいもない話だったけど、私にとってはどれも大事なものだった。

最近はまってるゲームとか曲、バイトの話とかどこに住んでるとか。

そして私的に1番だったのは、お互いを何て呼ぶかで盛り上がったことだった。

結局シンプルに「雅人」と「園香」と呼び会うことになった。呼び捨てか。何かいい。

それから20時に解散した。健全な関係。

私は、明日が楽しみで足取りも軽かった。

次の日から私達は一緒にいることが多くなった。

講義の時、ランチの時。学校での生活は一変したようだった。雅人、それに数人の友人たちに囲まれ賑やかだった。

周りの友達からは、お似合いだねと言われたりもしたがまだ否定していた。お互いに。

ある土曜日の午後、彩と会うことになった。。話題のパフェを食べに行こうという約束をしたのだ。

私達は、注文したイチゴパフェが届くと歓声をあげた。

「かわいいー」と写真におさめた。連写だ。一通り撮り終えると一口食べまた歓声をあげた。

そして彩は「で、どうなのチワワ…じゃなかったトイプーは?」と聞いてきた。

「トイプー、何かいい感じ」と、普段は雅人と呼び捨てにしてるが彩の前では以前と同じようにトイプーと呼んでいた。

「で、どこまでいったの?」と確信をついてきた。

「そこなんだよね…」と相談がてら彩に話した。

お互いの呼び名とか手を繋いだとか休みの日にデートしたとか。

彩に「結局ノロケてるよね」と言われながらも告白されてないことを相談した。

「そっか。じゃあ園香から言えば?」と軽く言われた。

「そうなんだけど。言われたい。」

「結局ノロケか」というようなやりとりが続いた。

「本当、嫌になるくらいの笑顔だよね」と彩に何回も言われた。実をいうと自分でもわかっていた。

こうして長いおしゃべりと美味しいパフェで時間は過ぎていった。楽しくてあっという間だった。

それから一週間位過ぎた後に突然告白された。まさかの雅人に。

「ねぇ、ちゃんと言ってなかったよね。園香、彼女になって。園香といて楽しいし好きだよ」と。

私はやっぱり満面の笑みで「うん。私も好きだよ。」と言った。

それから3ヶ月。まさに人生薔薇色とはこういう事かと思いながら過ごしていた。

“特別なお出かけ"は無かったが、一緒にいるだけで良かった。映画に行ったり、牛丼食べたり、レポート書いたり。

そんな時だった。雅人から提案された。

「今度の連休、旅行いかない?温泉とかさ。俺、車出すから、ね?」

「どうしようかなー」と言いつつ、嬉しかった。

やっぱり満面の笑みで「うん」と伝えた。

「じゃあ、園香もどこに行きたいか考えておいて。今度の土曜日、バイト終わってから相談しよ」

「わかった!探しておく。じゃあ、また明日。学校でね」

土曜日、こんなにいい天気なら昼間会いたかったな…とバイトをしながら思っていた。ちょうど上がる時間だったが、お店が混んでいて少し延長することになった。やっと上がれた頃には待ち合わせ時間の5分前だった。

急いでLINEに遅れると連絡して向かう準備をした。

駅に着いてから、改札を抜けて広場に向かう途中でスマホを取り出した所でフリーズした。

「誰?あの子」

動揺しつつも、そちらに向かって歩こうとした時に雅人が気づいたようだった。

雅人は追い返すようにあの子を見送ってた。

私が雅人の前にくると気まずそうに言った。

「ごめん。ちゃんと話すから。」と。

お店に着くと、重苦しい空気が流れた。というか、私は既に泣きそうだった。

簡単にいうと"あの子“は、幼なじみで前の彼女。ご丁寧に私に初めて声をかけた時は、まだ正式に別れて無かったことまで話してくれた。

「ごめん。園香のこと本当に好きだし、付き合いたいって言った時にはちゃんと別れてた。今日は、偶然に会って…最近どう…みたいな会話しかしてないよ」と。

「大丈夫だから」という言葉を信じた。だけど、どうして二人は別れたか聞けなかった。

私達は、さっきの出来事が何も無かったようにパンフレットを広げた。

旅行は、めちゃくちゃ楽しかった。いるか見たり、高台に行って叫んだり、美味しいご飯も食べた。

そしてイチャイチャいちゃついてきた。

写真もいっぱい撮った。

私はお土産を彩に渡しつつのろけていた。

「またかー。ごちそうさま」と言いながら「うん、うん」と聞いてくれる彩に遠慮なしにノロケされてもらった。

「たまには、トイプーくんのバイトがない日も会ってよね。少しは気を使えよー」と、彩からパンチをもらってその日は家に帰った。

それからも私と雅人は相変わらずだった。

イチャイチャがイチャ位だったけど、ちょうどいい仲だった。

このまま続くんだと思ってた。だけど、終わっちゃった。

初めての喧嘩は、雅人が謝ってくれた。拗ねてた私をなだめてくれた。

私が悪い時は、雅人にちゃんと誤った。どれも内容は、些細なことだった。

決定的な大きな喧嘩があったわけではなかった。

ただ何となく距離がとられて行った。私はまだまだ大好きだったし、だからいろいろ話したり会う約束したりした。会うと雅人は、いつも優しくて楽しかった。

だけどある日言われちゃった。

「ごめん。別れよ。」って。「他に好きな子できた」って。

納得してなかったけど「わかった」って言っちゃった。それから泣いた。部屋でも彩の前でも。

彩はやっぱり「うん、うん」って優しく聞いてくれた。

それから私達は、友達に戻った。会えば挨拶するし、ランチもするし。

しばらくして雅人が“あの子"と寄りを戻したって聞いた。

私にも新しい彼氏ができた。

お互いにすぐ別れちゃったみたいだけど、雅人と私が寄りを戻すことはなかった。そのままお友達で過ごしている。

出会った頃の感情が沸き上がっているわけではない。ただあの頃が懐かしいだけなのかな。

初めて会った時からもう2年も過ぎたのにね。

何故か泣けてくる。一通り泣いた後に思う。

「どこが好きだったんだっけ?」


私は再びスマホを取り出し、彩にLINEした。

「ねえ、パフェ食べに行かない?」

彩はもちろんOKだった。
















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